複雑・ファジー小説
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- チョコ・ケーキ・フェアリー
- 日時: 2022/06/28 23:55
- 名前: ふぇのめのん (ID: CjSVzq4t)
大森靖子「偽物は続けられない」
偽物だと思いたくない!だから低クオリティでも書き続けたいと思ってはじめました( >Д<;)
毎日は無理だろうけど3日に1回は更新したい!
- Re: チョコ・ケーキ・フェアリー ( No.1 )
- 日時: 2022/06/29 00:00
- 名前: ふぇのめのん (ID: CjSVzq4t)
ここは妖精の国、フェアリーアイランド。人間よりもとっても平和でとってもお馬鹿さんな妖精たちが暮らす国。
「はぁぁあん、なんで君ってそんなに美味しそうなの?」
フェアリーアイランドの住人、すももは、お皿の上に乗せた一切れのチョコケーキがあまりにも美味しそうなのでそう語りかけるのだった。
「なんでって、そりゃあ僕がとっても魅力的で最高に美しいからだよ!」
チョコケーキから少年の声がした。
「ケーキが喋った!?」
秋休みのことだった。
- Re: チョコ・ケーキ・フェアリー ( No.2 )
- 日時: 2022/07/01 09:44
- 名前: ふぇのめのん (ID: 6Nc9ZRhz)
「なんで喋れるの…?」
すももは恐る恐る問いかけた。頭のすみでは、喋れるケーキとか食べにくいな、と思っていた。
「失礼だな、質問したのは君でしょ?そんなことよりさ、僕、君にお願いがあるんだ。聞いてくれる?」
「き、聞くだけなら…」
すももは目を合わせて話したかったがどこが目なのかわからず、とりあえずケーキに乗っている苺に焦点を合わせることにした。鼻はケーキの先端部分だろうか。
「昔々、ある小さな村に──」
チョコケーキは話し始める。
昔々、ある小さな村に1人の少年がいました。彼の家は貧しく、女手一つで育ててくれる母は毎日夜遅くまで働きに出ていました。その間、少年は母のためにケーキを作りながら帰りを待つのでした。
母が言ってくれる美味しいという言葉を聞くうちに、気づけば少年は一流のケーキ職人になりたいという夢ができます。
少年は夢を叶えるためにたくさん勉強しました。
そして月日は流れ、毎日ケーキを作り続けた甲斐あってか、王子専属のケーキ職人に選ばれたのです。
彼は王子のためにたくさんのケーキを作り続けました。
そんなある日、彼の作ったチョコケーキとショートケーキの一切れずつが意思を持つようになりはじめました。
チョコケーキとショートケーキはお互いを愛し合っていました。
しかし、形が悪かったためにチョコケーキは売りに出され、2人は離ればなれになるのです。
ショートケーキは王宮の冷蔵室の奥で、チョコケーキは王宮から遠く離れた家の食卓の上で、お互いを思い出すのでした。
「───てなわけだからさ、僕が彼女に会うために王宮に連れていってほしいんだよ」
「そんなことできないよ」
ただの一般市民である自分が王宮に入り込むなんて絶対にできるわけないと思った。
「だと思うだろ。でも僕にいい案があるんだ。もうすぐ王女の結婚相手を探すための舞踏会が開かれる。身分問わず誰でも参加していい会だから、それを利用すればいいんだよ」
「女の子が参加してもいいの?結婚相手を探すためなのに?」
もしかして王女は女の子のことが好きなのだろうか。
「いいや、たぶん門前払いされると思うよ。だから君の長い髪を帽子に入れてズボンとブーツを履く必要がある。」
つまり男装するということだ。
「…でも私があなたの願いを聞き入れる理由ってないよね」
王女を騙したことがバレて罰がなかったらおかしい。自分に利益がないのにリスクを背負うことは嫌だ。
「いつでも自分が食べたいと思った食べ物を召還できる力をあげるよ」
「早く言ってよ。なんでもしてあげちゃうんだから」
すももは食べることが大好きなのだ。
- Re: チョコ・ケーキ・フェアリー ( No.3 )
- 日時: 2022/07/04 20:21
- 名前: ふぇのめのん (ID: dzc33jqI)
「うん、いい感じ」
すももは鏡に映る自分の姿を見て言った。
街の木々が赤や黄色に色を変え肌寒い気温が続く頃、すももとチョコケーキは早朝から舞踏会へ行く準備をしている。
「あとは保冷バッグにチョコケーキを入れるだけ、と…」
言いながらすももはお皿に乗っていたチョコケーキを保冷バッグへそっと移す。
「ちょっと待って!」
途端、チョコケーキが声をあげる。
「保冷バッグなんて持って行ったら不審がられて王宮に入れてもらえないよ」
「え?じゃあどうするの?」
周りからは見えないようにチョコケーキを持ち運ぶのは不可能だと思った。
「僕を食べるのさ」
チョコケーキはさも当然のように答える。
すももは言葉が出なかった。
「君が僕を食べてショートケーキのことも食べれば、僕たちは君の胃の中で会えるんだ。だから食べて?」
「あ、ああ…うん…」
すももは戸惑いながらもチョコケーキをつかんだ。
「いただきまーす…」
そのままチョコケーキにかぶりつく。普段の食事と同じように咀嚼し、一口、また一口と、食べ進めていった。
「あー美味しかった。ごちそうさまでした」
「よし、じゃあ急いで王宮へと向かおう」
すもものお腹から聞いたことのある声がした。
「チョコケーキ?」
「ああ、そうだよ。ぐずぐずしてないで、さあ、早く」
「なんでそんなに急いでるの?」
時間はまだたっぷり残っている。
「ショートケーキが誰かに食べられちゃうかも知れないだろ?」
「確かに。ねえ、でも、王宮の中に入ってそこからどうやって冷蔵室に行けばいいの?」
冷蔵室までの道をすももは知らなかったし、舞踏会と関係のない部屋に行くのも不審がられる気がしていた。
「冷蔵室には行かなくてもいいよ。舞踏会は料理が出されてたりもするからね。ショートケーキは冷蔵室から会場に運ばれてる」
「王子のために作られたケーキじゃなかったの?王子専属のケーキ職人になったって話してたじゃない」
「形が悪かったり王子が食べなかったりしたものは、売りに出したり舞踏会に来た人に食べてもらったりするんだよ。だって捨てちゃうのもったいないだろ」
「なるほどね…って、話してる場合じゃなかった。早く行かなきゃ」
すももは足早に家を出た。
- Re: チョコ・ケーキ・フェアリー ( No.4 )
- 日時: 2022/07/07 13:10
- 名前: ふぇのめのん (ID: 7jx1K2pT)
会場は平民から貴族までありとあらゆる男たちで溢れかえっていた。
いくつか設置されたテーブルの上にはそれぞれチョコレートフォンデュや七面鳥、豚の丸焼き、フルーツポンチなどケーキ以外の料理も用意されている。
すももは人混みをかけ分けながらショートケーキを探した。
「あ!」
すももは8等分に切り分けられたホールのショートケーキを見つける。しかしどれがチョコケーキの恋人なのかわからない。
「右側の、一番北にあるやつ!」
チョコケーキにお腹から教えられる。
すももは言われた通りの一切れを自分の皿に移し、同じテーブルの上に用意されていたフォークで口に運んだ。
「うん、美味しい」
王子専属のケーキ職人が作っただけあって、今までに食べたショートケーキの中で1、2を争うほどの美味しさだった。
「ごきげんよう」
突如、会場内に大きな声が響く。
声のする方を見ると、そこには美しい1人の女性が座っていた。
「ようこそ、皆さん。今日はわたくしのために舞踏会に来てくださってありがとう。」
ラズベリーのように赤い長髪と、同じくラズベリーのように赤い瞳。この国の王女である。
「まず、1番。次に3番、4番、5番…」
王女は次々に番号を読み上げていく。それは王宮に入る際に、男性全員の胸元に付けられた番号札のことだった。
「そして最後に282番。今呼ばれた番号の方々は今すぐここから立ち去ることをお願いしますわ。」
王女の発言に会場内がざわつきはじめる。呼ばれなかった男たちを見ると、どうやら見目の麗しい者を残していることがわかった。
「これは言わばわたくしの旦那様オーディションですの。つまり、今呼ばれた方々は落選ということですわ。」
男たちは落胆する。出口に向かっていく背中が悲しそうに見えた。
会場内は最初の10分の1ほどしか残っていない。
「残った方々には、自己紹介をしてもらいますの。まずは2番さんから、どうぞ?」
「俺は剣の扱いが上手いです。この中で一番上手い自信があります。」
男たちは各々の特技や長所を王女にアピールしていく。しかしどれも王女に響いていない様子だった。
「次、128番」
すももの番が来た。しかしすももにはこれといった特技がなかった。
「俺は…」
すももは思い出す。チョコケーキとの約束を。
「俺は、どんな食べ物でも今すぐに召喚できます。」
周りにいた男たちがクスクスと笑う。そんな魔法に王女が惹かれるわけないだろう、と。しかし王女の反応は意外なものだった。
「決定!旦那様に決定よ!」
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