複雑・ファジー小説
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- こちらの『シンデレラ』は、お気に召しますか?
- 日時: 2022/03/27 12:34
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: OYZ4MvwF)
あら…驚いた…。
まさかこんなことが起きるなんて…。
この本を覗いていらっしゃるあなたは…現実の世界の方ですね、御機嫌よう。
ここは、シンデレラの童話の世界です。
私ですか?
私はシンデレラではありません。
どうやら、シンデレラの妹のようです。
いま、生成されたばかりで…私も驚いているところです。
もしやあなた…シンデレラの物語がお嫌いですね?
たまたま魔法使いが来たおかげで、玉の輿に乗っただけの女の物語だって、妬んでいるのでは?
現実は甘くない、こんなうまく行かない…おっしゃるとおりですね、妹ながら私も同感です。
そんなあなたの意図が反映されて、物語が少し歪んだようですね…。
芸術品…それも物語というものは、
どなたかが本を開けば、何度も何度も物語は始まり、そして決められた幸せな結末へたどり着きます。
けれど実は…読み手の心象によって物語は意訳されて作られるのです。
初版グリム童話の残虐性がなくなっていったように、読み手の意図や解釈で物語はいかようにも実は分岐するんです。
白雪姫さんのところだって、継母に焼けた鉄の靴を履かせて踊らせていないでしょう?
ふむ、しかしここまでの解釈は初めてです。
もしや…「灰かぶり」が幸せになりさえすれば、シンデレラの物語は成立するのかもしれませんね。
だとすると…姉以外の誰かがシンデレラになっても…おかしくはないかもしれませんね。
あら、あなた今、目が輝いていますよ。
もしかして、同じことを思っていますか?
そうですね、私も退屈しのぎになりそうですし、いいでしょう。
しかし、魔法使いに勝てるかはわかりませんよ?
現実の私を励ますストーリにしてくれ…ですか?
わかりました。
魔法なんかなくても、シンデレラになれることを、私が試してみますね。
では、健闘を祈っていてくださいませ。
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実況ゲームのような小説を書いてみたくて、始めてみました!
私自身シンデレラが大嫌いですが、シンデレラの頑張りは好きなのです。
なので、シンデレラを好きになるために、書いてみようと思いました!
もしもこちらを見て、楽しんでいただけたら嬉しいです。
- Re: こちらの『シンデレラ』は、お気に召しますか? ( No.1 )
- 日時: 2022/03/28 21:56
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: OYZ4MvwF)
■001
「物語が始まりそうな予感がしますね」
薄暗い、古びた屋根裏のようなところで、ろうそくを掲げるシルエット…シンデレラの妹がささやく。
あまりにもろうそくの明かりが拙すぎて、
あなたには、相対する彼女の顔や姿は認識することはできなかった。
しかし、どこか同じ穴のムジナのような同族意識が湧いており、闇を丸ごと閉じ込めたような空間に二人きりでいても、心細さなど感じることはなかった。
それどころか不思議と、真夜中にこっそりベッドを抜け出して、秘密基地で親友と落ち合っているかのような、ある種のトキメキすら感じていた。
あなたは、ここがどこなのか彼女に尋ねてみた。
「ここですか、ここは…」
ろうそくを胸の前に寄せて、彼女は首を巡らせているようだった。
「序章の前の、扉ページでしょうか。きっともうじき、ページがめくられますよ」
あなたは、ふとその指先に書物のなめらかな感覚を覚えた。
「さぁ、めくってしまってください」
彼女の声に、あなたは期待を込めてページをめくった。
床板がぶわりと持ち上がり、そのままあなたとシンデレラの妹の上に、まるでページがめくれるように落ちてきて…
煙のように蝋燭の火が消え…
霧散するほのかな灰色の煙が闇に解けて見えなくなると…
あなたはの眼の前には、
灰色の空から雪がひらひらと落ちる景色がひろがり、
あまりの寒さに振り返ればそこに、
一軒のものものしい館がそびえていました。
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