複雑・ファジー小説

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僕は僕になりたいし私は私になりたい。そして飛びたい。
日時: 2022/09/07 18:34
名前: SR(スーパーレア) (ID: p/lGLuZQ)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13266

他人より自分が大切なんだろ?

と、そんなどこにでも売っていそうな軽い文句に私はこう返すだろう。

「自分が一番大好きだが、自分は嫌いだ。」と

好きで生まれてきたわけでもない。だからこそ、自分が一番大好きで嫌い。

難しそうで簡単な言葉。

これは私が私ではなくなるから言えるのかもしれない。

後は託そう。未来の自分達へ。




目次

0.2話>>1

0.4話>>2

Re: 僕は僕になりたいし私は私になりたい。そして飛びたい。 ( No.1 )
日時: 2022/08/24 17:01
名前: SR(スーパーレア) (ID: p/lGLuZQ)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

0.2話


ある大学生の私である僕が、望まれない性別で始まり、望んだ性別で終わる。


_______________________________________________________________________



僕の方が朝目覚める。今日は僕の番のようだ。カーテンを開け、朝日に挨拶をする。机の上には日記があり、当然の権利を主張してきた。

「私の体になるはずのものだ。返せ。」

そんな事言わなくても分かるのに...彼女の記憶は朝起きた瞬間に入ってくる。

起きた瞬間に、一日分の感情を、思いが、記憶が、鮮明とは言えない曖昧に入ってくる。

これは彼女が覚えていた記憶なのだろう。そして彼女が覚えた思いや感情なのだろう。

と、分かっている。

僕達は一度や二度ではない。この感覚を二ヶ月間続けている。

正確には約一ヶ月だが...。

大学へ行く準備をして女性用の服を手に取る。そして鏡の前で服を合わせ、少し憂鬱な気分になる。

服を着て、メイクをする。あえて下手に化粧をし、かろうじて男である誇りを何とか保とうとする。

でも自分の顔になるべきではない童顔のせいで化粧を始めたての女の子のような感じになる。

本来あるべき姿は違うだろ!僕が...この僕が僕になるはずだった。

そう思うとムカついてきた。僕はペンをとり次のページにこう書いた

「僕の体になるはずのものだ。返せ。」

つられて、「返せ」と書いてみたが、もう返ってきているのだ。

だって彼女は自分なのだから。

元々僕達は一人なのだ。

分かっている。だから――――――

いつの間にか視界がぼやけている。それを手で拭うと手には、濁った水滴が付着していた。

慌てて鏡を見る。

鏡を見ると、色付きの涙が自分の頬に垂れてきていた。

Re: 僕は僕になりたいし私は私になりたい。そして飛びたい。 ( No.2 )
日時: 2022/09/07 18:33
名前: SR(スーパーレア) (ID: p/lGLuZQ)
参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=13266

0.4話


授業が終わり、昼休みに入る。

今日もあいつに言われた通り、カツ丼にしますか。

あいつ...そう呼ぶことにした。だって自分だから。少しの矛盾もいつも通りなのだ。

あいつも男と言う存在をよく分かっていないはずだ。自分だってわからない。

ちょっと待てよ。ということは、今日くらい好きなもの食べても――――――――

そんな甘えた考えが頭をよぎる。

「大丈夫...だよね。」

「何が大丈夫だって?」

後ろから声がかかる。透き通った水のような声。多分、「水樹 とおる」だ。

「いやいや。なんでもない。」

「ほんと?しんは、ちょっと抜けてるから、普通に心配なんだけど。」

「ほんとだよぉ。」

あいつが友達候補に選んだ人だ。

確かに顔も良く、いかにもモテ男。って感じだ。普通に惚れそう。体が男じゃなければ付き合いたいレベル。

ってなに考えてんだ。私。

「ん?あれ今日は丼系じゃないんだ。」

「ちょっとね。味変だよ。あ・じ・へ・ん。」

「いや、この前、『丼系は一生食ってても飽きないぜ!』って言ってたじゃん。」

あいつに言わされたんですよ。男っぽさがでる食べ物が丼系しか思いつかなかっただけだがな。男っぽくしとけって、いまいち男っぽいが分からん。

...女のこともわかんないんだけどね。

「それは冗談だよ。冗談。本気にするなよ。」

「ふーんあっそ。で、パンケーキと。」

そう、私はやってしまった。男子において最大の過ち。パンケーキ。でもこれは覚悟の証だ。きっと明日にはあいつにバレるけど...

きっとあいつは怒るだろうな...でも、このチャンスをのがす手はない。自分の意志が初めて決まったのだから。

「パンケーキねぇ」と呟きながら神妙な面持ちで私のパンケーキを彼は覗きこんでいる。お前にはあげんからな。

でも...なんだろう?柑橘系の匂いがする。甘ったるいクリームの匂いに混じって、独特な蜜柑のようなそんな匂いが...香水?

「?どうした。俺の顔になんか付いてる?」

「いや、ついてないよ。ってまぁ良いだろ別に。好きな物食べるんだから。」

「女でも食べないと思うぞ。昼食にパンケーキは。」

誰のせいで甘い物が食べられないと思ってるんだ。まぁ自分のせいなんだけど...

これが「自分のせいだ」っていうのがかなり慣れない。体1つに人格と性別2つずつは容量オーバー。

その代償かわからないが、自分たちの体は普通の人とは違うところがあったりする。

でも...こんな生活をいつまで続ければ良いのか。もしかしたら一生かもしれない。

駄目だ。駄目だ。余計な事を考えるな。この一ヶ月半。私は頑張れたじゃないか。

そんな事を考えるだけで、身の毛がよだつ。全身の筋肉という筋肉が縮こまり、鳥肌ができそうになる。

今は楽しいことを考えよう。

「ん!美味い!」

こんなに甘いのか。パンケーキは。美味いよぉ。

生まれて初めて食べるクリームに脳みそがクラクラする。

「そんなに美味いのか?...あれ?ほっぺにクリームついてるぞ。パクッ。確かに美味くはあるな。」

え、いや。ちょ。ま、は?

私の頬のクリームを指ですくい取り、食べた。

「へ――――――――」

「あ、ごめん。付いてたから。でも男は流石にキモかったよな。」

私の頬が赤く染まっていくのを感じる。心臓の鼓動が早くなり、胸を締め付ける。

「あの。」

私は精一杯に冷静を保とうとする。

「なに?」

「私のクリーム!返せ!!」

「は〜!?そんなこと?」

「そんなことじゃないわ!殴らせろ!」

「やだね。それじゃ。逃げます!じゃ。」

「おい待て!」

彼は私のパンケーキを指差し、食ってからにしろ。と合図した。


___________________________________________________________



「私...ね。」

校舎裏に逃げた人は、そう呟いた。


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