複雑・ファジー小説
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- 雨が去った後は
- 日時: 2022/05/21 19:42
- 名前: ゆあ (ID: hsews.TL)
prologue
ポタッポタッ
傘の上で雨が跳ねる。
雨の音が消える。
空を見上げる。
雨は止んでいた。
晴れ間が見えた。
そして思い出す。
『じゃあね』
- Re: 雨が去った後は ( No.1 )
- 日時: 2022/05/21 20:12
- 名前: ゆあ (ID: hsews.TL)
《一話》
目覚ましが鳴り、体を起こし背伸びをした後カーテンを開ける。
「今日も雨。」
この時期は梅雨で、毎日のように雨が降り、ジメジメする。
部屋を出ると、トーストの良い匂いがした。「では、お天気予報です。」
ニュースか。この時期天気予報なんて全部雨なのにする必要があるのか?ほんとに疑問だ。
「あら、おはよう。」
母さんがキッチンから顔を覗かせ言う。
「朝ごはん出来たわよ。」
そう言い、テーブルの方を指差す。
テーブルの上にはトーストと目玉焼き、サラダと牛乳がのっていた。
「冷めないうちに食べちゃいなさい。」
俺は椅子に座り手を合わせつぶやいた。
頂きます_
きっと母さんには聞こえていないだろう。
朝ご飯を食べ終わり、食器を流しに下げた。それから洗面台に向かい、歯磨きをして顔を洗い、顔を上げた。
鏡に映る自分は不満げな表情を浮かべていた。
制服に着替えた後、カバンの中に弁当やノートを入れ、家を後にする。
パンッ
傘が軽快な音を立て、開く。雨の中、靴の音が響く。ビニール傘から滴る水滴はブロック塀を映して、水溜まりの一部となって消えていった。
- Re: 雨が去った後は ( No.2 )
- 日時: 2022/06/01 20:43
- 名前: ゆあ (ID: hsews.TL)
《二話》
「じゃあこの問題を、千雨な」
千雨。目の前の女子のことか。
「知らないよー!」
予想通りの反応だ。運動はできるが、勉強はできないタイプ。
「んじゃ、朱雨この答えは?」
またこのパターンかよ。
「-52です。」
はぁ、こんなのも解けないとかバカかよ。
「正解だ。じゃあ次のm」
キーンコーンカーンコーン
「授業終わりだぁーーー!」
うるさい。いきなり立ち上がるなよ。迷惑なんだよ。もう。
ガタガタガタ
みんな席を立ち上がり、弁当を持ちそれぞれの仲間と食べに行く。
「千雨行こ!」
「あ、うん!」
ガチャン
椅子を勢いよく直したのか、耳がキーンとする音が頭に響く。反射的に窓の方に顔を向ける。いつのまにか雨は止んでいた。窓に水滴がくっついていた。
「朱雨一緒に食おうぜ。ってまた外みてんじゃん。」
「どうでも良いじゃん。今日はどこで食うの?」
「屋上。」
「わかった。先に瑠夏はまってて。」
「りょ」
そう言って瑠夏は軽快な足取りで去っていった。
ガチャ キー
「遅いぞ朱雨。俺お腹すいた。」
ドタバタする瑠夏を落ち着かせるため、焼きそばパン奢るから。といい許してもらった。
「ところで、何で俺を誘ったんだよ。いつも彼女の如月と一緒なのに。このリア充が(ボソッ」
「ひほへへふほ!」
「食ってから喋ろよ。んで、何て?」
「ゴクン聞こえてるって!」
「本題は、何で俺を誘ったかってこと!」
「実は、これを見て欲しいんだ。」
そう言って、スマホを取り出して再生ボタンを押す。
そこには
手を握り、祈りを捧げるようなポーズをしていた千雨の姿があった。
そして何より
彼女の周りを白い龍が回っていて
ガラス細工でできたかのような雨が
彼女を覆い
数秒後
彼女の姿は
消えていた。
- Re: 雨が去った後は ( No.3 )
- 日時: 2022/06/05 19:47
- 名前: ゆあ (ID: hsews.TL)
「これ、誰が?」
動揺を隠しきれず、震える唇を噛み締めながら問う。
「一ノ瀬」
瑠夏も同様に、一度見たはずなのにいまだに驚きつつ答える。
「一ノ瀬って、一ノ瀬 瑞希か?」
瑞希は俺の幼稚園からの幼なじみだ。
「それ以外一ノ瀬いないだろ」
「それもそうだな、しかしながらなぜこの動画を撮ったのだろうか。たまたま?それとも撮れ、と言われたのか?」
「どちらにせよ、千雨は只者ではないな。」
只者ではない、か。
「確かに運動神経は抜群で、瑠夏、俺、拓真に並ぶ速さだもんな。千雨ならそんなヤベーやつあってもおかしくはねぇな。」
瑠夏はコクコクと頷いている。
ガチャ
「あれ、瑠夏君に朱雨君だっけ?どうしてここに?」
それはこちらのセリフだ、言いかけた言葉を飲み込む。
「千雨か。」
「お前も弁当食いに来たのか?」
「ううん。違うよ。」
弁当食いに来たのではないとしたら、、、自殺?
「お空に用があって。」
「驚くかなぁ?」
イタズラっぽく言った後
手を合わせて
「桜流しくるよ」
そう言葉を放った瞬間、ブワッっと風が吹き、桜が舞い上がった。
それと同時に大粒の雨が先ほどよりも勢いを増して降った。
チリン
風鈴のような音とともに、桜が一つに集まり動画で見た龍と、雨、一粒一粒がガラス細工のような魚が千雨包んだ。
そして君は
空に舞い上がり、動画で見たように
消えた。
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