複雑・ファジー小説

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赫血の館#2
日時: 2025/09/03 17:09
名前: will (ID: gobBUkxM)

第6章:脱出と新たな恐怖

陽翔の意識が徐々に戻り、葵の心に小さな希望が灯った。しかし、安心する間もなく、地下室の壁が震えはじめた。

「早く出なきゃ……」

葵は陽翔の体を支えながら、懐中電灯の光を頼りに出口を探す。だが、館は生き物のように歪み、扉は容易には開かなかった。

突然、壁のひび割れから赤い霧が噴き出し、薄暗い地下室に重い不気味な空気が漂う。

「赫血様の呪いが解けたわけじゃない…」

廊下を進む葵と陽翔の前に、千早美鈴が現れた。彼女は無表情で何かを呟く。

「約束はまだ終わっていない……」

美鈴の手には、古びた巻物が握られていた。その巻物には、この呪いを解く鍵が隠されているらしい。

「館の秘密を知りたければ、一緒に来て」

葵は陽翔を抱えながら、美鈴について行くことを決めた。

館の深部へ向かう道はさらに暗く、恐怖が増していく。だが、脱出のためには呪いの真相を知り、約束を果たさなければならない。
陽翔の細い身体を抱えながら、葵は千早美鈴の後ろをついていく。館の空気は重く、湿気が肌にまとわりつく。足元の木の床は軋み、不気味な低いうなり声が遠くから聞こえてきた。

「ま、まさか、これが脱出の道…じゃないよね?」葵は小声でつぶやき、思わず顔をしかめた。

美鈴は振り返りもせず、冷静に答えた。

「この館は迷わせるために生きている。逃げ出すには、怖くても前に進むしかない」

葵は肩をすくめて、内心で「こわいよ〜」と呟いた。彼女は典型的な「怖がりだけど前に進む」タイプ。とても強いとは言えない。

だが、そんな葵の背後から、鋭い視線が飛んできた。

「ふん、そんな怖がってちゃ話にならないよ。あたしがついてるから、安心しな」

振り返ると、そこには不敵な笑みを浮かべる千早美鈴が立っていた。彼女は赫血の痕を持つ能力者で、その冷静さと強さは葵の不安を一瞬でかき消した。

「いや、むしろ私がいるからこそ、葵は生きてるんだよね」と陽翔が苦笑しながら言う。

葵は少しだけ笑いながらも、

「ま、まあね…私だってたまには役に立つんだから!」

と言ってみるが、その声はまだまだ自信なさげだった。

懐中電灯の光が赤い霧を照らし、壁のひび割れから冷たい風が吹き込む。陽翔の体は冷たく、葵は慌てて肩を抱き寄せた。

「陽翔、大丈夫? まだ生きてる?」と葵が尋ねると、陽翔はかすかに指を動かした。

「…おいおい、やっと生き返ったか。ほら、葵、泣くなって」と美鈴がちょっとだけ皮肉っぽく言った。

葵は思わず吹き出しそうになるのを必死で我慢した。

歩みを進めると、倒れた家具の間から赤い光が漏れていた。そこに落ちていたのは、血のシミのついた古びた日記。

ページをめくると、赫血の契約の悲しい歴史が書かれている。

葵は眉をひそめながら、

「うう、難しい字がいっぱい…でも、何となく怖いことは分かる…」

と言うと、美鈴は目を細め、

「その怖さの中に、真実があるのよ。怖がっているだけじゃ何も変わらない」

「そうだよ、葵。怖がってばかりじゃ、あの館だって逃げられないさ」と陽翔がからかう。

葵は顔を赤らめながら、

「もう! からかわないでよ!」

と言いつつも、二人の存在に心強さを感じていた。

やがて、大きな鉄の扉が姿を現した。赫血の紋章が血のように赤く光り、扉の向こうからは館の呪いの核心が待ち構えている気配がした。

葵は震える手で扉に触れ、

「こんな怖いところ、私が行ってもいいのかな…」とつぶやいた。

美鈴はにっこり笑い、

「心配いらないわ。あなたは弱いかもしれないけど、あたしたちがいる。だから大丈夫」

陽翔も力強くうなずき、

「さあ、葵。ここからが本当の戦いだ。頼むぜ!」

葵は深呼吸して、二人の背中を見つめた。

「うん…怖いけど、私がみんなを守らなきゃ。よし、行くよ!」

弱くてビビリな葵と、強くて頼もしい仲間たち。
このバランスが、これからの壮大な戦いの始まりを告げていた——
赤く染まった広間の中央に赫血様が静かに立っていた。彼の冷たい赤い瞳が葵たちをじっと見据える。

「よくここまで来たな。しかし、これ以上は許さぬ」赫血様の声は冷酷で重く、館全体に響き渡った。

葵は震える手で陽翔の腕を掴んだ。

「ねえ、どうしよう…戦うなんて無理だよ、私たち…」

美鈴が冷静に周囲を見渡し、低い声で言った。

「戦う余裕はない。逃げるしかないわ。足を止めたら終わりよ」
しかし,,,,,

仲間が次々と倒れてゆく館の薄暗い廊下。
葵は震えながらも、ひとり立ち尽くす。絶望が押し寄せ、身体の芯まで冷えていくようだった。

赫血様の重い足音が近づき、冷たい視線が葵を捕らえる。
「終わりだ」――その言葉が凍りついた世界に響いた。

その時、胸の奥で何かがざわめき始めた。言葉にならない感覚が全身を駆け巡り、まるで暗闇の中で静かに燃える灯火のように、少しずつ熱を帯びていく。

手先に微かな震えが走り、視界が鋭く冴えていく。恐怖や悲しみは薄れ、代わりにどこか力強い確信が芽生えた。

葵はふっと息を吐き、力なく笑みを浮かべる。
「まだ、終わりじゃない」

赫血様の斧が振り下ろされる瞬間、葵は動いた。
直感のままに、避け、反撃の一撃を放つ。
それはまるで彼女自身の意思以上のものが動いたかのように、赫血様を一撃で打ち倒した。

静寂が戻る中、葵はゆっくりと立ち尽くし、これから先の戦いを思い描いた。




次から主人公が変わります(前主人口も出てくるが)


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