複雑・ファジー小説
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- 海のいろ。
- 日時: 2023/09/30 21:34
- 名前: Sumo* (ID: 2cE7k4GX)
青い少女のその先は。
病院に隠された秘密とは__
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「僕らの病気は治らない」が永久停止したので(?)
リメイクしつつ書いていきます。
⚠︎少しグロ描写を含む可能性があります。
- Re: 海のいろ。 ( No.1 )
- 日時: 2023/09/26 18:32
- 名前: Sumo* (ID: 8kWkLzD1)
“血”
__人間の血は、赤黒くってどろどろしている。…普通は。
でも私の血は、青くて透き通っている。
不思議を通り越して不気味、と親からも気味悪がられた。
なんで青いのかはよく知らない。
難しい説明をされたけど、理解が追い付かない。
かせつだって、言ってたけど。
私の血は“正常”じゃないらしい。青色だから。
そして、私の血を“正常”に戻す方法は、無いのだと聞いた。
正常に戻すのは不可能だと言うのに、
何故、私は入院しないといけないんだろう。
別に青色の血で今まで生きてこれたんだから何の支障も無いはずだ。
私だって青春を謳歌したい!
こんな消毒くさい所で一生を過ごすのは嫌だ。
だから病院を脱出しようと、今までたくさんの挑戦を続けてきた。
それなのに…。
「ちょっと、こはちゃん。どこ行くの!これからご飯だよ?」
廊下に出た瞬間これだ。
私を担当しているらしい看護士の幸さんに、病室に連れ戻される。
幸さんはどこへでも現れる。
隣の部屋のおばあちゃんと話をしていたと思いきや、私がダッシュで階段を駆け降りると、
幸さんがひょっこり出てきて「廊下は走っちゃダメーー」とマッハで追いかけてくる。(自分も走ってるくせに!)
2階のトイレの古びた窓を枠ごと外して、飛び降りて外へ出ようとして、窓の下を見下ろすと、
庭から幸さんの「危ないよー何してんの!?」と叫び声がする。
そう。幸さんは私の監視員。
ずっと私の周りにいて、逃がしてくれない。
「今日も負けた…。」
「?…お腹すいてたの?暴走しないでよ〜こはちゃんったら、怖いなぁ。」
笑いながら幸さんは帰っていく。
「あーあ」
どうにかして幸さんの目を掻い潜って、脱出したい。
早く病院から出て、自由にならなくちゃ、おばあちゃんになっちゃう!!
何かいい方法はないかなぁ....。
- Re: 海のいろ。 ( No.2 )
- 日時: 2023/10/01 22:15
- 名前: Sumo* (ID: 8kWkLzD1)
「それで。なんで俺に言うのかなぁ」
「だってーそれくらいしか手段が」
「意味分かんないことに付き合ってる暇はないんですよーだ」
「いつも暇でしょ、」
「なわけないだろ」
私は自力で脱出するには難易度が高いので、(唯一の)知り合いに聞いてみることにした。
もう機種が古いであろう使い古したスマホから、あきれた声が返ってきた。
「そんなことは自分で考えろよな」
「考えて、毎日実行してるのに、成功しないの!!」
「あっそ」
「お願いっゆーたしか頼れる人いないんだからっ」
「それはお前がぼっちだからだろw乙~」
「ひどっっ!さいてーーーばーかばーか....!!」
「あ、そういうこというんだーじゃあもう電話切るぞー」
「あーうそうそごめんなさい、何でもするので手伝ってくださいーー」
「...いいよ、じゃあ手伝ってあげるw」
「ほんとっっ!?」
「その代わり、病院から出たらこき使ってやるからな」
「おすきにどーぞかまいませんよーだ。で、さくせんは?」
「あ?今から考えるんだよばーかw」
「え..そ」
「なんか文句でも?」
「いいえーなにもないです、おねがいします!思い付いたらLINEしてっ」
「はいはい、お元気でー」
そっけない返事で電話がプツリと切れる。
「あーあ。あいつはいいよなぁ、毎日ゲーム三昧、お菓子食べ放題で。」
....勝手な想像だけど。
__真っ白な病室には、私しかいない。
電話を切ると、病室は静まり反って寂しかった。
父も母も、側にはいない。話し相手の友達もここには誰一人居ないのだ。
「お母さんの作ってくれる肉じゃが、食べたいなぁ..。」
「やっほーいこはちゃん、今日はにくじゃがだよん」
勢いよく扉が開いて、(最強監視員)幸さんがワゴンを押して入ってくる。
「...はーい」
ゆーたを説得していたら、もうお昼になってた。
幸さんが目の前の机に肉じゃがと、ごはんを置いてくれる。
(..私が食べたいのは、これじゃないんだけどな。)
なーんていったら、きっと幸さんが怒るだろう。
「調理員さんが頑張って作ってくれてるんだよ!?」って。
そんな風に思いながら幸さんを見ていると、
コップにお茶を注いでいた幸さんがぱっと、顔をあげた。
「...こはちゃん、どしたの?具合でも悪い?」
「..!ううん、違うの、ありがとう。いただきます」
慌てて手を合わせて、お箸を持つ。
少し薄い味。体に良いように作ってくれてるんだろうけど、物足りない。
私だって、もう中学生だもん。
世間の子みたいに、原宿でなんか虹色の綿飴食べたり、
みんなでカフェで勉強したり、友達とかわいいスイーツ食べに行ったりしたいのにな。
(なんで、私だけ...)
しんみりとした優しい味が、心に染みる。
やっぱり、こんなところで死んで終わりたくない。
「....絶対勝つから!!!」
闘志に燃えて、私は絶対に病院からでてやると心に、誓った。
幸さんはきょとんとしていたけど。
- Re: 海のいろ。 ( No.3 )
- 日時: 2023/09/30 21:35
- 名前: Sumo* (ID: 2cE7k4GX)
「こはちゃーん」
ある日私が作戦を練るためゆうたとLINEしていると、幸さんがひょっこりと顔を出した。
「こはちゃんこはちゃん、お菓子食べない?」
私がばっと、布団にスマホを隠したのを見ると、幸さんはにやにやして、私に詰め寄った。
「なに、かれしぃ?もしかして..付き合ってるの~?」
きゃーきゃーする幸さんを睨み付けて、
「そんなんじゃない!!こいつは恋愛対象じゃないからっ!」と慌てて誤解を解こうとするが、
幸さんは「おとりこみちゅー失礼しました!!これ、よかったら食べてね!」
とぽいっとキノコの森を投げつけて、きゃーーと小走りで立ち去ってしまった。
「はぁ...。」
まぁいいか。
「てか、私はタケノコの村の方が好きなんだけどなぁ...。」
とぶつぶついいながらLINEを再開した。
{まず、病院から出たとして、そこからどうするかだ。
{お前んちと病院、徒歩で歩いて帰ってくるのは無理がある。だから電車に乗るんだけど..。
お金ないよ、}
{だろうな
{親にでも頼んだら多少の小銭くらい貰えるんじゃないか?
う~ん。なんて言ったら貰えんのかな}
{知らね。適当に言っとけよw
ちょっと、真剣に考えてよね}
{何か文句でも?
いえ、何も}
{電車だけど、お前一人で乗れんの?
は?}
バカにしないでよね}
{いやでも、お前めっっっちゃ方向音痴じゃん
{切符の買い方分かってる?
実は}
{わかんないんだな、よし覚えろ
無理だよ一人で乗ったことないもん...}
{まじか
まぢだよ}
{困ったな、お前の環境が思ってたよりヤバいから、ちょっと考えるわw
がんばー。しくよろ}
{そういう生意気なのだけは病院育ちでもくっついてくるんだなw
なんですと?}
{なんでも。
(いや、病院育ちだから、生意気なのか..?)
携帯を布団に放り投げて、俺も布団に頭を突っ込んだ。
なんか、面倒なことになりそ。
別にこはるが病院を出ても出れなくても、ぶっちゃけどっちでもいいと思ってる。
でもまあ、やることも無いし。
あいつなりに必死なんだろうから、まあ手伝ってやろうと決めた。
なんとなく。
ほんとに、なんとなく。
さっき投げた携帯から着信音が聞こえる。
母からだった。
{ゆうたー今日帰り遅いから、お弁当レンジでチンして食べて。お風呂入っておいてね」
俺は部屋を出た。
机に置いてあったコンビニの唐揚げ弁当をレンジに突っ込んで、テレビをつけた。
今ごろあいつはなにしてんだろ。
(のんきに病院食でも食ってんのかな。)
そんな光景がなんだか想像できた。
電子音が寂しげに鳴って、電子レンジが止まった。
弁当の蓋を開けて、割り箸を割る。
熱々の唐揚げを口に入れながら、携帯を眺めていた。
{ね~いい案思い付いた?私早く帰りたいよー家に
こはるから苦情が来ていた。
- Re: 海のいろ。 ( No.4 )
- 日時: 2023/10/01 22:16
- 名前: Sumo* (ID: 8kWkLzD1)
朝起きて、スマホを覗くと、一件、通知が来ていた。
ゆーた{うるせぇ
凍り付いた、というよりは固まった。
昨晩、いい案思い付いた?早く帰りたいと急かしてみたのが逆効果だったか。
案を考えてくれるとは言ったものの...。
「あいつは使えん!!!」
スマホを病床に叩きつけて、私の一日は始まった。
「おはよーんこはちゃん元気してるぅ?」
元気に揺れるポニーテールに大きな黒いリボン。
最強看護士幸さんは、今日もハイなテンションで部屋を覗きに来る。
「早起きは三万の得だよー」
「..だいぶ盛ってない?」
ゆうたは使えないことが発覚したので、
朝食を済ませ、早速脱出計画を練った。
脱出を成功させるには、とりあえず"地図"を描いて、
建物内の細かなところまで"じゅくち"するのが大事らしい。
この間、幸さんがどこかから借りてきた画質の荒いスパイ映画で観た。
探偵が地図を描くシーン!!
(..もしかしたら病院内にも「かくしつうろ」があるかもしれないよね!)
私は早速、病院内を練り歩いて、地図を完成させることにした。
事務室から略奪してきた大きな模造紙を引きずり、
定規と鉛筆を手にして、私は病室を出発した。
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