複雑・ファジー小説

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3年後に散る君。
日時: 2025/01/11 21:30
名前: きゅうりむし (ID: 7Qg9ad9R)

「私、半年後に死にまぁ~す☆」
「「「はぁ?」」」
「………?」
えっと……僕は今日から晴れて(?)高校生になって、色々な段取りを済ませ、それで自己紹介する事になって、それで自分の自己紹介が終わったかと思えば、爆弾を投下された訳なのだが……
「………音音おとねさん、悪い冗談は止しなさい。」
僕の担任となった女性が、”おとね”と呼ばれる彼女をそう叱った。
「は~~い、流石に半年は言い過ぎだったね~」
そう、彼女が言うと他のクラスメイトは安堵の顔をした。
「という訳で、私は2年後に死にまぁ~す!!」
「「「はぁぁぁぁ~?」」」
と、先程よりもクラスメイトが驚いていた。
「音音さん!?本当にそういうのは……」
「先生、待ってください。流石に全部聞いてから一気に叱ってくださいよぉ~」
何だろう、どういう類い説得何だろう。
「はぁ……分かりました。私は、最後まで止めないようにします。その代わりに、最初から、分かりやすく、具体的に説明してください。」
「は~い………」
どこか気だるそうに返事をした彼女は改めて、自己紹介を始めた。
音音音葉おとねおとは15歳!!
誕生日!!2月20日!!
好きな食べ物!!緑茶!!
趣味!!魚釣り!!
私は、3年後に死にまぁ~す!!
これで、自己紹介を終わります。
さ、皆拍手、拍手!!」
誰も拍手しない。流石にそうだろう。
まぁ、彼女は少なくとも馬鹿だとは分かったような気がする。
何だろう、好きな食べ物緑茶って。
他にも、ちゃっかり死ぬ宣言の期間延ばしてるし。
「……音音さん、もう貴女に関しては何も言わないので、席に戻ってください。」
「え~つまんないのぉ~………」
彼女はそう言って席に戻ろうとするが……
「あっ!!忘れてたぁ~私に質問、ありますか?」
………そりゃ、高校生活初日にこんな爆弾を投下する彼女に興味の無いクラスメイトは居ないだろう。でもここで質問する勇気は常人じゃ湧かない。
「は~い」
自分の席の隣の子が手を挙げた。
いや、まぁ、さっき僕が思ってた事に当てはまらない……つまり常人では無い者がこの中には居たようだ。
「はい、そこの君!!どうぞ」
「名前の由来って何ですかぁ~~」
………やはり、常人では無い人間は少々的外れな所を歩んでいるようだ。そこで、名前の由来を聞くとは誰も思って居ないだろうよ。
「う~ん、とねぇ~」
そこで、何も疑問に思わず答えようとする彼女も彼女だとは思う。
「この名字と名前って結構面白いでしょ?んでね、名前にも音って文字を入れたい親父さんが酔った勢いで考えたのが、私の名前って訳なぁの。」
「へぇ~、答えてくださりありがとうございました。」
「いえいえ~」
やはり、蛙の子は蛙何だな。酔った勢いで子の名前を決めたりする辺り、言葉に言い表しにくいが、似ている……よね?なんか、不安になってきた。まぁ、狂っているという辺りは似ているだろう。
「他に~何か、ある人~」
………居ないだろう。理由はさっきも述べた通りだ。
というか、先生も止めないんですか?職務を全うしましょうよ、職務放棄しないでって……寝てるな、目瞑ってる。
「え~居ないのぉ~つまんないのぉ~……じゃ、話したい事話すね。」
勝手に話すなら最初からそれで良いのでは?とか思ったけれど、彼女にはそういうのは気にしない方が良いと気づき始めた。
「えっとぉ~私は、病気も何も患っていないものスゴォォォォォイ健康体です。」
「「「え??」」」
これに関しては、彼女が自己紹介を初めてから1番驚いた。
自分の考えとしては、何か……というか余命宣告されるレベルの大病を患っていると思っていた。多分、他の人も驚いていたのは大方、自分と同じような考えだったからだろう。
「えっ、じゃ、何で?っと皆様は思ったでしょう。クックック……私はねぇ~3年後のこの日……つまり4月1日に首吊り自殺をするからだYO☆」
「「「はぁぁ?」」」
……そうなってくると僕は、理由が気になってきた。
「あのぉ……」
控え目気味にさっきの質問をした子がまた、手を挙げた。
「おっ、そこの君。どうぞ」
「何故……何故、自殺をするのですか?」
ピンポイントに、質問してくれた。ありがたい。
「良い質問だねぇ~」
彼女はこれを聞かれたがっていたのか。
「う~ん、と……じゃあ進路を考えるのがめんどくさい…って事にしておこっか。」
「「「は?」」」
「さぁ~て、これは嘘か真か。考えておいてなぁ~今日の宿題でぇす☆」
流石に、嘘だろう。彼女がんな事で……というかここでそこまで将来を見越している人はこの日本には少ないだろう。だって、日本人は白黒をつけるのが苦手で、結局グレーを貫く。白と黒は少数派だ。
「うん、もう言いたい事は言い終わったし、これで私の自己紹介を終わります!!さ、次の方~ドゾ」
そう言って、彼女は席についたがどう足掻いてもあと1人できるかどうかの時間しか残っていなかった。凄いね、もう。
「あ~さっきのような方の後で申し訳無いんですけど………」
彼の自己紹介はそう始まった。
まぁ、別に最初に爆弾を投下してきた彼女には興味はあったけれど、それ以外の人間には特に惹かれないだろう。それ程、彼女の爆弾の威力は高かったのだ。
「ねぇねぇ~」
さっきの彼女が後ろの席で、話し掛けていた。大方、隣の席の人に話し掛けているのだろう。
自分の出席番号は4番だから彼女は5番目という事だ。この学校1年生のクラスは2つに別れていて、各々5×6の席配分で構成されている。
「ねぇ~ねぇ~~ねぇ~~~」
彼女はまだ話し掛けている。
まぁ、そりゃ無視されるであろう。興味は湧くかも知れないが、会話したいかは別だろう。できれば関わりたく無い、というのが一般的な意見だと信じたい。
「ねぇってば!!ねぇ~えぇ~」
本格的に五月蝿くってきたぞ?
「おぉい!!君だよ!!こら!!前の席の子!!」
………どうやら僕が呼ばれていたらしい。確かに、左斜め後ろは誰も座っていなかったかもしれない。
さて、それは良いとしてどうしようか?僕は基本的に関わりたく無いと思っているが、ここで返事をしないともっと五月蝿くなりそうで嫌だ。というか、自分は元々返事する気無いのだが、ワハハ。さてと、どうするのが自分にとって最善か。
「っと、これで俺の自己紹介を終わります。」
「は~い、じゃ、今日はもう時間が無さそうなので、残りの人は明日に回しますねぇ~」
いつの間にやら、復活していた担任に驚きつつ、仏が糸を垂らしたと思った。一先ずは、大丈夫そうだからだ。
「えっと、じゃあ~出席番号1番の君、取り敢えず号令掛けてください。」
「えっ、あっはい。」
可哀想に。出席番号1番君。
「きりぃ~つ、れー、ちゃくせ~き。」
結構、癖のある号令を掛けた出席番号1番君。お疲れ様。
「んじゃ、気をつけて帰ってください。明日は学校について詳しく説明するんで、宜しくお願いねぇ~」
結構、軽い先生なんだな。うむ。
まぁ、そんな事を考えてないで帰りますか。
「おい!!そこの君!!」
さっきと同じく、自分が呼ばれた事が分かった。
「………?」
「その、キョトンって顔やめて……なんかグッとくる。あと、せめてなんか喋って?」
そんな事言ったってなぁ~僕は本当に必要な事しか喋らないからな。例えば、自己紹介とか。
「アッ、そういえば君読書好きなんだって?オススメの漫画ってある?」
そういえば自己紹介でそんな事言ったような気がする。一応、家ではPCやらゲーム機やらもあるが、1番時間を割いているのは読書だろう。
「……………」
「あの…頼むから……一言でも喋って?」
「彼にそんな事を頼んでも無駄だよ?」
聞き覚えのある声が聞こえた。
「…………」
「君は…?」
「あっ、そっか。私は椎良真帆。彼の……翻訳係かな?」
「いや、どゆこと?」
まぁ、そりゃそうだろう。普通は理解できる訳無いんだから。
「いやねぇ~彼、本当に必要最低限の事しか喋らないからさ。家族ともね。」
合ってるなぁ~凄いなぁ~真帆さんとは会話した事すら無いんだけどなぁ~
「まぁ、多少は分かったけどまた疑問は増えたから、質問していい?」
「うん、良いけど……ここで立ち話も邪魔だから喫茶店にでも行って話そっか。」
よし、どさくさに紛れて逃げよう。
「おっと、前の席の子~逃がしはしないからねぇ~」
「……………」
めんどくさい事になるのが確定してしまった。
「んじゃ、私が通ってる所にでも行こっか~」
「どんな所何だろなぁ~私、引っ越してきたばっかだから分からない事ばかりなんだよねぇ~」
「……………………」
やぁだなぁ~~家でずっと読書してたいのに……
「無茶苦茶嫌そうな顔してるね。初対面の私でも分かるよ。」
「ハハ、そういうところがあるから私以外に友達できないんだよぉ~いや、他にあるか。問題は。」
「………………」
痛いところを突かれた。いや、まぁ、確かに人とコミュニケーションを取らない僕に問題があるのだけれど。
「そんな事はさておき、行くよ~」
酷い、自分から始めたのにそんな事はさておきだなんて言われた、悲しい。
「いやぁ~本当に喫茶店だなんて久しぶりだなぁ~」
「………………」
「貴女も喫茶店とか好きなの?」
僕はいつも置いてけぼりだ。歩幅的にも、会話にも。まぁ~どちらも僕に原因があるのだが。まぁ、歩幅的にもって言うのは親の遺伝子と夜更かししてばっかの過去の自分を怨むべきだろう。
「う~ん、そうだね~週1程度は必ず通ってた。」
……ガールズトークというものは出会ってからの時間は関係ないのだろうか。男の僕には全くと言って良い程に理解できない。まぁ、そんな彼女等の話等は聞いてないで今の状況の整理でもしようか。
まず、初対面の彼女に話しかけられて僕が喋らないのにあたふたしているところに、自称僕の唯一の友達の志帆さんが来て、喫茶店に行く事になった……多分、恋愛小説とかなら僕か彼女のどちらか、或いはどちらも相手に惹かれていくってのが大体の展開だろう。それに自殺宣言だ。それでまだ生きたくなって、共に人生を歩んでいく……みたいなのがテンプレだろう……生憎ここは3次元。そんな展開にはならないのだ。
「あ、ここ、ここ~私の行きつけぇぇ!!」
「へぇ~ここが………」
「………………?」
あれっ、確か此処って………
「あ、お帰り~」
志帆さんによく似た女性が此方を見るなり、そう言った。
「ただいまぁ~」
やっぱりだ。此処は志帆さんの家だ。多分、前に両親が喫茶店をやりたいだとか言ってて何て返したら良いか分からないと愚痴ってた気がする。
「何?そういうコンセプト?」
「いや、ここ、私の家なの。」
「あ~だから週7以上で通ってるって言ってたのか、、」
なかなか洒落たギャグである。
「何~お友達~?できたの?初日に。」
「あ、そっか紹介するね~この子は……」
「音音音葉です。娘さん、なかなかに面白い子ですね!!好きになりそうですよ~」
「まぁ、そう言ってくれると嬉しいわぁ~この子昔は人見知りが凄くてねぇ~」
「ちょいちょいちょい、そこまで踏み込まないでよぉ~」
「え~なんかその話、興味ありますねぇ~」
「………………」
僕は、遂に空気になってしまった。悲しい。
「ってあ、忘れてた!!お母さん、窓側の席空いてる?」
「お客が居ない店にそんな事言わないでよぉ~そりゃ、空いてるわよ。」
「じゃ、座るねぇ~」
「いやぁ~楽しみだなぁ~」
彼女は素直に今の感情を言葉にする。今日、2つ目の学びだ。
「えっと、取り敢えず頼みたいもの頼んじゃおっか、」
「良いの?」
「良いよ、良いよ。なんせここの喫茶店経営者の娘だからね!」
そんな具合に、志帆さんは胸を張った。
「う~ん……じゃ、カフェラテにしよっかなぁ~」
「ん、オッケ~私はいつも通りココアと~雨下あめしたくんは紅茶で良いもんね。よし、お母さん~」
「はぁ~い?」
「カフェラテとココアと紅茶、1つずつ~」
「分かったわ~」
此処の紅茶は美味しいからな。必ず頼んでる。
「ん~じゃ、さっきも言った通り疑問をぶつけてくね。」
「かしこまりました~」
「………………」
僕も一応、頷いた。
「まま、流石に手持ちの情報が少な過ぎるからお互いに自己紹介しよっか、でも私はさっきしたばっかだし良いでしょ?」
「あぁ、それなんだけど……真実を言ってもらっても?」
「………全部、事実だよ。」
この2人は相手の言葉を自分の言葉に直すのが結構あるのかな?
「嘘だぁ~私、心理学の勉強してるけど貴女、ずっと腕組みながら顎を触ったり、唇を舐めたりしてたわよね?」
「………………」
志帆さんって心理学に興味があったのか、良いな。将来に関して貫き通せそうな事があって。まぁ、貫き通せるかは別だけどさ。
「はぁ~しゃ~ない、じゃ、嘘だった部分だけ修正するね。私は誕生日は不明。それで好きな食べ物は和菓子。趣味は漫画を読む事。死ぬ理由は……宿題だからね、駄目だよ。」
「……………」
成る程、だからオススメの漫画を聞いてきたのか。
「うん、嘘は無さそう。でも自殺する理由を言ってくれないのは悲しいかな。」
「だって、宿題だもん。駄目だよ。ほら、答えは写しちゃいけませんって言われるじゃん。」
「むむむ………」
まぁ、宿題と捉えれば妥当何だがな……多分、殆どの人は覚えていない……いやインパクトはすごかったし覚えてるかな。
「ほいほい~カフェラテとココアと紅茶でぇ~す~」
「ありがと~」
「ありがとうございまぁ~す、美味しそうですねぇ~!!」
「………………」
善し悪しをつけがたいタイミングで、志帆さんのお母さんがさっき頼んだものが届いた。
「さて、次は黙りの君だよ。私、さっき寝てたから君の自己紹介聞いてないんだよねぇ~」
「…………………」
嘘であろう。さっきオススメの漫画を聞いてきた理由は僕が自己紹介で読書が好きだからと言ったからだ。初対面でそれも自己紹介無しで分かるだなんてストーカー位しか居ないだろう。
「んじゃ、雨下くんの紹介は私がするよ。ま、あくまでも一心同体ではないからさ、間違えてる所はあるからも。」
前から言おうと思ってたんだが……雨下あました何だよな。名前。
「ねぇねぇ、初対面の私がごめんだけど……彼、無茶苦茶何か言いたげな顔してるよ?」
「………………」
「気のせいでしょ。」
「いや、多分そんな事は無いよ。んじゃ、取り敢えずメモあげるから何か言いたい事あるんだったらここに書いてよ。」
……志帆さんとの会話、最初っからこれで良かったんじゃないかな。そりゃ、たまにこういうのは思いついてはいたけど、大体志帆さんが僕の思ってる事を口に出してくれたから段々とそんな事は思いつかなくなっちゃったんだよな。まぁ、過去は過去だ。
取り敢えず、僕は「あめした」ではなく「あました」と読むと、書いた。まぁ~「あめした」ってのも慣れてきてたから良かったんだけどさ。
「だそうです。彼……いや雨下君は『あました』と読むそうです。」
「……何か、ごめんね、雨下くん。」
「…………………」
僕は一応、「気にしてない」みたいな表情をした。
「ありがと、」
伝わったようだ。まぁ、僕が思った言葉そっくりそのまま伝わったとは思わないが。
「今、何て言ったの?」
まぁ、それが普通なのだ。分かる志帆さんがおかしい。
「多分、気にしてない……だと思う。」
大正解、流石心理学に興味はあるだけ……いやそれだけじゃないか。天性の才能だろう。
「んじゃ、雨下くんの紹介しようと思ったんだけど……そろそろ店の手伝いあるからまた明日…という事で……。」
「あ、いや、それなんだけど~ちょっと提案があって、3人でメッセージアプリ使った方が早くない?」
「あっ……いや、まぁ、うん…そうだね。雨下くん、一応ネットだと結構喋るみたいだし。」
「…………………」
こういうところを言われるのが嫌だから志帆さんとは連絡先を交換していないのだ。というか、何故知ってる?とは思ったが同じゲームをプレイしていたんだな。そりゃ、知ってる。
「じゃ、連絡先交換しちゃおっか。」
「んだね~~」
「………………」
こうして、僕の唯一とも呼べる必要な事以外喋らないというアイデンティティーは彼女によって対策された。
「んじゃ、取り敢えず飲み物飲んじゃって?洗い物済ませたい。」
「自分勝手だね。」
「失礼だね。」
「ッッッ~………………」
不覚にも、笑ってしまった。全く、自分の笑いの沸点の低さには驚かされるよ。笑う要素も無いのに笑うのだから。
「「今、笑ったよね?」」
「ッ………ッッ………」
僕は、笑いを堪えながら首を横に振った。
「ん~もぉ~ほら、帰った帰った!!」
「じゃ、お手伝い終わったら連絡してねぇ~まだ私以外の自己紹介終わってないんだから~」
「…………………」
何故か、彼女の口から自己紹介をしろと促されているような気がして緊張してきた。先が思いやられる。まぁ、1度はできたのだ。志帆さんと彼女を意識した程度で揺るぐような人間では無いのだよ。
「はいは~い、分かりましたよ~だ。」
「バイバ~イ」
「ばいば~い」
「………………」
一応、控え目に頭を下げた。
「そういえば、雨下君って家どこなの?」
「…………………」
僕は真っ直ぐに、指を指した。
「そっか、じゃあ~ここでお別れだね。バイバ~イ」
と、彼女はそう言い、十字路で別れた。そして彼女は手を振ってくれた為、僕も控え目に振り返した。気づいてくれたかは別だ。
僕は初めて人との別れを惜しんだ。多分、ここまで僕に興味を持つ人間が今まで居なかったからだろう。いや、それは自意識過剰か。
まぁ~取り敢えず、やるべき事をやらなければ。

Re: 3年後に散る君。 ( No.1 )
日時: 2025/01/13 10:07
名前: きゅうりむし (ID: 7Qg9ad9R)

ん~、おはよう、世界。
あ~昨日何時に寝たっけか……3時か。そうすると……約3時間は寝られたなぁ~いつもよりは、多いか。
あ~あ、そういえばメッセージで自己紹介するだとか言ってたな……全くの音沙汰無しだけどさ。
おし、朝食食べて学校行くか……学校って何処だっけ?ま、いっか。
ん~っと、あぁ、今日も夜勤か。父親が出て行ってから、働き尽くしだなぁ~。ま、母親がシアワセなら良いんだよ。僕も、この位の距離感が1番良い。
ふぅ~~現在時刻、7時30分……まぁ、丁度良いんじゃないんですか。大体、8時15分迄には席に着いてれば、良いらしいからなぁ。
ん~~で、学校何処にあるんだっけ……参ったな……マップでも使うか。
「おっはよ~雨下君。迷ってると思って、迎えに来たゾ☆」
「…………………」
うん、触らぬ神に祟りなしだ。無視しよう。
ん?………何故、彼女が僕の方向音痴を?
「ちょっと~そんな俯かないでよ~流石の私も落ち込むゾ☆」
……彼女が…落ち込む事って…ありますかね?
「うぃっす、雨下くん。学校の位置分からなくて困ってる頃かと思って来たよ。」
「…………………」
怖い、物凄く怖い。可愛い人とか綺麗な人程、こういう、何で分かるの?的なのがあると、物凄く恐怖を感じる。
「あ、志帆ちゃんじゃん。どうしたの?」
「それは、此方の台詞だからね?音音こそ、何で此処に?」
あ~火花散ってる。何でだろ、昨日は仲良かった記憶が或んだけどなぁ~可笑しいなぁ~
「私は、普通に雨下君を迎えに。」
「じゃあ、私と同じだね。」
「………………」
この状況は、本当に……何なんだろな?
「じゃ、雨下くん、行こ?」
「雨下君、行こっか。」
「………………、?」
いや……うん、まぁ、志帆さんは何度か一緒に登校した事はあるからまぁまぁ……でも、彼女が来るのと、「行こ?」とか「行こっか。」って言う台詞と共に、手を差し出されるのは分からない。
ん~手を差し出され方が、完全に母親が小さい子に手を差し出す、差し出され方なのだ。
は?手を繋げと?
「そうだよ?手、繋いで?」
志帆さんは、当たり前のように心を読んでこう言ってくるし……
「ほ~ら~、雨下君が手を繋がないと学校に遅れちゃうよ~」
彼女は、訳の分からない理不尽な駄々っ子になってるし……
「…………………」
あ~~人によっちゃ、嬉しいかもだけど……僕には、地獄にしか思えない。
「志帆ちゃんさ、雨下君と手を繋ごうとしないでくれるかな?」
「それは、此方の台詞。音音は、雨下くんと手を繋ごうとしないで?」
「…………………」
あ~~もうっっ!!
「「!?」」
僕は、同時に2人の手を繋いだ。
「あっ、雨下くん……!?」
「はわぁぁぁぁ~~~」
志帆さんは、何故か驚き。彼女は、謎の言葉を発している……何て状況じゃ、こりゃ。
っと、そういえば、こんな事してたら、学校に間に合わないのでは?
「っあ、そうだね、雨下くん。早く行かないと遅刻しちゃうね、」
「……本当に、何で分かるの?」
「さぁ?私と、雨下くんは運命の真っ赤な糸で結ばれるんじゃない?」
真っ赤!?赤じゃなくて、真っ赤!?
「チッ………本当にこいつ…ふぅ~ん、そっか……そうだよねぇ~そんなに、仲良いもんねぇ~~………さっさと、行こっかぁ~~」
「………………」
本当に、一晩のうちに何があった?
「は~い、HR始めるよ~~……まぁ、委員会と部活動の説明かな。」
「ねぇ、正直、授業面倒でしょ?1限の前に抜け出そ?」と、後ろの席の彼女が唆してくるが、
「………………」
僕の答えは決まって、NO。首を横に振った。
「ちぇ、つまんないのぉ~~」
そう言って、静かになった。
よし、一旦状況を整理しよう。
結局、遅刻ギリギリに登校したものの無事(?)に、2人と登校し……いや、本音を言うといざこざはありにあった。
例えば……2人同時に手を繋いだお陰で、どっちも、どっちかが離せ…みたいな具合に、言い争いが起こった。結局は、2人とも譲らずどっちも繋いだままだったけれど……先生と他の人の視線が痛かった…2人とも、教室で席に着くまで手を離してくれなかった……。
他には、運動不足であまり歩く事になれていなかった僕が休憩しようと思った時に、怪しげな紅色の水を持って、差し出してきた彼女。此方も、灰色の水を持って、差し出してきた志帆さん……で、争っていた。どちらも、遠慮した。
にしても、何が目的で何があって、2人がああなったんだ?特に、2人が怪しげな水を差し出してきた時は殺されるかと思ったぞ……。
「っと、一通りはこんな感じかなぁ~今日の、LHRで何の委員会が良いか募るのと、部活動の希望提出の用紙も配るから、考えておいてねぇ~見学は、適当に。」
考え事をしている間に、担任の話が終わっていた。
それにしても、適当にって……結構、雑だな。担任。
「え~と、1限は昨日の自己紹介の続きだね。あと、1人毎に時間制限を儲ける事にします。」
あ、彼女で学習した。彼女の長時間の自己紹介は、無駄では無かった……。
「おし、どさくさに紛れてさっき話した通り、日直は出席番号順で2人1組でやってください。1限の前に、日誌渡しとくね。」
どうやら、日直についての説明もあったようだ。聞き取れたのは何人程度だろうか……
「んじゃ、出席番号1番の藍原さん。号令お願いします。」
あ、昨日と同じ人だ。藍原ってんだ、へぇー。偏見で、ちょっとチャラい感じだけど、優しそう。
「あ、はい。きりぃ~つ、」
この、少し癖のある声と同時に周りが立つ。
「れー、ちゃくせ~き。」
そして当然、また癖のある声と同時に周りが礼と、着席をする。
「はい、じゃ、休憩~」
ん~っと、10分間だったっけか?……まぁ、良いか。周りの空気読も。
さて、彼女は何してるんだろ………寝てる。
「……………」
生憎、声を出して起こすという選択肢を捨ててある僕には、揺すって起こすしか方法が思いつかない……いや、スマホで爆音鳴らすとかもあるけど、周りの視線が刺さる予感しかしない。
なので、無言で彼女の体を揺する。
「んっ、………んんぅ……」
あ、起きる気配ゼロ。
「雨下くん、どうしたの?」
後ろ……つまり、机の前から聞き慣れた声がした。
「………………」
無言で、彼女を指差す。
「ん、あ、成る程。音音が寝てるのか。私が、起こすね。」
?志帆さんは、彼女を起こせるのか。あれ、昨日初対面だよな?ん~やっぱ、昨晩何かあったのか?
そう思っていると、志帆さんが彼女に、耳打ちした。
「~~~~~~んに、~~~~~~~を、~~~~言うよ?」
耳の良さに、若干の自信のある僕でも、途切れ途切れにしか聞こえなかった。最後の「言うよ?」だけはハッキリと聞こえたが……誰に、何を言うんだ?
「うぇ?別に良いよ?逆に、全員に言いふらして?」
「あ、起きた。」
あ、起きた。
「え~っと、此処って何処だっけ?」
「学校だよ?大丈夫?」
「………………」
寝惚け過ぎでは?学校で寝てるの分からなくなるって、中々だぞ………
「あ~そっか、雨下君、おはよ。」
「………………………」
軽く、頭を下げた。
「いや、先に私……はぁ、もう良いや。ほら、前向いて、背筋伸ばして。」
「あ~、はいはい。志帆ちゃんは、私のお母さんか!!」
「フッ、そうだね。今日から、そうしてあげようか?」
「うっわ、志帆ちゃんの娘とか大変そう……」
「五月蝿いわ!!」
「…………………」
僕、また置いてけぼり……だが、昨日と同じような仲で安心した。
「ほら、先生来たよ?座りな、志帆お母さん?」
「チッ、覚えときな、音音?」
………気のせいだったかも。
「うぃ、日直のお2人さん、次に号令掛ける人決まったかな?ま、号令、お願いします。」
っと、授業の始まりか。
「きっ、きっ、起立!!」
今度は、あの癖のある声では無く、おろおろとした声だった。
「れ、礼!!」
見ると、黒縁円眼鏡を掛けた黒いショートの子だった。偏見で、本が好きそう。
「ちゃ、着席……」
日直の号令が恥ずかしいのは分かる。だから、頑張ったと思うよ、僕は。
にしても、黒縁眼鏡の子が号令を掛けた時に少し笑い声が聞こえた。女子生徒だったな。感じわりぃなぁ~おい。因みに、黒縁眼鏡ちゃんは可愛いと思った。ちょっと、前髪が眼鏡に入り込んでるから眼は見えないけど……可愛いと思った。別に、恋はしてないけどねっっ!!
「ねぇねぇ、雨下君。」
良く分からない人の自己紹介を、頭に入れないように考え事をしていると、後ろの席の彼女が話し掛けてきた。
「…………………?」
僕は、コミュニケーションは捨てたので後ろを向くと、
「これ、あげる。見れたら、見て。」
そう言われて、兎?のイラストが描いてあるピンク色のメモを渡された。
そこには、"昼食、一緒に食べましょや。調理室に居るから、1人で来てね?"………え?今からお昼の話を?
そう思い、後ろを向くと……笑った。いや、微笑みかけてくれた。それも、美少女らしく。
くっ、くそ、この少女に、メモに"もうお昼の話を?"だなんて、デリカシーの欠片も無いような言葉を掛けられない!!
「ねぇ、雨下君。」
と、また、小さい声で話し掛けられたので、振り向いた。
「そ、その、さっきのメモに書いてあった事の、アンサーって……?」
彼女は、いつもと違う雰囲気がした。ん~何が、違うんだ?
あれ、というかいつも?僕と彼女は、昨日が初対面のはず……なのに、いつも?
まぁ、考えても仕方が無い。
「……………」
僕は、首を縦に振った。調理室で一緒に昼食を摂るのを、OKのだ。
「やった、ありがとね。雨下君。」
彼女は、そう言い自己紹介に集中……したと思う。
あ~あぁ~後、約40分……まだ10分しか経ってねぇのかよ………
もういいッッッ!!寝るッッッ!!
「………吾輩の一番好きな言葉は、相対性理論也。」
なんちゅう、自己紹介じゃ!?うえっ?眠気覚めたわ!!待て、好きな定理や理論が相対性理論じゃなくて、好きな言葉が相対性理論?……他のヤツの方が良いと思う。ワンチャン、舐められるし。あ、フェルマーの最終定理でも舐められる。だから、例えば~ゲーデルの不完全性定理とか、シュレーディンガー方程式とか?……まぁ、後者は方程式だが。
いや、待て、もっと触れるべきは、喋り方だな!?一人称吾輩の、語尾也!?
あっ、もう、逆に眠気が………?
後………で、相対性…理論………の、お復習…し、よ……
「……くん?雨下く~ん?」
「………………?」
「あ、起きた。号令掛けられて、立たないと思ってたら、寝てたね。」
んっ、あっ?此処、何…処……だ?あ、学校か。いや、今、何時だ?
「あ、今?1限と2限の休憩時間だね。だから……9時50分台かな?」
相変わらず、心読み……覚かな?
「にしても、2人共、寝ちゃ駄目でしょう?」
2人……?あっ、察した。後ろを振り向いてみると、案の定、彼女が寝てた。
「ま、良いけどさ。そう言えば、私の自己紹介、聞いてた?」
「……………」
んっ、……あ、……………どうする?
「その様子だと……聞いてないね。んじゃ、いつものカラオケで待ってるよ。」
くっ、やっちまった……また、カラオケでしばき回される…………。
前のお復習をしよう……前は、何か、焦らされた。意識飛んで、気づいたら、目茶苦茶分厚い契約書にサインしてて、志帆さんのセフレになってた。どゆこと?ついでに、手錠されてて下半身が裸だったのも、思い出した。
いや、過去にもあったよ?前回含め、3回。でも、1番キツかったのは、前回。僕だって、育ち盛りだ。人間の三大欲求が成長してるのは当然だ。カラオケの個室って防音だから、ある程度声出しても大丈夫なお陰で、ああなった。でも、焦らしはキツいよ?
下半身裸で、手錠されてて、それを女子中学生に見られる……生き殺し過ぎた。あそこから、自慰行為の制限やらをされる……そんな僕も、元気な高校生になったのだが………歴史は繰り返されるものなんだね。
にしても、何故、志帆さんはこんな事を?
1回目は、2年生の自己紹介。今回と同じ様な感じ。2回目も、1回目と同じ。3年生の自己紹介。3回目……は、委員会…だったかな。他の女子と親しげだったという理由で……仏の顔も三度までだったのかな?焦らされた後に、搾りに、搾られた。それで、自慰行為等の制限……ふっ、今回も同じ様な感じかなぁ…(泣)
でも、訳が分からないんだよなぁ~こんな事をする訳が。ん~やはり、女子の心境は理論的に証明できないから、嫌だ。いや、まぁ、人は大体そうだけどさ。この世の人間が、トマスの公理……つまり、予言の自己成就に当てはまれば容易いのに。でも、狂人は幾らでも存在するから、全員には当てはまらない……いや、あれって、社会の流れについてだったっけか?……少々、話がズレちゃったなぁ……
「は~い、2限始めるよ。」
っと、時間がきた……はぁ~面倒。
彼女の提案に乗れば良かったなぁ~~
「日直、号令お願いします。」
ん……寝よ。おやすみ。
「雨下くん?また、寝たの?」
「…………?」
あ………はっ、はは。2限、何したんだろ?
「笑って無いの。あ、2限?数学の復習。」
相変わらず………って、さっきも思ったか。
「私は、覚じゃないからね?」
あ~~……先読まれしてらぁ!?しかも、思おうとした事を!?
「相変わらず、慌てっぷりは健在だね。さて、次は……物理の復習…物理の復習!?」
「…………………」
あ~、理科の復習って言わないんだ。物理の復習……物理の復習!?
いくら、理系高校とは言えど、物理の復習!?……多分、物理基礎だよな?あっ、受け入れよ。
「うん、そだね、考えてもしょうがないね。」
此方も、受け入れよ。
「はぁ~っあ、雨下くんはコミュニケーション能力を捨てた代わりに記憶力が良くて良いなぁ~……小心者に思える場面も多々あるけどさ。」
……っく、痛い。心が、ズタズタ…
「メンタル弱ッッwww」
やっばい、いつものカラオケ行けるかに関係あるかは分からないけど、Sに拍車掛かってるなぁ……メンタルボッロボロになりそ……
「さて、私は、音音起こして、席に帰るね。」
うん、助かったぁぁ……
「『助かったぁぁ……』じゃないの。今日は、逃がさないからねぇ~……じゃ。」
あ、オワタ……
「はぁ~い、私、賀川ともうします。3限、始めましょか。」
知らんじっちゃんが来た。担任は物理は、専門外なのか。
「きっ、起立。れ、礼。ちゃ、着席。」
お~出席番号2番ちゃん。落ち着いたな。すげ。
ま、寝るか。おやすみ……
あ、思い出したくない事、思い出した。昨日、志帆さんは、「ネットだと喋る~」とか言ってたが……あれ、掲示板に志帆さんの事を書き込んだのを根に持たれてるのかなぁ……?
ま、良い。昼食とカラオケさえ覚えてれば、今日は良いだろう。
おやすみ、賀川。
「ちょいちょい、雨下君。先生に居眠りを指摘されてるよ?」
ん?後ろから声……が…
「え~っと、其所の背が小さい、全身黒の男子生徒君。これで、2回目だぞ?居眠りは、止しなさい。」
「…………………」
あ、成る程。彼女が、僕の居眠りを賀川のじっちゃんが指摘してるのを教えてくれたのか。
「おい、自分だと分かっているのだろう?無視はやめ……」
「あの……」
僕が喋らない事を咎めようとする賀川のじっちゃんを横目に、志帆さんが手を挙げたのを確認した。
「何だね?志帆君。」
え、キモ。女子生徒の名前は覚えてんのか。
「彼、基本喋らないので、無視している訳では無いのを分かってください。」
「いや、そう言われてもねぇ……」
「………………」
最悪、このまま言われ続けるなら、喋るが……
「ほら、彼も反省している様子なので……お願いします。」
「……………?……」
志帆さんが、頭を、下げた?
「ま、まぁ、そこまで言われるのなら、仕方がない。今回は、大目に見よう。但し、2度とこの様な事が無いように。」
そう言い、賀川のじっちゃんは授業を続行した。
「…………………」
僕は、一つの疑問を抱えながら、志帆さんに向かって頭を下げた。
志帆さんは口パクで、『後で、何かして』と、言われた。
………はぁ、それは良かろう。だが、何故、志帆さんは僕の為に頭を下げた?僕に、何かをしてもらう為か?
「雨下君、良かったね。志帆ちゃんに助けて貰えて。」
後ろの席の人にそう言われた。若干、怒りが籠ってないか?
「にしても、志帆ちゃんに何て、言われたの?」
「………………」
は、?口パクの事か?彼女は、僕と志帆さんの一連の流れを見ていたという事か?
「まぁ、良いか。後で、問い質す事にするよ。」
「…………」
うぅ、怖い。問い質すって、他にも聞く事あるのかな?う、うぅ………
まぁ、良い。賀川のじっちゃんの話を聞いてる"風"にしとこ。
「此処が、こうだから、こうなりいてぇ~」
雑だけど、読み上げ方が癖になる(?)
あれ、そういえば、賀川のじっちゃんは僕の居眠りを指摘したけど、担任はしなかったのか?
………真相は、クラスメイトと担任と神のみが知っている。
そう思い、意識は遠ざかった。


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