複雑・ファジー小説

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ウメツワールドにようこそ
日時: 2023/03/26 17:15
名前: 溺れ布 (ID: /5HKG0DI)

今度来た時にまだ残ってたら買おう、とプロローグだけ読んで本棚に戻した本と別れた。その本の作者は聞いたことがないのだが、言葉選びが美しく私の脳内辞書に無いもので構成されていて、何処か知らない世界に迷い込んだみたいだった。
作者はどうやら役者さんらしい。本屋から帰りながらスマートフォンで検索したらすぐに出てきた。生き字引よりも情報を網羅しているスマートフォンが羨ましくて仕方ない。検索結果の1番上に出てきたTwitterのURLをタップすると「父さんとたかし」と名付けられた、1人で禿げヅラの父と反抗期の息子を演じている動画が固定されていた。
奥さんと電話をしたり息子に語りかけながら太鼓を叩いたりして本の書籍化決定を喜んでいる。鳴り響くスマートフォンに驚きながら慣れない様子で奥さんと電話をする様子、通話が切れてからも1人で喋り続ける様子、とにかく癖が強い。そしてやはり言葉選びが秀逸だった。またも私は知らない世界に迷い込む。これが俗に言うウメツワールドだそうだ。

再び書店に訪れたのはそれから3ヶ月後のことだった。その本の姿はなかった。書店のシステムは分からないが、田舎であまりメジャーな店でなく、前回も1冊きり本棚に入っていただけだからその本が売れたらもう在庫は無いのだろう。元あった場所には他の本が入っていた。
「またあの世界に入れる!」と思っていた私は残念ながらその扉を見つけることができなかった。
何処か不思議なウメツワールドには、それっきり迷い込んでいない。再び迷い込む時はきっと、またその本に出会う時だろう。
私は今日も、ウメツワールドを探して旅に出る。


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