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第一話

廃材や、ゴミが至る所に散乱している。
その裏通りには、千鳥足で歩く男や、なにもないのに笑い続けている女子供がいる。
この地区には風が流れてこないため、
淀んだ空気が充満し続けている。
この空気を吸ってしまえば、もう表世界には出られない。

一人一人が狂気に侵された裏通り。

これが、この地区の呼び方だ。
この呼び方は、表世界に住んでいる人が考えたもので、
現在、警察達も裏通りの事に関して対策を練っているのだが、
効果的な改善方はまだ、出てきていない。

そこに一人。
淡い黄緑色の髪の毛の少女がふらりと入ってきた。
歩くたびにショートカットの髪が揺らしながら、人の間を縫って歩を進める。
つぎはぎだらけで、ボロボロの服を身に纏ながら。
同じように、つぎはぎだらけの帽子も被って彼女の目は虚ろだ。
年齢は、外見からは判らないが十六、七くらいの女の子だ。
肌は綺麗な白で、ガリガリに痩せ細っている。
目の下の、濃いクマが存在を主張し続けている。

この少女は一人の男の前で立ち止まる。
その男は薬の売人だ。
しかも、この土地で長くから活動している、珍しいタイプの売人だ。
この男は、薄汚れたこの土地とは真逆の黒のスーツを着こなしている。
高級そうなこのコートには、ゴミ一つついていない。