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複雑・ファジー小説
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- 髭の男
- 日時: 2024/09/30 03:45
- 名前: vivi (ID: naq2vFVH)
(上)
少し肌寒くなり始めた秋の初め。二十六歳の朝を迎えた男が居た。築40年の古びたアパートの一室でひっそりと暮らしている。
「もう二歳も離れてしまったね。」黒い疎髭を生やした男がそう低い声で呟いた。日の光が窓から上手く入らない暗い部屋に独り。哀愁漂う小さな背中は其処に在った。今にも震えそうな手で一枚の写真を手にして。
(下)
彼女と出会ってから僕の生活の質は一変した。その変化を善悪では捉えられない。彼女と居た頃は毎日背筋が伸ばされている感覚があった。その感覚が僕にとっては、うざったくまた心地良かった。今ではもうそんな感覚は失せてしまった。毎日々々、変わり映え無くて味気無いものに戻ってしまった。それは、一層彼女との想い出を鮮明にしている気がした。彼女と共に時を過ごす中で人を愛する感情を知った。僕がこんなにも他人を愛せる事を知った。
僕が別れを以て人の本当の大切さに気づく事も、、、知った。祭壇に置かれた遺影には、もう僕の側に居ない愛して止まない彼女が映っている。
「僕は君の死に対して無防備だった。」
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