二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: イナイレ〜memory〜 羽流見たい人〜 ( No.825 )
日時: 2012/06/06 22:28
名前: 音愛羽 (ID: bJXJ0uEo)

*52.俺がいる*


「ほんと、お前バカかよ!?」


声を荒げて言う。
包丁は床へ落ちたまま…僕の手は叩かれたときの痛みでジンジンしている。

僕は声のほうへとゆっくり顔を向けた。
声の主はわかっている。

羽流「風丸…。…!?」

声の主以外の人もいたことに僕は驚いた。
サッカー部の人みんなが…いる。
驚いた眼で。
信じられないという目で。
僕を見ていた。

秋「風丸君が…行こうって言ったのよ?」

円堂「来てみて驚いたよ…」

秋、円堂。
そうだね、ごめん。
でもね…僕は…僕は、僕は

風丸「バカ以外の何物でもないだろ、お前。」

いつもの憎まれ口のつもりか、それとも…
本気で僕を気遣ってくれているのか。

羽流「…して…」


僕は。
僕は、僕は、死にたかったのに…


(((((嘘つき、羽流の嘘つき))))



羽流「どうして、どうして、…どうして止めたんだよ!!!???」

声を荒らげる僕。

風丸「どうしてって決まってんだろ、」

羽流「うるさい!!僕は…僕はやっと死ねると思ったのに、!!」

風丸「死ねる、だって!?バカ言うな!!命をなんだと思ってるんだよ!?」

羽流「っ…」




命の大切さくらい知ってる…
知ってるんだ、わかってるんだ。



羽流「命は…命は大切だよ。宝物。ニンゲンにとっては。
    僕は、僕にとっては違う!僕の命なんてどうでもいいんだよ。」


叫びに近い声。
こんなに本気になってる僕。
なんでだよ?


オレンジ色の光がリビングに差し込んでくる。
もう夕方。
床に落ちたままの包丁が怪しい光を放っていた。


円堂「そんなこと…そんなことない!!粗末にしていい命なんてこの世にない!」

羽流「違う、違う違う!!僕は…この世に必要ないんだ!」

秋「そんなことないわ、円堂君の言う通りよ!?」


みんなが口々に言ってくれる。

“僕の命を消してはならない”と。

風丸はこっちをまっすぐに見つめて黙っていた。
僕も、そっちをまっすぐに見つめた。

みんなは僕たちの視線に気づいたのかしん・・・と静まり返った。





羽流「僕は…僕は死んでもいいんだよ…こんな命、消えた方がいいんだ。」

ぽつり、とつぶやき口調の僕。
イラナイ、消えろと言われ続けてきたこの命。
人殺しの僕なんか、僕なんか…


羽流「イラナイ命などない…そんなのウソに決まってる。
    そういう人間が僕をいらないというんだから。
    僕のことなんかこの世に存在するだけで…人を傷つけてしまうんだから…」





風丸「……ない…んなこと、そんなことない!!円堂たちの言葉聞いてなかったのかよ!?」

羽流「聞いてたさ。うれしかった、でも…」

風丸「でもじゃない!」

羽流「…僕に生きてていい理由なんてない!!」

風丸「だからって死ぬ理由も死んでいい理由もないだろ!!??」

羽流「僕が…









                 僕が死んだって誰も悲しんだりしない!!」

本当のことだ。
誰も悲しまない、誰も。
逆に喜ばれる……


風丸「うるさい!!黙ってろ。お前何にもわかってない。」

羽流「わかってるさ、僕はs…「ちがう。」ぇ…?」

風丸「悲しむ奴がいない?バカなこと言うな馬鹿。悲しむ人はいるに決まってんだろ?」

羽流「どこにだよ?どこにもいないさ。家族もイナイ、友達もいない。他に誰がいるって…」

あざ笑いながら僕は言った。
どうせいないんだ、だれも。

風丸「俺がいる。」




僕はもう一度風丸の目を見た。
きりっとした茶色の目。
優しいけど、厳しい視線。
まっすぐに、一直線に彼の目を見た。

















“俺がいる”




その言葉はほかのどの言葉よりも僕の心に響いた。
ぎゅっと結んでいた心の紐がするりとほどけていくような。
暗く闇に閉ざされた心に光が差し込んだような。









羽流「僕…は。」




風丸「俺だけじゃない。ここにいるみんな、お前が死んだら悲しむぞ。」



さっきの口調とは違い、優しい口調。








羽流「本当に…」




『あぁ、そうだよ。』

『もちろん』

『当たり前だろ?』





“俺が”


みんなの心。
僕の心。







響きあって、…








“いる。”





まっすぐにサッカー部を見て僕は。











ニコリ、と初めてみんなに向かってほほ笑んだ。