二次創作小説(映像)※倉庫ログ

雨音様リク☆木漏れ日の様な。Ⅳ ( No.320 )
日時: 2011/12/18 07:01
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)


*木漏れ日の様な。Ⅳ——+Le printemps du coeur、心の春+——*


警察に連絡を入れた浜野は、ホッと一息ついていた。後は、警察が到着するまで気付かれない様に見ていて、それでもし危ない状況になったら…、と頭の中で考えていた時だった。聞き慣れた声がすぐ傍でしたのは。

「何してんだ、浜野。」
「「!」」

今まで自分が一方的に見ていた犯人が、浜野を振り返る。
浜野が後ろを見ると、今声をかけたのは三国だった。三国だけではなく他の3年生もいる。そして全員が今の状況を何となく察知したらしく冷や汗を浮かべた。瑠璃花は驚いて目を開けたり開いたり、犯人は気味の悪い笑みを浮かべる。
そして、瑠璃花が焦った表情で口を開いた。

「皆、逃げっ…」
「そいつ等も潰せっ!!」

瑠璃花を掴んでいる男の声に、ほかの数人が返事をした。途端に浜野達の方向へ走って来る。
3年生達に次いで、浜野も逃げだそうと走った。

「うわぁ…っ…〈ごつんっ〉!!?」
「痛たたた…って浜野君!」
「ここか…、」

速水が浜野とぶつかった衝撃で座り込み、疲れと安心感の為か涙をこぼす。3年生達は速水が案内して来た鬼道に驚き、そして木刀を所持している犯人たちにも驚いた。
鬼道はその犯人達の男の後ろで瑠璃花が車に押し込められたところを目撃し、やはり、と小さく呟く。鬼道財閥の身内で女、となれば誘拐して身代金を欲しがる奴等がいるというのは当たり前で、その事は瑠璃花にも話していた。もちろん、10年前、瑠璃花が鬼道財閥の養子になった時から。ただあの頃は瑠璃花も魁渡も基本『流星』の名字を使っていたが。

「!!!鬼道さっ…(「お、まさか来るとは…」

バタン、という音がして車の扉が閉まった。瑠璃花の声も遮られたが、鬼道としては自分の存在に気付いただけでOKなのだ。天才ゲームメイカーとして活躍していた中学時代、その頃の頭の回転の早さは今も健在である。

「三国、準備していろ。」
「え…」
「お前の力が必要だ。」

三国が不安そうな表情で仲間を見ると、全員、何がなんなのか分からない、という顔で見返している。一方、鬼道は向かって来る男たちに苦戦していた。内心、中学時代の円堂がいたら便利なのにとか思っている。イジゲン・ザ・ハンドをやってほしい位だ。
取りあえず、三国は一歩出よう、と想い鬼道に近付き、彼に腕をひかれすぐ後ろに立たされた。

「!」

その瞬間、風が僅かに起こった気がした。
そして鬼道は何かに気付いたかのような表情で、男を突き飛ばす。

「三国、俺の前にフェンス・オブ・ガイアだ!」
「っ、はいっ!!」
「「!」」

浜野が驚いて声を漏らす。けれど三国は構わず技を繰り出した。隕石の衝撃でわずかに周辺が揺れる。そして鬼道と犯人達の間に壁が出来、狭い通路が塞がれ犯人達の困惑の声が聞こえた。
そして丁度、パトカーの音が全員の耳に届く。————高い、まだ少し子供の様な声も。

「きど、さんっ…」
「良くやったな、俺の予定通りだ。」

気付けば、瑠璃花は鬼道にぴったりくっついて彼の服に顔をうずめていた。

「瑠璃花さん!!?」
「いつの間に…?!」
「三国がフェンス・オブ・ガイアをやる直前だ。」

彼女は車から脱出してこちらに全力で走っただけだ、と簡潔に鬼道が説明する。しかし、そう言われても見えなかったのだから直ぐに飲み込めるはずもない。ポカン、とした表情に鬼道は僅かに笑みを浮かべた。

「警察です、退いて下さ…ええ!!?」
「必殺技の正しい使い方だ。」←
「必殺技…ってそれはフィールドの上でやって下さい!!犯人逮捕にどれだけ時間かかるんですかコレ!!!」
「人の命が無事だった、という風に考えれば妥当でしょう。」(by三国)

警察官、激怒。

パトカーから降りてきた気の弱そうな人が、声を発する。

「…誰か事情の分かる人…」
「あ、はい俺ずっと見てました!」
「そういう場合は危ないから逃げて下さい!!」




「…」

瑠璃花がずっと鬼道にくっ付いて、僅かに体を震わせていた。鬼道は小さな子をあやす様に、背中を撫でる。

「瑠璃花、」

呼びかける言葉に、彼女は顔をあげた。目が潤んで赤くなっている。

「日本は冬が近いというのに、薄着だな。」
「…アフリ、カは…」

その言葉が終わらない内に、鬼道は自分の直ぐ隣にあった紙袋から何かを取り出す。
そして次の瞬間、瑠璃花の首に深い蒼のマフラーが巻かれた。鬼道が優しく微笑んで、それを見て瑠璃花の口からまた嗚咽が漏れる。その優しい温もりは、本当に久し振りで。こんな温もりだけは。アフリカで何をしたって得られるものでは無かった。

「鬼道、さん…っ!!」
「お帰り、瑠璃花。」

ぎゅ、と強く抱きしめられて、瑠璃花は思う。

ようやく、夢見心地から覚められた、と。
カフェまでの道のりはたくさんの物が変わり過ぎていて、まだ日本に居る感じがしなかった。
けれど今、強く鬼道を感じて本当に帰って来たのだと実感している。


「…あれ、浜野先輩。」
「三国さんも、どうしたんですか?」
「あ、ああ瑠璃花さんが誘拐にあって…」

天馬と神童の声。
鬼道が瑠璃花をはなし、先に家に帰る様にと言った。事情聴取は代わりに俺が受けるから、と。
その言葉に、瑠璃花は頷いた。



次で終わり!!