二次創作小説(映像)※倉庫ログ

小説NO.1-第3話‐ ( No.42 )
日時: 2012/08/15 14:26
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

 雷雨だった。遠い雷鳴が聞こえ、その度に女子数名が小さく悲鳴を上げる。土砂降りの雨に警報が出され、早めに帰れる事になったは良いものの、帰る事さえ困難に思えた。外の様子を見ようと窓を見ても、暗い表情の風丸一郎太が映るだけだ。
 円堂に声を掛けて一緒に帰る事にした。そう言えば風花は大丈夫だろうか、今日体調不良で休んでいる彼女の様子が気になる。早めに帰れる訳だし、目と鼻の先にある家だ、ついでに見舞いに行ってみよう…。

「そう言えばサンザシ事件さ、父さんが変な事言うんだよな。」

雨音にギリギリかき消されない位の大きさで、帰る途中に円堂が言った。円堂の父さんは時々真面目な顔して霊の話とかするからおもしろい人なんだよな…。それにしてもサンザシ事件、か。犯人として捕らえられた女子中学生は未だに犯行を否定しているらしい。

「あの犯人現行犯で捕まったんだけど、通報した人が言うには何かに取り付かれた様にしてたらしいんだ。だから幽霊が取り付いてたんじゃないかって…」
「円堂の父さんらしいな。」

苦笑して答える。確かに取り付いてたなら記憶が無いのも納得…ってそんな訳…。まあ、超次元サッカーやってる俺達が言える事じゃないかもな。だってそう言う技もあるからさ。

「じゃあ気を付けて帰れよ。」
「風丸もな!」

俺の家の近くの十字路で別れた。円堂の家はこれからもう少し歩いた所にある。
 傘に当たる雨の音が心地良い…風が大して無いからあまり制服は濡れないけど、勢いが凄過ぎだ。視界が悪くなるほどの大粒で土砂降りの雨。慣れた今では心地良い。
 風花の家の前に来ると、丁度家の扉が開いた。出て来たのは彼女の母親で、相手も目を丸くしている。

「一郎太君…」
「どうしたんですか?」

 母親は出かける所だった。どうやら先日キャンプへ行った時に果物ナイフを忘れたらしく見つからなかったため、買いに行く所らしい。そのナイフは俺も知っている。西洋の珍しい柄だった。

「風花の見舞いに来たんですけど、会えますか?」

母親は顔を伏せて戸惑っている。都合が悪いのだろうか…?

「ごめんなさい、風花、何か学校に行きたくないって…」
「え……」
「友達に会いたくないみたいなの、だからお見舞いも全部断って、って…」

そうですか、と力の無い声が出た。それは…ショックすぎた。何で学校に行きたくないって…。俺が見ている限りいじめられている訳でも無いし、勉強で悩んでいる様子もない。突然の不登校の理由が分からなかった。
仕方なく自分の家に帰った。ドアを閉めて溜め息を吐く。

「何で…風花が。」

 答がほしい訳でも無い、ただ自分の中で渦巻く感情が分からなくて、彼女が学校へ行きたがらない理由も分からなくて…。
 自問自答を、ただ繰り返していた。



 翌日、登校して1時限目が始まる前に保健室を尋ねた。せめて保健室に来ていないか、と思っての事だ。昨日の夜まで降っていた雨が残した、雨上がりの匂いが漂っている。
 保健室に入ると先生しかいなかった。20代後半の女の先生、一昨日大袈裟に風花が目を覚ました事を喜んでいた先生だ。風花来ていませんか、と尋ねると、来てないけど、という答が返って来る。

「そうですか…風花は、学校来たくないって言ってたんですが…」
「そうなの。……私みたい。」

思わず驚いた表情をすると、数年前の話、と先生は両手を振って否定した。生徒と問題でもあったのだろうかと想像していたが、次に聞こえた言葉は予想外の言葉だった。——思わず耳を疑う。


「……私、人を……生徒を殺しちゃったの。」

*to be continued...*