二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 小説NO.3 悪魔のゲーム〜second〜第1話 ( No.206 )
- 日時: 2011/11/21 20:02
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
花が揺れて、初夏の暖かな風が俺の頬を撫でていく。吹かなきゃいいのに、と思う。だって嫌でも時の流れを実感するから。
「風丸、…お前が居なくなって1年だな。」
*
サンザシ事件、再発。
被害者はまたも中学生男女、東京都○○区雷影神社。
これにより、現行犯で逮捕された女子中学生の無実が証明されたこととなる。
*
1年前の新聞。
サンザシ事件……か、何故だろう、心が痛むのは。
事件のニュースが報じられると必ず、守は大丈夫か?と、家に連絡した。その度に守の元気な声が聞けてホッとしていたが、1年前の事件は違った。被害者が、あの一郎太君だったから。電話には出られないの、というお母さんの言葉が、頭から離れない。しかも一緒に死んだのは風花ちゃんだという。知っている人だと、ダメージは物凄く大きい。犯人を許したくないと、心から思った。
目当ての場所に着いて、供える為に買った花を手に持ち車を降りる。カッコいい事じゃない。目当ての場所は墓場でした、なんて出来れば言いたくないこと。でも俺は、今回は風丸君と風花ちゃんのためもあるけど、実は毎年墓参りに行ってる。
まずは風丸君、と思ってお母さんに教えてもらったメモを手に探していると、オレンジのバンダナが目に入った。隣に居るのは同年代の女の子?取りあえずバンダナの名前を呼ぶ。
「守!」
弾かれた様に振り向く2人。守はきょとんとしてから、笑顔になっていく。女の子の方は頭にクエスチョンマークを浮かべていた。でも俺はその子に見覚えがある。確か中学に入ってからの年賀状には毎回その女の子の写真があった。サッカー部のマネージャー、だったかな。
「よう、元気にしてたか?」
「兄さん!!」
おお、元気そうでなにより!と、女の子が不思議そうな表情で、守の方を向く。
「え、円堂君…のお兄さん?」
「ああ!」
「久し振り、と初めまして。弟がいつもお世話になってます。」
「何だ、連絡くれればよかったのに。」
そう言う守には、早朝メール入れたんだけどな…見忘れか。我が弟には良くある事だ。
「サッカー部のマネージャーしてます、木野秋です。」
「円堂丹、19歳の大学生だ。よろしくな!」
*
病院で、何度も何度も名前を呼んで。
風丸達が崖下に落ちて救急車で運ばれたと知ったのは、業間休みの事だった。風花は一命をとりとめたが、風丸が非常に危ない状態だと先生が教室の電話で話しているのを聞くと居てもたってもいられなくなった。直ぐに病院に行きたい、と訴えて受け止められるわけがない。でも、行けないのなら授業をさぼっていくと俺が言うと、先生は困った様に家に電話を入れて母さんが連れて行ってくれた。先生を困らせたのは悪いと思ってる、でも頭がいつも通りに動かなかった。
これから病院に行って、それで知る事って何だ?
車の中で考えて、血の気が引くのがハッキリと分かった。『風丸は非常に危ない状態』、それが指すのは死が近いってことじゃないか。そんな事は無い!、って強く思ったって目に溜まる涙は、自分の意思とは関係なしに。
病院の救急にある手術室前の廊下。そこで静かに待っていた。この中に風丸がいて今戦ってるんだ……。
大丈夫だよな?
不安で押しつぶされそうだった。風丸は『すぐに戻る』って言ったじゃないか。大丈夫だ、きっと……。
なのに、それは儚く崩れ去る。
お医者さんは言った。『失敗でした。』たった一言。悔しそうに、会わせる顔がありませんと言う様に。
世界が止まった気がした。
隣の手術室のランプが消えるのを、俺はただ情報として捕らえていた。でも視線を向ければ、そこから現れたのは風花だった。頭には包帯が何枚も巻かれて、血が滲んでいる。泥で汚れた雷門のジャージ、そして酸素マスクを付けて呼吸する様子は、まるでテレビの向こう側で起きている出来事みたいだった。でもこれは風花だ、俺のちっちゃい頃から友達の…姫雷風花。
彼女が去っていく。
看護婦さんは大丈夫ですよ、と明るめの声で言ったけど信じられない。本当に?と聞き返すと、もちろん、と言い返してくれた。また、心の中で呟く。本当に?
信じられない。
今さっき、大丈夫だと思ってた親友が消えて行った。
こんな病院の、小さな部屋で。
俺は何もできずに。
*
「…兄さんも、風丸達の…?」
目の前に居る兄、丹に言うと「まあな、」と返事が返ってきた。でも花は俺達よりも多い気がする。花の量なんて自由だけど、何だか多い様な。
兄さんは風丸の墓に花を差して、線香にライターで火を付けた。合掌して立ち上がると、風花の墓まで案内して、と言った。案内して、そこでもまた花を差したけど、兄さんは花を残していた。訝しげに合掌する兄さんを見ていると、隣で秋が言う。
「円堂君に似てるね。」
「でも、兄さんはサッカーやらないんだ。」
「え?!」
水泳を小さい頃からやっていた兄さんは、俺がサッカーボールを日が暮れるまで蹴っていても全く影響を受けなかったらしい。オフサイドすら知らない兄さんだけど、俺をバカにしたりする事も無かった。
「もう1人ですか?」
「ん、そう。」
秋の問いに答えた兄さん。秋と顔を見合わせて、ついて行こうと俺は後をついて行った。秋も。
着いた先の墓は全く聞いた事の無い名前。
「…誰?」
*to be continued...*