複雑・ファジー小説

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夏、あなたを救いに
日時: 2023/07/31 18:36
名前: よいや (ID: g8fOXsqd)

暗闇の中にいた。

怖くて怖くて逃げ出したい…けれども進めど進めど逃げることは出来なかった。

先の見えない夜道からは逃げられなかった。

そんな中、ふいに誰かに手をひかれた
誰なのかなんてわからない、でもなんだか安心できた。

そのまま走って、走って、走って……

光を見つけた。

赤く淡い光……あぁあそこなら安心だ……

繋がれた手を振り払い、長い長い階段を
駆け上がる。

未だ淡い光に向かって。

ここに連れてくるためにあなたは手をひいてくれたんだね。

ありがとう…ありがとう…ありがとう……
こまってるよね…ごめんなさい……

手をひいてくれた誰かへの気持ちを忘れずに
光へ光へ手を伸ばす

鮮明になっていく光がとても寂しい。
まだ追いかけていたい…叶わない。

最後の1段を駆け上がると祝福の声と共に
赤い光に包まれた。

これでよかったのだ、これが宿命だから。

待っている、何度離れてしまおうと
信じている、あなたはまた来てくれるって

いつか絶対、助けに来てね。

夏が来る。

固まりきった運命を溶かすほどに
熱く激しい夏が。

Re: 夏、あなたを救いに ( No.1 )
日時: 2023/07/31 18:49
名前: よいや (ID: g8fOXsqd)

一少女、湊川 梨花は真夏の夜の寝苦しさに
耐えきれず目をさました。

でも目を覚ました理由は
それだけじゃない気がする。

彼女は静かな部屋の中で呟く、
「助けに……来て…?」

夢で見た光景が引っかかる。

安心できる場所にたどり着いたというのに
なぜ助ける必要があるのか。

でも、夢は夢だ。
どうせデタラメなのだろう。

気にする事はきっと無い。

そう自分に言い聞かせ、
梨花はもう一度眠ることにした。





Re: 夏、あなたを救いに ( No.2 )
日時: 2023/07/31 20:26
名前: よいや (ID: g8fOXsqd)

次の目覚めは同じ夢を見なかったからか前の目覚めよりは気分がよかった。

なんだか体が重いのは拭いきれないけれど……

もし同じ夢を見ていたらさらにモヤモヤしていたかもしれない。

…それに助けを乞う謎の人物の容姿が出来事のインパクトに負けないくらい妙に綺麗だったので、もう一度見ようものなら幻にドキドキしてしまうところだった、心の底からよかったと思う。

本当に良かった。

でも、もう一度くらいはその姿を見たいと思う欲張りな自分に呆れながらベットから降りゆっくりと自室のドアを開けた。

目覚めたばかりの目にはリビングの日差しは眩しかった。

たった一夜のことではあったが数日の事のような疲れがのしかかっているせいかもしれない。

そんななんでもないことを考えながら、リビングへ目をやる。

「おはよう、梨花さん。」

「おはようございます……お父様…」

梨花の姿を見ると和やかな顔で語りかけてきたのは実の父である。

…母は物心ついた頃にはいなかった。

父の堅苦しい口調は父が生まれ育った家庭が作法を重んじる堅苦しい家であることを映している。

これにはいつも息が詰まってしまう。

生まれて17年、ずっとこの調子なので梨花もこうしなければならないのではという思いに縛られている。

本当はもっと心から笑い合いたいと思うのだが…それは未だ叶わずである。

親子であるというのにまるで他人のように接し合うその様子には1枚…いやそんな薄い単位じゃ表せないほど厚い壁があると感じざるを得ない。

まるで自分ではない何かの仮面を被っているようで息苦しい。

…母はこんな父をどう思っていたのだろう。

梨花は朝食で彩られたテーブルに向かって
歩き、すでに座っている父の向かいの椅子に座った。

今日の朝食はいつもより豪華な気がする。
気のせいかもしれないけれど……

「いただきます。」

どんな状況であれ、父に感謝していないわけではないことは自信を持って言える。

なんでもない夏休みの1日目が始まる。

Re: 夏、あなたを救いに ( No.3 )
日時: 2023/07/31 23:43
名前: よいや (ID: g8fOXsqd)

朝食中も沈黙が続くリビングには堪えるものがある。

でも、梨花が直々に父と話す気はない。

話したって目に見えた厚い壁は少しもひび割れてくれないのだから。

しかし今日は「ごちそうさまでした」と言う前に沈黙は破られることとなった。

「…そうだ、梨花さん。夏休みに行きたいところなどはないですか…?今年は休みが沢山取れそうなので良ければ考えておいてください。」

そう梨花に父は言った。

突然のことに梨花は正直驚いた。

いつもはそんなこと気にもとめないような人なのに…結局父が朝食を食べ終え席を離れるまでの間にふさわしい返事が見つけられなかった。

「ごちそうさまでした…。」

いつもの休日のようにリビングを離れ自室へ戻ろうとしたその時……

プロロロロ…プロロロロ…と電話が鳴り響いた。

いつの間にかリビングに戻っていた父が受話器を取る。

梨花は、その様子を意味もなく横目で見つめていた。

「もしもし…お母様…?はい、梨花さんなら家におります…」

どうやら父のお母様…お祖母様と梨花の話をしているようだった。

どうせ面倒な事なのだろうな、と一時しのぎに自室へ逃げ込んだ。

お祖母様は厳しい人だ。
そんな彼女が父をあの姿にしてしまった。

ベットに寝転がり天井を眺めながら父の応答する声を聞いていた。

残念ながら話の脈絡は掴めなかったけれど。

そうしているうちに梨花はまたも眠りに落ちる。

Re: 夏、あなたを救いに ( No.4 )
日時: 2023/07/31 23:47
名前: よいや (ID: g8fOXsqd)

提灯の光……屋台の光…そのずっとずっと向こうには手前の賑やかな雰囲気を打ち消してしまうほど重々しく燃え盛る火が2つ、神社の社を挟んでいた…。

祭りに参加する人々の笑顔は全てこちらへ向けられている。

戻ってこられたようだ…あぁ●●様…これで無事なのですね…

人々の縋るような声が他でもないこちらに…。

怖い…にげてしまいたい。

けれども逃げることは出来ない。

社へ走る、そうするしかない。

逃げたって意味は無いのだから…

誰かがこの運命を変えてくれたなら…
どんなにいいことか…。


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