二次創作小説(映像)※倉庫ログ

小説NO.2-第6話‐ ( No.218 )
日時: 2011/11/26 13:17
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

夢の世界に、沈んで行く。
それだけで気持ちは穏やかになってくれる。
さっき怒鳴った事も、過去に言われた事も、この右手の事も、全部全部忘れられる。だから、夜は好き。

もう少しで全部忘れて、夢の世界へ行けると思ったら頭の中に涼野さんの顔が浮かんだ。ぼんやりとしたまま、何故か考えられた。心の中は、良い香りの風が舞い込んだみたいに穏やかになっていく。
そのまま、私は眠りに落ちた。




「涼野君。」
「何だ。」

夜のホテルの部屋。周辺の明るい光が、窓を彩っている。
突然私の部屋に現れた亜風炉に顔をしかめながらも、取りあえず話をする事にした。気ままな来客でも、明日からはチームメイトになるのだから多少は仲良くしておきたい。

「明日からよろしくね!」
「……。」
「…あれ、どうかした?」

部屋の中に入ってソファーに腰掛けて、それで出てきた言葉がコレ。そんな挨拶なら入り口でも出来るだろう。

「親戚とは正反対だな。」
「ん?あ、詩麗奈の事か!ちっちゃい頃は僕と全然変わらなかったけどね♪」
「…!?」
「髪型と服を一緒にして同じポーズとって『どっちが僕でしょう』みたいな事も良くしたよ。そっくりだったから☆」

もっと弾けていた、という事か。
確かに、そんな事をしていた様な面影が無いとも言えない。でも今より弾けていてこんな奴の近くに居て、良くあんな風になったなと思う。亜風炉は頭に花が咲いているというのに。←

「ま…昔の話。色々あったからね、詩麗奈にも。」
「色々…?」
「じゃあ明日は朝早めに起きる予定だから、ちゃんと起きてね!」
「…チューリップか。」
「確かに情報源は南雲君だけど…怪我はさせないでね^^;」

後で絞めに行こうかと思っていたら、見事に止められてしまった。←
本当に話は挨拶だけだったらしい。気まますぎる客を部屋から閉め出すと、私はしばらく考え事をした。詩麗奈に昔色々…。色々、というのはそれなりに様々な人にある事だが、彼女の場合は何があったのだろう。もしかすると、今日急に元気を失くした事に関係があるのだろうか。
…考えても、なかなか答えは出ない。朝早く起きるのなら、早めに寝ておかないと、明日最悪な1日を送る事になってしまう。そう考えて、私は仕方なくベッドに入った。




朝食を済ませて、照さんが呼んだタクシーに乗り込んだ。4人は結構ぎゅうぎゅう詰で狭そうです。涼野さんと南雲さんは心配そうにしていましたが、南雲さんが助手席、後部座席が奥から照さん、私、涼野さんで座れば案外大丈夫でした。因みに、この順番を決めたのは照さんです。

「これなら大丈夫だよね?」
「!」

…気を遣ってくれたようです。今日は、良い感じに優しい日の様です。珍しく。←




窓の外の移り行く景色に視線を向けていた。同じ様に見ていた詩麗奈と、ふと視線が合う。どこか寂しさを帯びている金色の瞳に、私が映った。

「…涼野さん。」

俯いた後、消え入りそうな声で詩麗奈が私の名前を呼んだ。

「どうした。」
「……ごめんなさい、呼んでみただけ、です…」

ごめんなさい、とまた小さな声で彼女が謝る。一番奥に居る亜風炉が顔をしかめた。
さて、そろそろタクシーは韓国代表が集うスタジアムに着くらしい。