複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

失敗作ディストピア
日時: 2021/10/09 01:15
名前: 狐鑠 (ID: Vc0EJv9e)

 失敗作ディストピア 1
    
 『わし、神様引退する!!!!』
突如天界に響き渡った、男の老人の声。
一瞬辺りに静寂が訪れ、一拍置いて、
『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?』
と言う叫び声が次々と上がっていった。

 『ちょ、ちょっとお待ち下さいヘルツ様。今、なんとおっしゃいました…?』
震えた声で、天使の1人、ミカトが老人に問いかけた。いつも冷静な彼だが、珍しく冷や汗をかいている。
『だーかーらー、わし、もう神様引退するの。退職する。』
豪奢な椅子に腰掛けている老人は、フンっとふんぞり返った。腕を組み、頬を膨れさせる。
 『いやいやいやいや!!困りますよ引退されては!こんなに神様続けている人、ヘルツ様以外いないんですから!!』
『いや、だからこそ引退したいの。わし、もう100000年くらい神様やってんだよ?もうそろそろよくない?』
『だからですよ!経験値豊富でいらっしゃるでしょう!?貴方様にはまだ神様をやっていただかないと…!!』
 文句をブーブー言う最強の統治神と、半泣き状態で必死に彼を宥める天使。すごく異様な光景である。周りにいる天使たちも、汗をダラダラ流し、必死に2人から目を逸らしていた。
 『お願いですヘルツ様…!まだ次の統治神候補がおりません…せめてあと300年、いや、あと500年は…!!』
完全にいつもの冷静さを失っているミカトは、顔を真っ青にしながら必死に訴えた。
 『…ふぅむ、後継者か…そういえば考えてなかったのう』
ヘルツは、自慢の顎髭をゆっくりと撫で、うーむと唸った。
『そうですよ、まず後継者がいないのですよ!!』
我が意を得たりとばかりに、ミカトは頷く。
 『次の統治神を決めないと、この世界を治める長がいなくなります。せっかくヘルツ様のおかげで、ようやく戦争のない平和な世界になったというのに、また争いが始まってしまうかもしれませんよ!』
『うーむ、確かにそうじゃのう…』
 今、この世界はかつてないほどに平和な世の中になっていた。国境は撤廃され、すべての戦争が終わった。人種など関係なく、全ての人が手を取り合えるようになった。
そんな、素晴らしい世界を創り、治めているのが、統治神ヘルツなのだ。
 『…ミカト、頼みがある。あの2人を連れてきてくれ』
威厳のあるヘルツの声に、ようやくミカトも正気を取り戻し、背筋を伸ばした。
『あの2人…ロール様とムング様ですか?』
『ああ、そうだ。あの2人なら…きっとわしの力になってくれる』
『しかし、お二人は…』
『お前は気にしないで良い。早く連れてくるのだ、良いな?』
『はっ!了解いたしました』
 ミカトはうやうやしくお辞儀をすると、白い翼をはためかせ、ふわりと飛んでいった。
ヘルツは自身がまとっている服の裾の刺繍を摘むと、フッと笑った。
          
            つづく


小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。