複雑・ファジー小説

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幽霊はもう一度少女の笑顔が見たい
日時: 2024/10/06 00:53
名前: 三日月 ルア (ID: GSdZuDdd)

初めまして三日月ルアと申します。
小説を書くのは始めてで、色々ミスもあると思いますが何卒よろしくお願いいたします

キャラクター紹介
鈴村柚月 (すずむらゆずき)
中学二年の少女。六歳の頃に父を亡くし、母親からネグレクトを受けている。中1の時のい○めで片目が失明し、眼帯を着けている。
最近の悩みは死んだ幼なじみの幻覚が見える事。

榎本白怜えのもとはくと
柚月の幼なじみであり、中学二年の時に事故で亡くなった少年。優しくて柚月の唯一の味方でもあった。幽霊になっても幼なじみの事が心配で見守っているが柚月からは冷たくあしらわれている。
~~~~
「ただいま。」
そう言っても、返事は返ってこない。
リビングの電気は付いてるし、テレビの音も聞こえてくる。
いつもの事だ。母は父が死んでから私を空気として扱うようになった。と言っても怒鳴ったり、殴ってきたりしないだけマシだと今は思っている。昔は自分を見て欲しいと頑張った。でも、母は私を見てくれなかった。
それどころか私の右目が見えなくなった時に母は「何で、余計な手間を掛けさせるのかしら」と言った。
そう言われた時に私は母に期待するのを辞めた。
学費は払ってくれてるし、それだけでもまだマシだと思っている。

「お帰り、ユズ。」
部屋に入ると黒い髪の少年がそう言って微笑んでた。
「……。」
私と同じ中学の学ラン。赤い目、幽霊が頭に着けてるような布(?)、そして透けた体。
榎本白怜。今は亡き私の幼なじみ。
昔は泣いてばかりの私に優しく声をかけてくれた。中学でい○められてた時もいつも「大丈夫?」って言ってくれた。私が失明した時に最初に病院に来たのも、私が失明した時に泣いて抱き締めてくれたのも、ハクだった。
そんな優しい彼は、中二の夏に事故で死んだ。
車に轢かれそうになった子供を助けて自分が犠牲になった。最後まで誰かの事ばかり。
「…ッ!何で…。その優しさで…自分が死んで…どうすんだよ…!!」
私は彼が居なくなった日から生きてる理由がわからなくなった。
だから腕を切ってハクの所に行こうと思った。
だけど、私は保健室で目を覚ました。
ああ…生きちゃったんだ…。って思った時だった。
「……え…」
ハクの顔がそこにある。目は赤いけどその優しい顔は紛れもなく私の知ってる榎本白怜だった。
「……ハク……?」
「!ユズ……?」
ハクは安堵の笑みを浮かべてた彼は驚いた様な顔をしている
……あぁ…そっか…。私は…幻覚を見てるんだ…。
何となくそう思った。幽霊でも何でもいいからハクが今、ここにいる
そんな幻想に浸りたかったのかもしれない。
そんな私の幻覚なんだと。
それ以来、ハクの幻影は私に語り掛けてくる様になった。他愛のない話や思いで話。
そんな話しは、今の私の心を締め付けるだけ。
「ユズ?ねぇユズったら、柚月さーん?」
「……。」
「何で、俺の事見えてるのに無視するの?」
「……だって、貴方は私の幻覚でしょ?」
「…幻覚?」
「そう。私が見てる幻覚。私が、ハクが居ないという事実から逃げたいが為に見てる幻覚」
「……幻覚かぁ…。」
彼は少し寂しそうな笑みを浮かべる。
「それよりユズ、最近昼飯食ってないでしょ。」
「……。」
「いくら節約の為とはいえ、ちゃんと食べないと。ただでさえ細いんだから」
いや、オカンかあんたは。
そういう世話焼きな所もハクと同じ。
私の幻覚にしてはよく再現できてるな。
「ユズ、今日はお母さんが夜勤の日でしょ?あの映画見ようよ。昔みたいにさ。」
「…いいけど、何でお母さんが居ない時なの?」
「娘が幻覚と話してたら、流石に怖いでしょ。それに、俺が二人で見たい。」
「…はぁ…。分かったよ。」
「やった!」
そうやって無邪気に喜んでいる。そういう所も彼と同じ。
私の幻覚なのは分かっている。
だけど、彼とまた過ごしている。そんな感覚に囚われている。偽物だって分かっている。だって、本当の彼はもう居ないから。
でも、もう少しだけ、幸せな夢を見たい。
~~~
部屋のドアが開く
そこには眼帯を着けた少女、鈴村柚月が居た。
「お帰り、ユズ」
そう声を掛けるも彼女は無言で鞄を置いて、椅子に腰かける。
「ユズ、今日は学校で何もされてない?昼飯食った?」
「……。」
また無言。確かに見えているはずなのにな。
だってあの時、ユズが腕を切って、目を覚ました時、俺を見て、名前を言った。
「…ハク…?」
あの時に俺は確信した。前まで見えてなかったのに見えるようになった…と。
だから俺は他愛のない話をするようになった。学校はどうか、無理してないか、とか。昔の思い出話とか。だけどユズは答えてくれない。どんなに呼んでも少しこっちを見て、すぐにそっぽを向いてしまう。
「…ユズ?ねぇ、ユズったら、柚月さーん?」
「…。」
「何で俺の事見えてるのに無視するの?」
俺は気になってた事をついに聞いた。すると彼女が始めて口を開いた。
「…だって、貴方は私の幻覚でしょ?」
「…幻覚?」
「そう。私のハクが居なくなった事実から逃げたいが為に見てる幻覚。」
ユズは淡々とそういった。
「…幻覚かぁ…。」
本物なんだけどな。幽霊になったけど、俺は、僕は正真正銘榎本白怜なんだけどな。
「それよりユズ、最近昼飯食ってないでしょ。」
俺は話を反らした。口を聞いてくれた今ならちゃんと聞いてもらえると思ったから。
「いくら節約の為とはいえ、ちゃんと食べないと。ただでさえ細いんだから。」
ユズは呆れ顔で俺を見ている。最近暗い顔ばかりだった彼女のそんな顔は久しぶりに見た。
「ユズ、今日はお母さんが夜勤の日でしょ?あの映画見ようよ。昔みたいにさ。」
「…いいけど、何でお母さんが居ない時なの?」
「娘が幻覚と話してたら、流石に怖いでしょ。
それに、俺が二人で見たい。」
呆れたようにはぁ…とため息を吐いた彼女は
「…分かったよ…。」と言ってくれた。
そのときのユズは少し笑ってる様に見えた。
「やった!」僕は嬉しかった。こうして、ユズと二人でまた話せることに、ユズが少しでも笑ってくれた事に。
ねぇ、お願い、神様。少しだけでいい。少しだけでいいからまだこの幸せな時を過ごさせて。


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