二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: イナイレ〜memory〜  更新ストップ(テスト期間のため) ( No.862 )
日時: 2012/06/19 17:40
名前: 音愛羽 (ID: bJXJ0uEo)

*55.僕の過去、始まり Ⅱ*




あの日から僕は公園へ行かなくなった。
サッカーもほとんどすることはなく、そう。サッカーのない毎日を過ごしたんだ。

でもやっぱり歳は歳。
一か月もすると幼い僕の記憶からはあの日のことは消されていた。
男が言った言葉も、もうサッカーはしたくないという心も。

そうしてまた、僕は友達と楽しくサッカーをし、毎日サッカーに明け暮れる日々を送るのだった。
ただ、あの公園には寄り付かなくなったことは変わらなかったけれど。

ある晴れた日の午後のことだった。
さっきも言った通り僕のお姉ちゃんはすごく面倒見がよく、率先していつも僕の幼稚園へのお迎えに来てくれていた。
その日もお姉ちゃんが僕を門のところで待ってくれていた。
お姉ちゃんはとても美人で、僕と同じ紫色の髪を風になびかせていた。
笑顔で羽流、お帰り。というお姉ちゃんの手を握り僕は家への道を歩いた。
家に近くなるにつれ見慣れた顔が増える。
目が合うたびにこんにちはと挨拶する。ニコニコと笑顔のお姉ちゃんの横顔もやはりきれいだった。

小さな家が見えてきた。
夕焼けの空は鮮やかなオレンジに染まり、僕の家も太陽の光でオレンジ色に見えた。

お姉ちゃんがポケットから鍵を出す。鍵と鍵のすれ合う金属音。
鈴のような音がした。

鍵穴にそれを差し込み回す。そしてドアノブを引く。
だがドアはあかない。
首をかしげながらもう一度鍵を差し込み反対に回す。

成美「羽流、あけるってどっちだったかなぁ…」

なんて言いながらドアを引いた。
ガチャリ、とあく。

成美「あ、最初っから鍵あいてたんだ。さっきはしめちゃったのね。」

お姉ちゃんの言葉にうなづいた。
洗面所で手洗い、うがいをする。家族の約束なのだ。まずは手洗いうがいが絶対。

するとリビングから震えるお母さんの声が聞こえた。

母「羽…流?帰ってきたの…?成美もいるの…?」

その質問にお姉ちゃんが答えた。

成美「うん、お母さん。」

母「こっちにきちゃ…駄目よ…絶対に。」

羽流「どうして?」

今度は僕が聞いた。
妙に震えた声が耳について離れない。
今でも覚えてるくらい…。

「いいから…外に出なさい…」

ドン、物音が聞こえた。誰かがテーブルを蹴り飛ばしたようだ。
さすがにおかしい。
お姉ちゃんも僕も走ってリビングへ行く。
荒々しくドアを開けると目の前には…


成美「あなた誰…?」



羽流「ぁ…いや…なんで…!!」


あの〝男〟がいた。
刃物をお母さんに向かって振りかざしている。

お母さんの服にはところどころ跳ね返った血らしきものがついていた。
ふと足元を見ると人が転がっていた。
見たことのある大きな背中。
お母さんと僕とお姉ちゃん3人で選んだ水色の服。

成美「お父さん!!」

腹部を紅に染めて倒れている。

母「成美…羽流、逃げなさい…!早く!」

成美「お母さん!」

男はこっちを見た。お姉ちゃんではなく僕を。
そうしてにまっと笑うと躊躇なく僕の目の前でお母さんを、刺した。
お母さんの声があっと漏れた。

お姉ちゃんも僕も驚きと怖さと怒りで…声などでない。
飛び散る血は部屋のものを赤く染めた。

男はこちらへゆっくり歩いてきた。

「お前のせいだぞ。私は言ったからな。」




言葉が僕を貫いた。
あふれ出た血は止まらなくて…でも言葉は何も出てこなかった


刃物も男もこちらに向かってくる。


ゆっくり。ゆっくりと。





目の前に来た男はやはり背が高くて…。
角ばった指はしっかりと刃物をつかんでいる。

つかんでいない方の手がこっちへ伸びてきた。



でもその手はここまで伸びてくることはなかった。
途中で止め、引っ込めた。
躊躇したのだろう、僕に触れることを。

そうして刃物を今度は僕のほうへ振りかざし、振り下ろした。
とっさに目を閉じる。

鋭い痛みが走る…はずだった。



痛くない、…何も感じない。

そっと目を開けると同時に何かが僕の足元に倒れた。
どさっという音とともに。

視線を落とす。
そこには…血に染まったお姉ちゃんの姿があった。
息はか細く…でも僕のほうを見て

成美「は…る…おね…が…い、生きて…生き延び…、て…」

最後の力を振り絞っていった。




ようやく、状況が僕に理解できた。

お父さんがしんだこと。

お母さんが死んだこと。

お姉ちゃんが死んだこと。


もうみんな、この世にいなくなってしまったということ。


お母さん、お父さん、お姉ちゃんは、




                  僕が殺したも同然だということ。




羽流「いや、いやぁっっ!!おねえちゃん!!!!」






「お前が悪いんだ。」





それは紛れもない事実で。


男は静かに去っていく。
僕はどうすることもできず、ただただお姉ちゃんやお母さんの名前を読んでいた。













「お姉ちゃん!目を覚ましてよねぇ、お姉ちゃん!!お母さん!お父さん…!!」












涙があふれてうまく呼吸もできない中でひたすら名前を叫んでいた。