複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

狭間に生きる僕ら ~いのち(1)~
日時: 2025/06/21 20:54
名前: 花火 (ID: vCVXFNgF)

峻兄ちゃんはりこちゃんと圭吾を見て、少し首をかしげた。
「友達の……弟と妹?」
私は一瞬、何て答えたらいいか迷ったけれど、蓮くんが横から「うん、そんな感じ」と自然に言ってくれた。
峻兄ちゃんの目がほんの一瞬だけ、私の目をのぞき込んで、何も言わずに「ああ、そうなんだ」とうなずいた。

「今日さ」
峻兄ちゃんがカバンを肩にかけ直す。峻兄ちゃんがカバンに付けた鈴の音がチリチリンと風鈴みたいな音を立てた。
「母さんと父さん、二人とも出張でいないんだ。あと3日間は帰ってこない」
りこちゃんが蓮くんの方を見て、あの人だあれ、と尋ねながらブランコから腰を下ろした。手は鎖を握ったままだった。
「連れて来いよ」
峻お兄ちゃんがくるりと体の向きを変えて、家の方へ歩き出した。
「母さん、俺今日、友達ん家に泊まるわ」
蓮くんがスマホを耳に当てている。蓮くんのお母さんの声がかすかに聞こえてくる。
「大丈夫だってさ」
蓮くんはりこちゃんの手を引く。私は尻もちを付いたままの圭吾くんを立たせる。
「私の家においで。」
圭吾くんが私の手を握り返してくれた。

峻兄ちゃんが家の鍵を探してカバンの中をあさっている。チャラチャラと鍵の音がカバンの中から聞こえてくる。ようやく見つけた鍵で峻兄ちゃんが扉を開けると、私の家の香りがした。峻兄ちゃんが渡り廊下の電気を付けた。圭吾くんとりこちゃんがそれに照らされる。
「うわ、光った!」
圭吾くんとりこちゃんが声を揃えて電気の方を見ている。それは、初めて流れ星を見た子供たちのようだった。
「あんまり見んとき」
蓮くんが圭吾くんとりこちゃんの眼を手で覆った。峻兄ちゃんが階段を上っていく。
「おいで」
峻兄ちゃんの後を二人の子供達がパタパタと足音を立ててついていった。峻兄ちゃんの背中は、蓮くんの背中より一回りだけ大きい気がした。峻兄ちゃんが自室のドアを開ける。私が峻兄ちゃんの部屋に入るのは、天体図鑑を借りに行ったとき以来だ。
「佳奈美も入れよ」
私は峻兄ちゃんに促されて部屋に入った。峻兄ちゃんの部屋には、私が覚えてるよりも多くの本が床の上に山積みになっていた。「都市伝説」「空間のねじれ」「パラレルワールド」「宇宙人」。そういった言葉が本の背表紙に見えた。

聞いてくれるかもしれない。峻兄ちゃんなら。

峻兄ちゃんはカバンをベッドの上にどさりと乗せると、床に山積みになった本を部屋の隅にどかし始めた。蓮くんがそれを手伝う。
「佳奈美お姉さん、この人だあれ?」
「私のお兄ちゃん」
「ふうん」
りこちゃんが圭吾くんを見た。圭吾くんはそれに気づかずに、部屋の隅々を観察するように顔を動かしていた。りこちゃんが私のズボンを指で軽く突いた。私がしゃがむと、りこちゃんは小さな手を丸めて私にだけ聞こえるように言った。

「圭吾くんみたいだね」

「お兄さん、これ、どうしますか」
蓮くんが5,6冊の本を腕に抱えている。例の本。
「ああ」
峻兄ちゃんが背表紙を目でなぞるように見た。
「その辺に置いといて」
蓮くんは、やっぱりなというようにそれらを峻兄ちゃんのベッドの傍に置いた。

峻兄ちゃんの左目が一瞬ピクピクと痙攣するように動いた。それは、峻兄ちゃんが何か伝えたいことがあるというメッセージだ。私は峻兄ちゃんに近づいた。

「この子らのご両親は」

それは、蓮くんと私が最も聞かれたくないことだった。数学の問題集が峻兄ちゃんのカバンから顔を出している。峻兄ちゃんの質問に「解なし」と答えられるわけがなかった。
「それについてもちゃんと、話すから」
峻兄ちゃんは何も言わないで黙って頷いてくれた。

「俺ね」
峻兄ちゃんが床にどっこいしょと腰を下ろした。
「あ、佳奈美、あれ持ってきてあげて」
何のことか一瞬分からなかったけれど、すぐに思い出した。パパが、私たちに買ってくれた子供用の座布団があったはずだ。私は峻兄ちゃんの部屋の隣にある物置に探しに行った。あ、あった。もう使わないと思っていたものを再び手に取るとは。

私は峻兄ちゃんの部屋に戻って、圭吾くんとりこちゃんの足元に置いた。
「これに座りな」
りこちゃんはちょこんと足を揃えてその上に正座した。圭吾くんは胡坐だった。峻兄ちゃんがギョッとした顔で圭吾くんから顔を背けた。しまった。スカートの中が。
「圭吾くん」
私は峻兄ちゃんの部屋の引き出しから新しいタオルを出して圭吾くんの膝に掛けた。峻兄ちゃんはもう一度正面を向いた。
「座んなよ」「あ、はい」
私は圭吾くんの、蓮くんはりこちゃんの隣に腰を下ろした。夕焼けの光が峻兄ちゃんの部屋の中に差し込んで、ゆらゆらと魚みたいに泳いでいた。

「俺ね」

世界って一つじゃないと思うんだ


峻兄ちゃんの言葉に反応するように、カーテンがふわりと膨らんでゆっくりとしぼんでいった。

峻兄ちゃんがリモコンで部屋の電気を付けると、部屋を泳いでいた夕日の魚たちはどこかに行ってしまった。
「佳奈美は知ってると思うけど、俺宇宙人と遊んでみたかったんだ」
峻兄ちゃんが、蓮くんが置いた本の山から本を一冊、ジェンガを抜くようにして抜いた。トサッと上の本が落ちる音がする。
「この本を見て、どうしても会ってみたいと思ったんだ」
峻兄ちゃんは取り出した本を私たちの方に向けてパラパラと捲りだした。身体が銀色のもの。目が異様に大きくて黒いもの。目が赤いものもいれば、光っているものもいる。峻兄ちゃんが私たちに見せてくれたほとんどは目撃情報に基づく想像図だったけれど、中には本物の写真らしきものも含まれていた。

「あ、楓だ」

峻兄ちゃんがあるページを開いたとき、圭吾くんがページの上に覆いかぶさるようにして床に両手を付いた。峻兄ちゃんはのけぞって、そのまま後ろに手を付いた。圭吾くんが見ているページの文字が見えにくい。カタカナが見える。

ヒューメイリアン。

「圭吾くん、私たちにも見せて」
圭吾くんが、ページがめくれてしまわないように手で押さえながら私たちのところへ持ってきた。四人でそのページをのぞき込む。楓くんの写真は載っていなかったけれど、実際のヒューメイリアンだと告白した人たちのインタビュー記事がコラムになっていた。国籍も、年齢もバラバラ。でも、彼らの眼だけは宇宙みたいにどこまでも広がっていそうな深い黒色をしていた。

「連れてくればよかったね」
りこちゃんが寂しそうにつぶやいた。
「お兄さん」
蓮くんがページから顔を上げて峻兄ちゃんに顔を向けて姿勢を正した。
「お兄さんの感覚は、間違ってません。ただ、興味本位で語るだけではあまりにも…。」
蓮くんが言いにくそうにうつむく。蓮くんが何を言いたいのか、理由は分からないけれどわかった気がした。
「あまりにも、その人たちのことに関心を抱いてないよ」
峻兄ちゃんは、圭吾くんとりこちゃんの隙間から本を見ている。
「どういうことや」
私も峻兄ちゃんに向き直った。
「私たち、宇宙人の血を引いた子供に会った」「どこでや」
峻兄ちゃんの顔が本から私に向けられた。
「その子は、私達人間が勝手な好奇心で語っていいような存在じゃない」
峻兄ちゃんは、黙ったまま数回蓮くんと私を交互に見た。すると、峻兄ちゃんは意を決したように顔の動きを止めた。

「あんたら、どこに行ってきた。この子らは、どこからやってきた」

無我夢中で本をのぞき込んでいた二人が、その言葉に峻兄ちゃんの方を振り向く。どこか遠くで犬が喧嘩して飼い主たちのなだめる声が部屋まで聞こえてきた。

圭吾くんとりこちゃんが、ページに両手を付いたまま顔だけをお兄ちゃんの方へ向けていた。
「峻兄ちゃん、だから…」「僕たちがどこにいたのか知りたいんですか」
圭吾くんが私の言葉を遮る。峻兄ちゃんが圭吾くんの眼を観察するようにじっと見つめる。
「別に追い出したいわけじゃない。一応、見知らぬ子供を家に上げてしまった責任があるからな」
峻兄ちゃんが、ベッドに置かれた残りの本の山をどさりと自分の前に置いた。そして一冊ずつ丁寧に私たちの前に並べた。
「ただ、あんたらが、俺たちの知らない世界からやってきたみたいな気がして」
「パラレルワールド」「時空のねじれ」「タイムスリップ」
そう言った言葉が一つずつ私たちの前に姿を現す。
「お前らもだ。蓮、佳奈美」
峻兄ちゃんは本の表紙に目を向けたままだ。
「僕たちがいたのは…」
圭吾くんが立ち上がって、本棚のあたりをうろうろし始めた。数学。化学。英語。峻兄ちゃんが学校で使っている参考書やテキストの中から、圭吾くんは一冊を手に取った。それは、歴史の資料集だった。圭吾くんが分厚い資料集を破れないように丁寧に、捲っていった。りこちゃんが圭吾くんの背中におぶさるようにしてのぞき込む。
「あ」
圭吾くんとりこちゃんの声が、あるページを開けた時に重なった。圭吾くんがそのページを開けたまま、峻兄ちゃんに見せに行った。圭吾くんはまたしても胡坐をかく。私が掛けてあげたタオルはいつの間にか蓮くんの横に落ちていた。蓮くんがそのタオルを峻兄ちゃんに向かって投げた。峻兄ちゃんがそれをキャッチして、スカートを見ないように圭吾くんの膝にかけた。
「僕たち、こういうところにいました」
圭吾くんが見せていたのは、今から百年前に私たちの国が戦争に負けて敵国に爆撃された後の街中の写真だった。もちろんその当時はカラー写真を取れる技術がなかったものの、余計にその写真はまさに圭吾くんたちがいた場所、私たちが行ってきた場所にそっくりだった。
「へえ…」
峻兄ちゃん意外にも驚くような素振りは見せなかった。
「生きていない世界の住人だったのか」
圭吾くんがその写真に視線を落としたまま黙って首を縦に振った。

「君たちは兄弟?」
峻兄ちゃんが圭吾くんとりこちゃんを交互に見る。
「ううん、ほんとはちがう」
りこちゃんが峻兄ちゃんの胡坐をかいている膝の上にちょこんと腰を下ろした。峻兄ちゃんは驚いたようだけど、すぐに太くて長い腕でりこちゃんを包んだ。
「りこはね、時間と色がない世界にいて。圭吾くんはね、ドラゴンがいた世界にいたんだよ、りこ見たもん、青いドラゴンが空にこーやって」
りこちゃんが峻兄ちゃんの膝の上で腕を大きく広げて見せた。峻兄ちゃんはしばらく黙っていた。圭吾くんの呼吸する音が聞こえる。

峻兄ちゃんは突然、私たちの前に置いていた例の本5,6冊を雑に部屋の隅にやってしまった。
「峻お兄ちゃん?」
思わず峻兄ちゃんの腕を掴む。
「こんなのは、ただの人間の想像の世界でしかない。」
峻兄ちゃんの部屋で飼われている魚たちがチョロチョロと水槽を泳いでいる。
「魚は水の中でしか生きられない。俺たち人間は水の中には住んでいない。」
峻兄ちゃんが水槽の蓋を開けて餌をパラパラと巻く。魚たちが我先にとそれに集まる。
「こいつらだって、まさか人間も水が無ければ生きていくことが出来ないなんて思わないだろうな」

グギュギュギュ

みんなが一斉に蓮くんを見た。
「すんません、お腹が空いてしまって」
峻兄ちゃんがスマホをカバンから取り出す。
「ああ、もうこんな時間か」
峻兄ちゃんが優しくりこちゃんを下ろして立ち上がった。圭吾くんは、まだ熱心に写真に見入っている。峻兄ちゃんが圭吾くんの肩を指で軽く突いた。圭吾くんが顔を上げて峻兄ちゃんを見る。
「お前、この世界の食べ物、食べたことあるか」
「ないです」
「よしきた」
峻兄ちゃんがスマホと財布をポケットの中に突っ込んだ。
「佳奈美、今日は寿司や。ええか」
そう言えばお寿司って色んな色があるな。マグロは赤い。サーモンはオレンジで。この子たちに、もっと色んな色を見せてあげたい。
「いいっすね、お兄さん」
蓮くんとの初めての夜ご飯に少し胸が高鳴った。

みんなで家を出た。峻兄ちゃんが最後に家の電気を消して鍵を閉めた。
「お兄さん、俺ちょっと自転車とってきますわ」
蓮くんがそう言って私に少し下手なウィンクをして、家の方に向かって走り出した。蓮くんの足音が静かな住宅街にタッタッタッと静かに響く。峻兄ちゃんも庭の納屋から自分の自転車をいつの間にか出してきていた。
「佳奈美、お前も用意せい」
圭吾くんがりこちゃんが暗い中、一生懸命お兄ちゃんの自転車を観察している。

住宅街を抜けて、レストランが並ぶ道に出た。イタリアン。中華。和食。ファストフード店。様々に彩られた看板が私たちの横を通り過ぎていく。蓮くんの後ろには圭吾くんが、峻兄ちゃんの後ろにはりこちゃんが乗っていて、二人ともせわしなく頭をキョロキョロさせている。
「佳奈美お姉さん」
圭吾くんが蓮くんの後ろから叫んだ。
「お姉さんたちがいる世界って、だんだん色が変わっていくんだね。青かったと思ったら、赤くなっちゃたし、今は黒いよ」
派手な色をしたスポーツカーが何台か私たちの横の車道を駆け抜けていった。
「きれー」
りこちゃんが峻兄ちゃんの背中にしがみつきながら叫んだ。

がちゃがちゃん。

三台の自転車が回転ずしの店の駐輪場に止まった。
「面白いもんみせてやる」
峻兄ちゃんはそう言って圭吾くんを右手に、りこちゃんを左手に繫いで店の中に入った。蓮くんと私もついていく。

入店したとたん、色んな音が私たちを包んだ。赤ちゃんの泣き声、幼児の笑い声、お母さんやお父さんがしつけているような声、老夫婦の会話、酔っぱらったおじさんたち。圭吾くんとりこちゃんが耳を塞ぐ。「面白いね」りこちゃんが耳を手で塞いだまま、満面の笑みで私に振り返った。

席に着くと、色とりどりのお寿司が私たちの横を通っていく。りこちゃんと圭吾くんがレーンに身を乗り出そうとしたから、蓮くんと私で慌てて止める。峻兄ちゃんがタッチパネルで、マグロとサーモンとマヨコーンとうどんを注文した。注文の送信音がピロン、と人々の話声に負けじと響いた。峻兄ちゃんがタッチパネルを私に寄越した。蓮くんと私の間に圭吾くんとりこちゃんがそわそわしながら座っている。
「みんな、何食べる?」
「お姉さんたちと一緒のが良い」
りこちゃんが身体を弾ませる。
「圭吾くんもそれでいい?」
圭吾くんはレーンのお寿司を目で追いながら黙って頷いた。

5分くらいたって、全員分のお寿司が届いた。峻兄ちゃんのが一番先に届いたけれど峻兄ちゃんはうどんが冷めるのも構わず、食べずに待っていてくれた。
「うわあ」
圭吾くんとりこちゃんが目を輝かせながら自分の前に置かれたお寿司をまじまじと見た。
「これはどうやって出来たの」
圭吾くんが蓮くんに尋ねる。
「魚を捕って食べるんだよ」
蓮くんがスマホでマグロやサーモンの画像を見せながら答える。
「この魚っていうのはどこに行っちゃたの?」
圭吾くんの質問に蓮くんが言葉を詰まらせる。
「殺して食べるんだよ」
峻兄ちゃんがうどんをズズっとすすりながら答える。圭吾くんとりこちゃんの顔から笑顔が消えていく。
「お前たちはさっき俺に、宇宙人は勝手に人間が好奇心を持って語ってはいけない存在だって言ったな」
峻兄ちゃんが他のお客さんたちに聞こえないように小声で話す。
「ここだってそうだ。簡単に興味を持って来ちゃいけない。怖い所だから」
峻兄ちゃんの言葉に笑顔を失ったまま、圭吾くんは目の前のお寿司を手でつかんでまじまじと見つめた。
「食べたくない」
りこちゃんの眼に涙が浮かんでいる。
「食べちゃったらかわいそう」
峻兄ちゃんがマグロを口の中に入れた。
「命っていうのはな、食べて初めて生きた証を与えることが出来るんだ。食べなかったら、死んでただ捨てられるだけだ」
圭吾くんがしばらくマグロを見つめていたかと思うと、意を決したようにそれを口の中に入れた。「おいしい」
峻兄ちゃんが今度はサーモンを口に入れた。
「それが食べるっていうことや」
りこちゃんも圭吾くんの真似をして、ネタの部分だけを口に入れた。
「ほんとだ。おいしい」
蓮くんがりこちゃんの横でラーメンをすする音が聞こえた。

「お腹いっぱーい」
圭吾くんがお腹をさすりながら、のけぞるようにして座っていた。峻兄ちゃんが皿を数える。
「こんなもんか」「足りる?」「おう」
峻兄ちゃんが千円札と百円玉を何枚か手に握ってレジに向かった。
「美味しかった」
りこちゃんが会計をしている峻兄ちゃんの後ろから話しかける。
「そうか、そりゃ魚も喜んでるわ」

家に帰ったころには、りこちゃんがうとうとし始めた。蓮くんがりこちゃんを背中に背負って私の部屋の前まで行った。でもドアの前で立ち止まった。
「…入っていい…?」「…いいよ…」
私たちはりこちゃんが起きないようにそっとドアを開けてベッドに寝かせた。
「お前はどこで寝る?」「床にでも寝るしかないかな」
「あかん」
峻兄ちゃんが割って入ってきた。
「女は身体を冷やすなって母さんからも言われてるやろ。佳奈美はソファや」
峻兄ちゃんが自分の掛布団を私に放り投げた。思ったよりも軽かった。
「蓮、俺ら男はここで雑魚寝や」
そう言って峻兄ちゃんは自分の部屋に蓮くんを連れて行った。
「圭吾」
峻兄ちゃんが部屋の中から圭吾くんを呼んだ。
「お前はどっちがいい」
圭吾くんはなかなか答えられずにいた。峻兄ちゃんの部屋の鏡に映る自分の姿を見ている。
「お兄さんたちと寝る」「そうか」
峻兄ちゃんは圭吾くんの手を引いて自分の部屋に招き入れた。
「佳奈美、心配すんな」
そう言って峻兄ちゃんはドアを閉めた。





小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。