二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 【パンダが】ボカロ系で小説書いてみる。……かな【ヒーロー】 ( No.34 )
日時: 2011/07/15 14:07
名前: ゆn ◆Q0umhKZMOQ (ID: Qz56zXDk)

パンダヒーローが選んだ最後の仕事場は、人気のない路地の奥にある地下へと続く階段の向こう。
彼女は無表情のまま、堂々と階段を降りる。
降りた先には黒い扉。
その前には男が二人。
二人はメグに気付くと声をそろえてこう言った。
「パ……パンダヒーロー……!」
やっぱり私は有名なんだ。なら知ってるよな? 
このパンダヒーローがここに来た意味。
メグ……いや、パンダヒーローは階段をゆっくりと降りて2人の前に立って口元にだけ笑みを浮かべる。
「どいて」
それは一瞬の出来事。
彼女は金属バッドを振り上げて、二人の男を殴る。
さすがに一発じゃ殺せない。
もう一発と振り上げたとき、二人の男は拳銃を構える。
拳銃の引き金を引くより、彼女の反射神経の方が早かった。
拳銃を持っている手をすばやく殴り、拳銃は空へと舞う。
それを見事に金属バッドを置いたパンダヒーローは両手でキャッチし、二丁拳銃としてを構える。
そして、乾いた音を響かせる。
地面は赤黒い血の海と化し、彼女の白い肌にも紅い花を咲かせる。
……そう、ここはあの売人の本拠地。

「お困りならば私を呼んで」
そう、もう肉片となってしまった男たちに告げる。
血の海に沈んでいた紅い金属バッドを拾い、黒く重い扉を開く。
男と女どもばかりのこの場所。
パンダヒーローの大好きなオピウムの匂いが漂っている。
そこにいた人々は、一斉にパンダヒーローを見て、ざわめく。
「今お困りなのはメグさんです」
だから、自分を助けます。そう小さく呟いて、パンダヒーローは走り出す……メグのために……。
たじろいている男どもに金属バッドを振り上げる。

「なめんじゃねえっ!」

一ヶ月しかこの仕事……殺しをしていないけれど、十になる時からいる裏社会。
殺されそうなになる時もあった……大人数で襲われかけた事もある。
その都度、闘ってきたんだ。
だから、大人数と喧嘩するのはもう慣れている。
地下にある酒場にこだまするのは、哀れな少女の叫び声と男の叫び声、頭が割れる音。
三遊間を狙って走る哀れな少女。
たった三十分しかたっていないのに、男どもは頭から血を流し、足や手は変な方向に曲がっている。
一目見ればもう、息をしていない事がわかる。
パンダヒーローは傷だらけ。
殴られた痣が痛々しい。
ただ、それよりもパンダヒーローの心が痛々しかった。
店内にいた女達が震えながら泣いている。
そして、パンダヒーロー向かって数々の暴言を吐き、雨で震える猫のようにカタカタと震えている。
感情制限のできなくなってきている彼女は、理性が残っているうちにふわりと笑って彼女たちに言う。
「ここから消えな。じゃないと……殺しちゃうからさ……?」
女達は店内に悲鳴を響かせて、外に走っていなくなった。
しん……と静まる店内。
すると、奥の扉がゆっくりと開いた。その扉を開いたのは……。

「やぁ。メグちゃん」
アイツだった。
相変わらずニヤニヤしていて、気味が悪い。
パンダヒーローは何も言わず地面に転がった拳銃を拾ってから、走りだし体当たりをして売人を押し倒す。
そして、売人の両手両足に拳銃で風穴を開けて、空になった拳銃を適当に投げ捨てる。
彼は叫ばない。
ただ冷や汗を浮かべるだけで、苦痛の表情を浮かべるだけで……。
救いの声も……何も叫ばない。
あぁ……なんて面白くない男だろうか……。
そう、心の中で呟く。
彼女は冷たい目で彼を見下し、金属バッドを振り上げてから口を開いた。

「メグさんの依頼でやって参りました。パンダヒーローと申します。何かメグさんに伝言などありましたらどうぞ」
心のこもらない。
ただ、機械的に言葉を紡ぐロボットの様に話す。
「んー……。メグのこと好きだったってことかな」
弱弱しく笑う彼。
パンダヒーローは微笑む。
「お伝えしておきます。ではお名前をお教えください」
彼は血が止まらない手をゆっくりと伸ばし、パンダヒーローの頬に触れる。
「カイトだよ」
それを聞いて彼女は頷き、金属バッドをさらに振り上げる。
「では、さようなら」
ぐしゃっと彼の顔が潰れる。
何故だろう? 
涙が流れる。
胸が苦しい。
これでいいじゃないか……彼女の依頼は達成したんだ。
遠くでパトカーの音がする。
あぁ。
このゲームはもうどうしようもない。
始まりはあるけれど終わりはない。
リセットなんてものもありはしないない。
一人一人確実に消えていった売人たちの正義のヒーローは正義と悪の区別のつかないまま、この物語を終わらせようとしている。
彼のポケットからオピウムの錠剤を取り、ポケットに入れる。
そして、カイトが出てきた扉を開くと、数多の薬が置いてあった。
その中からオピウムだけを取り、再びポケット入れた。
入口に歩いて行く時にカイトを見た。彼はピクリとも動かない。
「サヨナラ。そして……」
そっと彼の耳元で言う。
「告白で動揺すると思ったかぁ? ばぁか」
高らかに笑う彼女はもうカイトのことなど信用していなかった。
この涙は、やっとでオピウムを手に入れるという喜びから。
胸が苦しいのは、薬がきれたから。
そうやって、片付けるんだ。
オピウム以外の何かが働いていようとも……。

オピウムの錠剤を飲みながら外に出ると、そこには赤い光がうじゃうじゃ。
蜘蛛の子のようにわさわさと……。
売女が何か叫んでいるのだが聞こえない。
あぁ、あいつら通報しやがったのか……。

——あの時

——コロセバヨカッタ