複雑・ファジー小説
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- スターワグナリー冒険記 ~ドレトンの宝玉編
- 日時: 2023/10/28 23:20
- 名前: 〆切 逃 (ID: T3oqfZAk)
世界には僕たちの文明では到底触れることすらできない、摩訶不思議な物質が無数に存在している。それはどの世界だってそうだろう。僕はそう信じていた。
でもある日を境に、世界は摩訶不思議な物質で満たされていった。
僕たちには到底理解のできないその世界に到達した時、僕は何を求め、何をして、何を得るのか。はたまた、そのまま淘汰されてしまうのか。
僕は必ずこの世界の果てへ辿り着く。
この道に如何なる苦難があろうとも。
僕は全ての真理をこの目に焼き付けるんだ。
~スターワグナリー冒険記
【ドレトンの秘宝編】
まとめ読み
>>1-6
個別目次
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>>9
>>10
- Re: スターワグナリー冒険記 ~ドレトンの宝玉編 ( No.2 )
- 日時: 2023/09/07 22:40
- 名前: 〆切 逃 (ID: T3oqfZAk)
……もしかして、グラディウスの持ち主はあの森林へ向かったのだろうか。だからと言って武器を砂浜に投げ捨ててから森林に飛び込むだなんてあまりにも無謀ではないだろうか。ローマの時代背景を考えれば他にも武器を持っていた可能性も考えられるには考えられるが、結局は前述の疑問への解とはならなかった。
とりあえず、グラディウスは護身用に持っていこう。この先に持ち主がいれば返してあげよう。そう思いながら、あえて森林から外れるようにして僕は砂浜を歩き続ける。
…けれど、いつまで経っても砂浜から抜けられる雰囲気はない。ただ歩き続けるだけでは途方に暮れてしまうような気がする。僕はあえて折り返し、さっきの森林へ戻ろうとした。きっとこんな外れじゃなければ原住民の住まう村やら遭難者のキャンプくらいはあるはず。それに、さっき見えた巨大樹も気になる。大抵RPGでは巨大樹の中にダンジョンやら集落とかがあるって相場が決まってるし。
さて、そうと決まれば早速まだ見ぬ新天地へ突入だ。
グラディウスを右手に、近くに落ちていた2Lジュースのペットボトルに注いだ海水を左手に拵えて。
ちょっと防御面と機動面が不安だが…そこは奥義、ポジティブシンキングでなんとかして。
いざ、出撃ーーー!!!!
- Re: スターワグナリー冒険記 ~ドレトンの宝玉編 ( No.3 )
- 日時: 2023/09/08 18:03
- 名前: 〆切 逃 (ID: T3oqfZAk)
森にそーっと息を抑えて近付いていく。森に近付けば近付く程、ここが熱帯ではないかと錯覚を覚える湿気を感じる。森林に蔓延る草木に近付いてみたところ、僕は一つ、恐ろしい事実を悟った。
「この草………背丈の数倍もある…?!」
遠目から見ればその森は全くもって平々凡々な大きさではある。が、なんの魔術か遠近法かは知らないがその森は近付けば近付く程大きくなっていくのだ。森がこんなに大きいのなら、きっとここに住まう野蛮な輩ども、例えばゴブリンなんかもめちゃくちゃでかくなってるはず。海水をちょびっと飲み、グラディウスを握り締める。草木を掻き分け、いよいよ森に突撃だ。
『うおッ…!!来るな来るな!!これは俺様の獲物なんだ!!!』
『グボボ!!ベジャレラリキ!!』
『何言ってんだよこのバケモン!?』
…やけに騒がしい。声の方向からしてこの巨大雑草の先で騒ぎが起こってるはずだろう。勇気を持っていざーー!
『リビビ!ベジャレラリキ!!』
「わッ……?!」
いつの間にか後ろを取られていた。さて、刹那の合間に分析できたことを纏めよう。奴らは容姿からして所謂ゴブリンのような魔物だろう。森に似付かず図体は小さかった。だが、奴等の口からは異様な腐敗臭を感じる。死肉を貪り食らう一族なのだろうか。そういえば…肉食が故か、やけに腹が出っぱっていた。あと、一瞬奴等の瞳が紫色にほんのり光輝いていたっけ。…なんて分析している合間に、いよいよ奴のこん棒は僕の脳天をカチ割った。視界が揺らぎ、手足に痺れが走る。逃れるために歩こうにも歩けず、その場に倒れ込んでしまった。
僕の冒険も、ここで終わりか………。
- Re: スターワグナリー冒険記 ~ドレトンの宝玉編 ( No.4 )
- 日時: 2023/09/29 15:31
- 名前: 〆切 逃 (ID: T3oqfZAk)
………とても暗い。
脳に鈍い痛み。記憶を遡ると、その要因がゴブリンらしき魔物による物であると教えてくれた。だが、どういうわけか僕はまだ生きているようだ。次第に手足の感覚がハッキリとし、やがて僕は目を醒ます。
「おい村長!ようやく起きたぞ!」
「オイ!騒ぐな!!そいつは重症じゃ、脳へ響くじゃろうが!!」
…………お目覚め早々手厚い歓迎のようだ。耳を塞ごうと手を耳へ被せ、声の主の片割れがいるであろう隣を見る。
恐らく身長180cm程だろう。その男は髪が黄金に輝いており、瞳も碧色に輝いている。筋骨隆々で中々逞しい。右手には自分がさっきまで護身用に持っていたグラディウスを携えている。なるほど。あのグラディウスは彼の物であったのか、と妙なところで合点が合った。
まじまじと彼を観察していると、彼がふと右を向く。それに釣られて僕も左を向くと、そこにはヨボヨボそうなお爺さんがタオルとお粥のようなものを持ってこちらへ向かっていた。先程の怒声のぶつけ合いから察するに、きっとこのお爺さんが村長なのだろう。
「…ここは、何処ですか?」
「ここ、か………。ここはのう………」
村長が答える前に、
「ムラタ村。」
グラディウスの男がそう答える。続けて村長が、
「ここは…『罪子の捨て場』じゃ。」
『罪子の捨て場』…?
突然聞き覚えのない単語が現れた。語感からして良い意味ではないだろう。少しばかり失礼なことを伺うのかもしれないが、僕は村長にその意味を問うことにした。
「『罪子の捨て場』って………?」
「それはのう………『十戒』から正式に認められていない輩の溜まり場じゃ。」
謎が謎を呼ぶ返答。『十戒』といえばキリスト教のアレが思い浮かぶが…。
「『十戒』は…そうじゃな、この世界を統べる『連邦政府』の管理下にある治安部隊と呼べるような組織のことじゃ。その名の通り、十戒には十人の『戒者』が属しておる………。その『戒者』は七人の指揮系統を担当する『統戒者』、そして現場での指揮や鎮圧を担当する『審戒者』に分かれておるのじゃよ。」
………なんで一介の村長がこんなこと知ってるんだ?そう疑問に思っていると、
「フン…。なんで一介の村の村長がそんなこと知ってんのか、みてーな顔してんな。」
「………この村にその戒者の一人が滞在してたことがあんのさ。そいつは俺にとって………」
「『師匠』だ。」
- Re: スターワグナリー冒険記 ~ドレトンの宝玉編 ( No.5 )
- 日時: 2023/10/07 00:01
- 名前: 〆切 逃 (ID: T3oqfZAk)
……そんな大層な人がライバルだァ?
…中々に不思議な話だ。しかし、彼の筋骨隆々なその姿に体に浮かぶ幾多もの傷痕。それは彼の発言を裏付けるかのように異様なまでの存在感を放っている。
彼の身体をマジマジと眺めていると、フン、と彼ため息を溢した。ピクリと驚き彼の顔を覗いてみると、血管が兎に角浮かび上がっている上に僕を睨み付けているじゃあないか。なんだ…?と、彼の様子を伺っていると…
「信じてねェみたいだな。もしかして…俺の『師匠』のことでも疑ってんのか?」
と、彼が切り出して来た。正にその通りだから困る。図星ですとしか言えない。そうしている合間にも彼の表情がみるみる険しくなっていく。僕が瞬きをしようとしたその一瞬、前方から勢い良く左足が突っ込んできた。チャキ、っと剣が鞘から抜かれる音がする。
「…テメェ。そこまで信じらんないんなら……見せてやろうか?」
そう言いながらひんやりとした何かが僕の首筋にチョン、と叩きつけられる。こんな状況じゃあそれがグラディウスの刃であることは丸分かりだが、そうだと分かったところで何の意味もない。しかし、幸い僕の首が断ち切られることはなかった。
「…黙ってないで外へ出ろ。見せてやる。」
グラディウスを持ち出したまま彼が外へ飛び出した。
生きている実感が全くせず、浅く息を吸いながらベッドからゆっくり飛び起きた。さて、気付けば村長ももう外へ出ているようだった。ベッドの傍らにいつの間にか携えられていた木刀を手に持つ。(勝てはしないだろうけれど…もしあいつに襲われてもこれで応戦はできるはず…)それは非力な僕への唯一の希望である。木刀を手に、ビクビクしながら玄関の戸を開けると………
外は意外にも賑わっていた。村民達が僕に向けて応援や祝福をしてくれている。戸惑いながら玄関の前で突っ立っていると、近所の家から飛び出してきた男の子が、
「お前スゲーな!!あのカシのにーちゃんと闘うんだろ!?」
とか言い出しやがる。それを聞き付けたのかぞろぞろと子供達がここに集まってくる。みんながみんな大体そんなことを言っているようだ。噂の伝達速度程恐ろしいものはないだろう。それはそうと…あの男は『カシ』という名前なのだろうか。とりあえず覚えておこう。
ゆっくり、恐る恐る前へ歩んで行く。子供達が群れを作り僕の周りを囲っていた。子供達が調子に乗ってきて、みんながみんな僕を煽り始める。その時だった。
ドン!!!
と、地面を何か鈍い物で叩きつけるような音が響き渡る。子供達は大慌てで泣きながら帰ってった。僕もその物音に驚いて逃げようとした…が。逃げようとした時、後ろから誰かに左腕が強すぎる力で引っ張られていたのだ。
気付けばそこは村と森の外れ。実に…訓練場として扱うには相応しい大きさで。
その周囲には観客として並ぶ村民達に…
泣いて帰ったと思った子供達も目をキラキラさせて村民達の側に並ぶ。
となると………後ろにいるのは………………………。
僕が振り返るよりも前に、彼が口を開く。
「テメェ……逃げんなよ?」
- Re: スターワグナリー冒険記 ~ドレトンの宝玉編 ( No.6 )
- 日時: 2023/10/28 23:19
- 名前: 〆切 逃 (ID: T3oqfZAk)
その争いはあまりにも呆気なく終わりを告げることになりそうだ。
僕は慌ただしく木刀の柄を握り締めようと手を振るも、思わず手汗により滑ってしまい、その隙にと言わんばかりに刃を突き立て突撃してくる彼に向けて僕は精一杯の抵抗にと拳を振るう。
「遅ェな。」
僕の拳が宙を突く。軽やかに彼はその一撃を受け流しながら僕へ向けて振り上げられた刃から恐ろしい程のスピードで太刀が繰り出される。思わず僕は利き手ではない左手でガード。生身ということもあってかその一瞬、彼が振り下ろす太刀の速度が微妙に落ちたのだ。よく見れば彼も「マジかコイツ…」みたいな表情で僕を見つめていた。肉にめり込んだ刃から強引に刃を突き放し、思わず痛みに負けそうになりながらも僕は彼へ向けて再び拳を振り下ろした。
「ーッ!!!」
また受け流そうと彼は後ろへ仰け反った…のだが、それよりも拳の到達の方が早かった。
鈍いであろう一撃が彼の臍めがけて直撃する。
「効くな…っ!!!」
仰け反りながらも彼は笑みを浮かべている。痛みに圧されながらも僕も負けじと彼を煽ろうと口を開ける。
が、それよりも早く彼が踏み込んだ。
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