二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 『ボカロ曲を小説に! —悪ノ王国— 』参照800突破!! ( No.140 )
日時: 2011/08/31 22:31
名前: ボリーン (ID: xlVw1wG6)

三話


「何故・・わたしなんですか・・??」


ルカーナはそう言うと無表情に近い複雑な表情を浮かべた・・


「・・心を病んでるからよ・・貴女が・・あの事件のことで・・」

魔道師の声は低く唸るようで身体の奥に響く・・・


「あの事件・・・」


薔薇色の頬は青白く・・
眼は無造作に見開かれ・・

彼女の美しい顔が恐怖に染まって行く・・


「純潔を奪われ・・母を奪われ・・心の平安を奪われ・・
一人ぼっちにさせられてしまった・・生きるのが・・辛いでしょ?」


何かに脅えるルカーナを見るエルルカの瞳は切なげであったが何故か人間らしくない冷たさを感じた・・・

それはきっと、彼女が何百年という時を生きた魔女だからなのだろう・・


「嫌・・・思い出したくない・・死にたい・・もうわたしには何もなくなってしまった・・・」


ルカーナはピンク色の美しい髪を振り乱し子供のように嫌々と首を横に振ると机に突っ伏して泣き始めた・・


エルルカは遠い所を見るような目つきで彼女を見ている・・


「わかるわよ・・・貴女の気持ち・・わたしも同じ気持ちになったことがあるわ・・・もう100年以上前のことだけど・・・
いまだに少し哀しくなるわ・・」


「じゃあ・・・なんで貴女は生きるんですか・・・
生きてたって・・もういいことなんてないのに・・・・」

彼女の問いにエルルカはしばし考えていた・・


「もう・・生きてるのに意味なんてないわよ・・
でも・・エルド様がわたしに暇潰しを与えてくれたのよ・・・」


彼女はそう言うとニコッと笑ってみせた・・


「その暇潰しはどんな物なんですか?・・」


「・・大罪の回収・・って言ってもわからないわよね・・・
でも貴女が被害を受けたあの事件にも関係があるのよ・・・
大罪の悪魔に取り憑かれた人間はあのような行動に出る・・・」


エルルカはそっと眉を顰めた・・


「それを・・貴女が片付けてくれるのですか?・・
その為に・・わたしの身体が必要・・?」


「えぇ・・そうよ・・」


ルカーナはそれを聞くと少し表情を和らげた・・・


「迷っていましたが・・これで決心出来ました・・
その大罪によってもう二度とわたしのような思いをする人を作りたくないです・・・わたしが大罪を回収する仕事・・いえ・・暇潰しに協力出来るなら幸いです・・」


そういうと彼女は眩しい程の笑みを浮かべた・・



「そぅ・・よかった・・貴女の犠牲は決して無駄にはしない・・
ありがとう・・・」


魔道師は哀しげな微笑を浮かべ・・そっとルカーナに近付きギュッっと抱き締めた・・・・


「温かい・・・」

そう言って彼女は静かに目を閉じた・・


魔道師はボソボソと彼女の耳元で何かを囁いた・・


「ありがとう・・・」

消え入りそうな声でルカーナは最期の言葉を発した・・・


次の瞬間・・その部屋に居たのはルカーナの姿をしたエルルカだけだった・・・



エルルカはルカーナが座っていた椅子をただ見下ろしてた・・


第五章 『転身』 完