複雑・ファジー小説
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- 惨め
- 日時: 2022/06/09 07:31
- 名前: 再季 (ID: 3c0JYUg8)
教室の空気は重く、その場に居るだけでも息が詰まりそうな緊張と哀しみ、落胆で溢れていた。
昨日、クラスメートの真弓が死んだ。特別仲がよかった訳ではないが、クラスで明るく、私とは程遠い存在だった。
私は真弓が殺されるのを確かに見た。
「残念ながら、真弓は亡くなった。」
担任の加瀬は馴れ馴れしく生徒を呼び捨てで呼ぶ。
「みんなの気持ちはわかる。クラス委員として活躍してきた真弓が、真弓が、なんでこんなことに…。」
加瀬が目頭をおさえ、涙をこらえる。後ろの席から誰かがすすり泣く声も聞こえた。
昨日、部活の帰りだった。水泳部の部庫へマットを片付けにいくときだった。ふと、プールサイドを見ると、真弓と背の高い男が立っていた。ちょうど男の顔は見えなかったが、真弓と親しく話していることは分かった。なぜ水泳部ではない真弓がプールサイドにいるのか考えないまま、真弓は美人だったし、彼氏でもできたのかと思って、ばれないよう部庫へ入った。二人のようすが気になったのでマットをさっさと片付けて部庫から顔を覗かせたそのときだった。真弓はこちらを見てニコッと微笑んだと思うと同時に、その男と並んでプールサイドから出て、プールの入り口、トイレや更衣室のある廊下へと歩いていった。私は何が起こったのか分からなくてしばらく固まっていたが、二人の様子が気になって後を追った。実のところ、男と女のあれは見たことがなく、勿論やったこともなかったので、私は期待と下心で胸を膨らませていた。
だけど、そこで見たのは残酷な光景だった。
なんと真弓はその男に暴力を受けていたのである。電気のついていない薄暗い女子トイレの手洗い場あたりで何度も、何度も男に暴力を振るわれていた。真弓は俯いたまま、まるで放心状態であるような虚ろな目で、静かに男のサンドバックとなっていた。私はその場で固まり、その光景をただただ眺めていた。ふと我に返ると、男に見ていることを気づかれるかもしれないと思いその横の男子トイレへと駆け込んだ。
「それにしても悔やんでも悔やんでも悔やみきれない。真弓は永遠に2-cの仲間だ。」
加瀬は知っているのだろうか、真弓の家族は知っているのだろうか。あの後、静かになったプールへの廊下で男が去ったことに気付いた。不気味で長く、静かな沈黙。
怖くて、恐ろしくて、私はその場から立ち去った。
後日、というのは今日だけど真弓が死んだことをこうして知らされた。一時間目は学活へと変更され、こうして加瀬の語りが続いている。
■お読みいただき誠に有難う御座います~
upし直しました💦もし宜しければコメントを……。暇があったら続きを書きます。