二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 雨音様リク*木漏れ日の様な。 ( No.303 )
- 日時: 2011/12/12 19:56
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
部活へ向かう途中だった。
澄んだ空気は、もうそこまで来ている冬の足音を告げているかの様。冷たい空気に響く、コンクリートを踏みしめる自分の足音。だが、ふとバッグに入れている時計を見て、時間がない事を知った。
キャプテンが遅刻では、示しがつかない。
そう思って走り出す、と焦った様な声が聞こえてきた。
聞いた事の無い高い声。
「そこの、青い制服の中学生っ!!」
…俺しかいない。
立ち止まって振り返れば、ポニーテールの20歳前後と思われる女の人。
「2つ、尋ねて良いかな。」
「どうぞ。」
隣に来て、ホッと安堵の表情を見せた女性。見た事はある様な気がする。
「1つ目、雷門中まで君について行って良い?」
「ええ。」
「良かった…あと2つ目はね、」
途端少しだけ顔を曇らせて、他では聞かない様な質問をその人は投げかけた。
「結婚って、何でするの?」
*木漏れ日の様な——+Un bourgeon、蕾+——*
雷門中サッカー部1年、松風天馬は監督である円堂に笑顔で話しかけていた。
もう少しで練習が始まる。休日の今日も、サッカー部は全国大会優勝を目指して練習に取り組んでいた。そして監督は円堂、サッカーをしている者なら一度は聞いた事があるであろう程の有名人。コーチの鬼道は、イタリアリーグで活躍していた同じく有名人。この2人が部活を仕切るのだ、チームが暗い訳がない。
「監督っ、今日は何の日か知ってますか?!」
「今日?……鬼道は知ってるか?」
頭を巡らせても分からない。今日は単なる日曜日としかとらえていなかった円堂は天馬の質問に戸惑い、鬼道へ尋ねる。
話を振られた鬼道は、タブレット端末から顔をあげた。
「今日…?」
「はい、円堂監督には関係のある事だと思うんです!!」
「俺に?」
わくわくした顔で円堂を見上げる天馬を見て、鬼道はフッと笑みを浮かべた。
「円堂は分からない様だな。」
「皆知ってますよ!!ねえ、剣城!」
「???!!」
急に話を振られた剣城の表情に、倉間と霧野が吹きだす。円堂が知ってるのか、と尋ねると明らかに不快そうな顔で返事をした。
「今日は良い夫婦の日、だそうです。」
「「何で知ってるんだよ!!!!!」」
準備をしていた部員(主に2年)に突っ込まれる。円堂と鬼道は、キョトンとした。
「天馬が言ってました。円堂監督に奥さんがいる、とか言って…」
「ああ、だから俺に関係のある事だって言ったのか。」
「なら兄さんにも関係あるじゃない!」
今やって来たばかりの顧問、音無春奈の発言に今度は部員達が目を見開く番だった。
「だからさっき笑ってたのね。兄さんは知ってたから。」
「まあな。」
(((何でこの人も知ってるんだ……)))
そして2年ばかりではなく、全員が心の中で呟く。
と、円堂が校門の方を見て笑顔になった。それに気付いた狩屋が視線をそちらに向けたのと、声が響いたのは同時。
「遅れましたっ!!!」
雷門中サッカー部キャプテン、神童拓人だった。
走って来たのか、少し息が切れている。そして監督の方へ着いた神童は、その空気の異様さに気付いて顔をしかめた。
例えば霧野は鬼道をじっと見ているし、剣城は何故か微妙にダメージを受けている。それ以外の選手もいつもとは微妙に違う気がする。そちらに気を取られている神童に、円堂はまだ遅れてないぞ、と声をかけた。
その時、今まで硬直していた葵が口を開く。
「……って鬼道コーチ結婚してたんですか!!!???」
「随分時間差のあるリアクションね。」
「そんなに驚く事か???」
「フツー驚くだろ!」
ポカン、としている円堂に水鳥が言い返した。と、鬼道の表情が少しだけ陰る。
神童は葵の言葉に目を見開いていた。
「…え、けっこ…ん?(どんな話をしてたんだ…?)」
「シン様ステキ…♪(パシャパシャッ」
「ま、まー良いから着替えて来いよ;」
霧野に背中を押されて、頭にクエスチョンマークを浮かべたままの神童はサッカー棟に向かった。
(そう言えば、あの人は何処に…?)
*
「元気あるなぁ…」
身軽な服装の女性が、木陰から練習を見ていた。
先程神童に話しかけた女性だった。橙色の髪をポニーテールにしていて、黒のパーカーにジーンズという恰好である。
「あ、さっきの男の子キャプテンだったんだ…」
引き留めて悪かったな、と心の中で反省する。
道が分からなかったのだ、仕方がないと言えばそれまでだが、道案内をしていた彼を思い出すと罪悪感があった。ついて行って良い、と許可を貰ってついて行ったが後半は走っていた。急いでいたのだろう。
生き生きとした選手達の顔を見ていると、彼女の心は段々晴れやかになっていった。サッカー楽しいよね、と呟く。
ふと視線がベンチに向いた。円堂が立ったまま、フィールドでボールを追う選手たちを見つめている。その少し後ろに座っている鬼道を、彼女は捕えた。視力の良さに、感謝した瞬間。
「いた…」
表情が、より明るくなる。
その左手の薬指の根元が、太陽の光を受けてキラリ、と輝いた。
*
練習が終わる頃には、寒い秋でも額に汗がにじむ。
その選手達を見て、円堂や鬼道は自分達の中学時代を思い出さずにはいられない。廃部寸前だったサッカー部、自称宇宙人を倒す為に日本中を回った事、世界一を目指して練習し続けた日々。————そして出会いと。
「よし、片付けは終わったな!」
「はいっ!」
円堂のすぐ近くにいた天馬が返事をする。
「それにしても鬼道コーチにも奥さんがいたなんてビックリです!!」
そんな髪型だしな、と狩屋が心の中で付け足した。どんな人なのかと浜野が尋ねる。
「優しい人だ!!」←
「何で監督が答えるんですか。」
さらり、と霧野が突っ込む。
「百聞は一見に如かず、だ。会ってみれば良い。」
「え、でも確か…」
円堂の言葉を鬼道がシャットアウトした。
それから、静かに言う。
「隠れてないで出てきたらどうだ?」
春奈が慌てふためいて鬼道に駆け寄る。それから彼の視線の先を辿って後ろを振り向いた。
昇降口近くの木陰が、わずかに震えた様に見えた。
「…あは?」
「バレバレだ。」
「いや、俺達全然分かんなかったし…;」
雷門イレブンは話の内容が分からず、あは?、と言って登場した女性を凝視する。
軽装の女性。僅かに微笑んで、風が吹いた。
「「!!!」」
「紹介しよう。…俺の嫁、瑠璃花だ。」
風に乗ったみたいだ、と天馬が心の中で言う。
—————気付けばその女性、瑠璃花は鬼道の隣で微笑んでいた。
*+*+
グダグダだぁぁ!!!
続きます、このまま終わりにはしないので!!