複雑・ファジー小説
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- スターワグナリー冒険記 ~ドレトンの宝玉編
- 日時: 2023/09/07 21:25
- 名前: 〆切 逃 (ID: T3oqfZAk)
世界には僕たちの文明では到底触れることすらできない、摩訶不思議な物質が無数に存在している。それはどの世界だってそうだろう。僕はそう信じていた。
でもある日を境に、世界は摩訶不思議な物質で満たされていった。
僕たちには到底理解のできないその世界に到達した時、僕は何を求め、何をして、何を得るのか。はたまた、そのまま淘汰されてしまうのか。
僕は必ずこの世界の果てへ辿り着く。
この道に如何なる苦難があろうとも。
僕は全ての真理をこの目に焼き付けるんだ。
~スターワグナリー冒険記
【ドレトンの秘宝編】
まとめ読み
>>1-2
個別目次
>>1
>>2
- Re: スターワグナリー冒険記 ~ドレトンの宝玉編 ( No.1 )
- 日時: 2023/09/07 22:40
- 名前: 〆切 逃 (ID: T3oqfZAk)
「うぐ…目が…目が焼ける…………」
僕はそう狼狽えながら目を覚ました。目を覚ました時、まるで長時間、ずっと太陽を肉眼で眺め続けていたような痛みを覚えた。が、しっかり目が見える。特に目には何の異常もないようだ。夢と思い込みだったのだろうか。
「あれ…?なんともない…」
一先ずは安心し、空に浮かぶ五つの太陽を尻目に優雅にバカンス気分で砂浜に寝転ぶ。
………ここ、どこだ?
とりあえず冷静に寝る前の出来事を思い浮かべよう。
僕は寝る前しっかり家の中の自分の部屋にあるベッドの中に入って眠ったはず。
というかそもそも太陽が五つあるのがおかしい。太陽なんて一つしかなかった。というかそもそも太陽は五つもいらないじゃないか。
ついこの異様な光景に納得してしまった自分が悔しい。バカンス気分で満喫しようと思った自分が悔しい。
…待てよ。さっきまで僕は寝てたんだ。この状況はきっと夢だろう。さあ、頬をつねって現実へ戻ろう。多分今頃僕の母さんが美味しい目玉焼きを作っているはずだ。そして、今日も母さんの美味しいご飯を食べて、友達と話して、勉強をして、部活で汗水垂らしながら懸命に頑張って…帰ると母さんがハンバーグを作ってくれてるんだ。
………頬がめちゃくちゃ痛い。
さて。こういう時こそ冷静になるべきだ。
ここはどこなのだろう。巷で噂の異世界にやって来てしまったのだろうか。ならトラックがどこかに埋まってたりするのかもしれない。ようやく重い腰を上げ立ち上がり、僕は裸足のまま砂浜を一歩、また一歩とゆっくり歩いていく。
足にこびりつく、熱を帯びながらジャリジャリとした砂の感触。稀にあるゴツゴツとした砂を足で踏み崩す感触。視覚と触覚が、まだ少し残っていた『夢ではないか?』という僕の希望を打ち砕く。しかも誰もいない。
絶望感と孤独感に苛まれながら歩いていると、砂浜に埋まる新品のグラディウスを見つけた。
中学生時代に図書館で借りた本で見たことがある。グラディウスは古代ローマの時代に造られていた片手剣らしい。であれば、錆びていてもおかしくはないはずだ。
引き抜いてみたところ、柄からはちょっと前まで握られていたようなぬくもりを感じる。刃を見ても錆びているどころか刃こぼれなどもしておらず、「戦で使われようとした寸前で転移しちゃいました」みたいな感じだった。
ということは近くに持ち主がいるはずだが、周囲を見渡しても全く誰もいない。
不思議だなあ。と思いつつ、僕は左へ振り向いた。
…何故気付かなかったのだろう。
その目線の先には、疎らに木々が生え並ぶ森がありー
ー天高くにそびえ立つ、巨大な樹が一本佇んでいた。
- Re: スターワグナリー冒険記 ~ドレトンの宝玉編 ( No.2 )
- 日時: 2023/09/07 22:40
- 名前: 〆切 逃 (ID: T3oqfZAk)
……もしかして、グラディウスの持ち主はあの森林へ向かったのだろうか。だからと言って武器を砂浜に投げ捨ててから森林に飛び込むだなんてあまりにも無謀ではないだろうか。ローマの時代背景を考えれば他にも武器を持っていた可能性も考えられるには考えられるが、結局は前述の疑問への解とはならなかった。
とりあえず、グラディウスは護身用に持っていこう。この先に持ち主がいれば返してあげよう。そう思いながら、あえて森林から外れるようにして僕は砂浜を歩き続ける。
…けれど、いつまで経っても砂浜から抜けられる雰囲気はない。ただ歩き続けるだけでは途方に暮れてしまうような気がする。僕はあえて折り返し、さっきの森林へ戻ろうとした。きっとこんな外れじゃなければ原住民の住まう村やら遭難者のキャンプくらいはあるはず。それに、さっき見えた巨大樹も気になる。大抵RPGでは巨大樹の中にダンジョンやら集落とかがあるって相場が決まってるし。
さて、そうと決まれば早速まだ見ぬ新天地へ突入だ。
グラディウスを右手に、近くに落ちていた2Lジュースのペットボトルに注いだ海水を左手に拵えて。
ちょっと防御面と機動面が不安だが…そこは奥義、ポジティブシンキングでなんとかして。
いざ、出撃ーーー!!!!
- Re: スターワグナリー冒険記 ~ドレトンの宝玉編 ( No.3 )
- 日時: 2023/09/08 18:03
- 名前: 〆切 逃 (ID: T3oqfZAk)
森にそーっと息を抑えて近付いていく。森に近付けば近付く程、ここが熱帯ではないかと錯覚を覚える湿気を感じる。森林に蔓延る草木に近付いてみたところ、僕は一つ、恐ろしい事実を悟った。
「この草………背丈の数倍もある…?!」
遠目から見ればその森は全くもって平々凡々な大きさではある。が、なんの魔術か遠近法かは知らないがその森は近付けば近付く程大きくなっていくのだ。森がこんなに大きいのなら、きっとここに住まう野蛮な輩ども、例えばゴブリンなんかもめちゃくちゃでかくなってるはず。海水をちょびっと飲み、グラディウスを握り締める。草木を掻き分け、いよいよ森に突撃だ。
『うおッ…!!来るな来るな!!これは俺様の獲物なんだ!!!』
『グボボ!!ベジャレラリキ!!』
『何言ってんだよこのバケモン!?』
…やけに騒がしい。声の方向からしてこの巨大雑草の先で騒ぎが起こってるはずだろう。勇気を持っていざーー!
『リビビ!ベジャレラリキ!!』
「わッ……?!」
いつの間にか後ろを取られていた。さて、刹那の合間に分析できたことを纏めよう。奴らは容姿からして所謂ゴブリンのような魔物だろう。森に似付かず図体は小さかった。だが、奴等の口からは異様な腐敗臭を感じる。死肉を貪り食らう一族なのだろうか。そういえば…肉食が故か、やけに腹が出っぱっていた。あと、一瞬奴等の瞳が紫色にほんのり光輝いていたっけ。…なんて分析している合間に、いよいよ奴のこん棒は僕の脳天をカチ割った。視界が揺らぎ、手足に痺れが走る。逃れるために歩こうにも歩けず、その場に倒れ込んでしまった。
僕の冒険も、ここで終わりか………。
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