二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: 【パンダが】ボカロ系で小説書いてみる。……かな【ヒーロー】 ( No.19 )
- 日時: 2011/06/11 19:42
- 名前: ゆn ◆USIWdhRmqk (ID: XLtAKk9M)
「また来たな」
売人はにやりと厭らしそうに笑う。
その笑みには、なにかつかめないものが有った。
しかし少女は、男に笑みを向けられても一ミリも表情を変えず、
無言で男の前に立ち続けている。
「君は……メグって言ったっけ? 今日は一体何の用?」
メグと呼ばれた少女は、つぎはぎだらけでボロボロの上着のポケットから、
空の小さな半透明の袋を取り出して、男の目の前でひらひらと動かす。
「一つ頼むぜ。お願いだ」
メグは真っ直ぐ売人を見つめる。
売人はその袋を乱暴にメグから奪い取り、袋とメグを交互に見ながらメグを睨む。
「金はないのか?」
メグは真っ直ぐ売人を見ていた目を少し泳がせて、
ポケットの中を探る様な仕草をする。
だが、売人は、メグが今現在財布を持ち合せていないという事が予想できた。
「……金がねぇならやれねぇな」
メグの表情が少し変わり、威勢が良かった顔が今すぐにでも泣きそうな表情となった。
売人は、メグと知り合って何ヵ月も経つが表情を変えたのを、
“初めて見た”と思った。
だが、諦めきれないのか彼女は縋る様に男のスーツを掴んで言った。
「お願いだ……苦しいんだよ……」
その声には感情が無く、何でもないような声に聞こえてしまう。
売人は、メグの手を優しく自分のスーツから外した。
メグは薬をもらえるのかと思い、期待した目で売人を見つめた。
その表情を見た売人は、にっこりと笑って思いっきり彼女の頬を殴った。
何が起こったか分からないという様な表情をして頬を押さえるメグを冷たい目で見下して、氷のような冷たい声で吐き捨てる。
「うるせぇな。金がねぇんだったら売る価値が皆無なんだよ。
俺達をなめてんじゃねぇよ、クソガキが」
メグはギロリと売人を睨んで、口の中で血と混ざった唾液を地面に吐き捨てる。
薬が抜け始めてイライラする。
しかし、それを抑えるための薬と金はない。
このままだと理性が無くなり、表通りにも、“現実”にも、何処にも行けなくなる。
————どうやって金を作ろうか
今はそれしか考える事は出来なかった。
「やっぱりバイトかな……」
メグはフラフラと売人に背をむけて歩き出す。
実際バイトが長続きした例はない。
基本的には、何か問題を起こしてクビになってしまうのだ。
薬が切れた時の事は良く覚えて居ない為、またバイトに行くと“辞めろ”といわれる。
それとも、そろそろ改心でもしようか……。
ニュースとかで今の時代は、薬の中毒もリハビリを受ければ治ると聞いたけど……。
実際あてになるものなのか?
メグがどうやって、金を作ろうか考えていると、
売人が「おい、メグ」と、メグを引き止める。
売人が急に声をかけてきたので、少しだけ条件反射でびくっとなってしまう。
恐る恐る振り返るとニヤついた売人がメグを手招きをした。
メグは再びの売人もとへフラフラと歩いて行く。
すると、売人は思っても居なかった一言を発した。
「オピウムの錠剤1粒ならやってもいいぞ」
先ほどまでと同じように、口の端を上に持ち上げながら言う。
それに対しメグは目を丸くしたアトに輝かせ
「本当か!?」
といった。
メグは嬉しそうに表情を緩ませる。
これで、苦しまないで済む。と……。
——しかし、世の中そんなにうまくいかない。
「但し、一つ条件がある」
トーンが落ちた売人の声を聴いた瞬間、
メグはゾクッと背筋に悪寒が走るのを感じた。
「俺の頼む仕事をしてきてくれ。その報酬として、1粒やってやる」
聴いてすぐ嫌な予感がした。
ただ、好奇心はそれだけでは押さえられない。
ましてや、薬が切れかけていて一刻も早く薬が欲しいのだ。
「……で?その仕事っていうのは?」
メグは売人に尋ねる。
「俺の言う人間を殺してきてくれ」
ニッコリと笑いメグに言う。
メグは、そんな事だろうと思っていた。
ただ、メグは薬はやっているが、
殺人なんて所業は未だ嘗てやったことがないのだ。
メグは身長差が十センチ以上もある男の胸ぐらを掴んだ。
「私に殺人をやれってか!?」
相手の顔を真っ直ぐ見ながら怒鳴り散らす。
売人は溜息をついてから、彼女を睨んだ。