二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 出会いがあるから別れもある。  ( No.3 )
日時: 2011/06/15 21:20
名前: ゆn ◆USIWdhRmqk (ID: Qz56zXDk)

第一章 開幕
*初めての出会い*

「お兄ちゃん……、ご飯まだー?」
無駄に甘えた声で、ご飯の催促をするのは、
妹の雛。んで、料理を作ってるのは、雛の兄の俺。澪だ。
女の名前って思われがちだけど実際、男だ。
「おにーちゃーん……お腹すいたぁー!」
徐々に愚図りだしてくる。まぁ、気にしないでマイペースで、料理をしていくけど。
フライパンからは、じゅーじゅーと肉の焼ける音がする。
ただ、二人暮しをしているから、量は普通の家庭よりも少ない。
それに、俺等兄妹は一般の人たちよりも食べる量が少ないため、
作る量が恐ろしいほど少ない。
成人男性が食べる一人前の量の半分しか一食で食べない。
だから、俺も雛も所謂モデル体系と言う奴なんだ。
「はい、できたよー」
今日の朝飯は、目玉焼き一つ、茶碗に半分以下のご飯に、沢庵だ。
今日は、雛が柔道部の朝練があるらしく、何時もより早めの朝食になった。
「いただきますっ」
「いただきます」
其々、ゆっくり食べる。
俺しかゆっくり食べていないけど。
雛は朝練の時間が迫っているらしく、急いでご飯を食べていた。
「ゴメン、ごちそうさまっ! 行って来ます!」
雛は、急いでご飯を口に入れ、柔道着とカバンを持って勢いよく出て行った。
「行ってらっしゃい」というのも忘れるくらいのスピードだった。

雛が出て行って数分後。
やっとご飯を食べ終わった。俺は食べるのが晩いのか、必ず二十分は掛かってしまう。
雛は十分で食べ終わるのに……。
俺は小さく「ハァ」と溜息をつき、洗い物を下げる。
今日は、雛が帰って来るまで、子供達の剣道の稽古を見る事になっている。
この家で。

驚く人も居るかもしれないが、俺等が住んでいるこの家は、
普通の一軒やではなく、平屋の木造立ての家だ。
そして、この家の特徴は、
家と稽古場が繋がっているという事。
ただ、稽古場には稽古場用の玄関がついている。
家には家用の玄関が当たり前だが着いている。
子供達だけ、稽古場の玄関を使っているが、
未だに破損したりしていない。
その様子を見るたびに、“大切に使っていてくれている”と思って、
少しだけ嬉しくなる。

「あ、洗い物する前に納屋行って竹刀取らなくちゃ」
食器を洗い場において、ふと思いついた心の声が口に出る。
誰も居ないのに恥かしくなって、照れを隠すようにさっさと納屋のほうに向かう。
玄関が、荒れているのを見て雛が大急ぎで出て行ったのだと理解する。
その惨状に苦笑しつつも、靴をちゃんと揃え、
サンダルを履いて、外に出る。
まだ少しだけ肌寒いが、太陽が照っていてすぐ体が温かくなってくる。
少しの距離だが、忘れずに鍵は掛ける。
泥棒とか空き巣は物の五分と少しくらいで金品を奪っていくからね。

数十秒歩いて、納屋の前に立つ。
この納屋に入るのには、何気に勇気が居る。
冬場は、凍るほど冷たく、夏場は湿気とかび臭さが襲ってくるからである。
そして、今は……夏真っ盛り! しかも梅雨明けすぐなので……ヤバイだろう。
「ふぅ……よしっ!」
思いっきりガラッ! と、空ける。
瞬間、ムワァッと蒸し暑く、尚且つかび臭いにおいが襲ってきた。
俺は、気持ち悪く倒れるんじゃないか? と、思いながらも奥にしまわれている、
竹刀を手に取った。
……かび臭い。
第一印象という名の、悲しさを表してみた。

——竹刀を手に取り、納屋の扉を閉めた瞬間。
ドサドサドサッ!! と、稽古場の方から聞こえた。
稽古場は音が反響しやすいので、納屋のほうにも鮮明に音が聞こえる。

ちょっとした不吉な予感が脳内を駆け巡った。