複雑・ファジー小説
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- 沈みゆくフィアロの祭壇
- 日時: 2022/09/10 18:06
- 名前: 星筆 ◆W9dlfHXtmo (ID: C/YHgPFP)
神が生命に個としての命を与え、力を授ける。
神の手に加えられた場所は全てが生き生きとしていた。
愛された土地である。
砕けた家々に白く脆けた木々に、腐臭のする空気。
「フィアロは、ここの生命を見放したんだな」
探索家はそんなことを言った。
彼は白と灰と黒以外の色を失い忘れられた寂しい世界に訪れた旅人。
神に力を与えてもらえなかった無能な旅人は、探索を続ける。
神に見放された、世界ならざる世界ーー不界と呼ばれた世界で灰を踏みにじり。
『人間がいるじゃないですか。珍しい』
探索家はヒトを見つけた。
彼と同じ年頃の若い女だった。
「お前は生命……神の子なのか?」
『違うよー? ボクは生命を持たない。君には生きているように見えているだけで、ただの現象だよ』
ヒトはヒトであることを否定した。
「意味がわからん」
『君には幻覚が見えてるんだよ。君達が不界と呼ぶ腐った空間の、腐臭にやられたんだねーー君はもう、ここから出られないんじゃないかな』
「出られなくてもいい。神を見つけてここを育ててもらうためならな」
『意味がわからないなぁ。不界は君一人では大きすぎる気がするなぁ』
背には白霧、大樹が動き、蛇が家を飲み、骨がのたうち回る。
「俺は神が手放した、人の手がつけられなくなった故郷(ここ)を、取り戻す」
旅人は幻覚を見てなお、歩み続ける。
生みの親を探して、神の責任を問うために。
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●星筆(せいひつ/ほしふで)
書かないといけない、という気持ちが強くなり純粋に楽しめなくなつちめ、一旦執筆から離れていました。
リハビリです。