二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 小説NO.2‐第7話‐ ( No.420 )
- 日時: 2012/01/30 00:02
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)
何事もなく、韓国代表が練習を行っているスタジアムへ到着。
僕は涼野と南雲を更衣室に連れて行き、ファイアードラゴンのユニフォームを渡した。それから、詩麗奈を皆の所へ。チームのみんなは僕に気付くと、チャンスウの号令で練習をいったん中断した。
チャンスウの本名はチェ・チャンスウ。ファイアードラゴンのキャプテンで、龍を操るプレイヤーとか言われている。つまり、実力がすごいってこと。MFだけど、ゲームメイク能力が、ね。
「ようやく帰ってきましたか…と、その女の子は。」
「花園詩麗奈といいます。亜風炉照美の親(「僕の妹だよ☆」
「ああ、昨日のマネージャー希望の子ですか…。」
「妹じゃありませんっ!!!」
あ、いつもの詩麗奈だ。くす、と笑みをこぼすと、詩麗奈は静かになった。雰囲気もね。様子をうかがってみると、やられた、という表情で俯いている。かわいいなぁ、本当に。詩麗奈がいると、チームは明るくなると思うよ。慣れない内はドジをするかもしれないけど、ファイアードラゴンのみんなは優しいし。
「聞いてます、アフロディの遠い親戚ですね。キャプテンのチェ・チャンスウです。」
「!よっ、よろしくお願いします!!」
チャンスウの言葉を遮る勢いで左手を差し出す詩麗奈。彼が握手をしようとした瞬間の出来事。やっぱり違和感を感じたらしいチャンスウは、一瞬考えるような素振を見せた。でも、感じる違和感は小さいと思う。[握手をする手がいつもと逆]でも、強く握られれば注意は向かなくなるだろうし。
「じゃあ、僕が連れてきた2人を紹介するねっ!」
さっきからどうしたら良いのか分からない涼野たちがいるから!放置しててごめんね!あはっ☆
…何て言ったら三途の川見えそう…。
フィールドの出入り口で戸惑っていたらしい南雲と涼野を手招き。チャンスウやみんなの視線も、そちらへ向いた。ユニフォーム、しっくりきてる。南雲は髪の赤とユニの赤のWレッド。見てるこっちが暑くなるよ。
「赤いのが南雲、でこっちが涼野。エイリア学園って学校に入ってて日本を騒がせた2人。」
「!エイリア学園…!?」
反応したのはチャンスウ。他のみんなも、聞いたことはあるみたいだ。詩麗奈は知らなかったんだろうな…。
「よろしく頼む。」
自信ありげな笑顔を見せる南雲と、相変わらず感情の読めない表情の涼野。
彼らがいればもっとチームは強くなる、そんな気がした。
*
練習が始まるのと同時に、私は照さんに付き添ってもらいながら、マネージャーの仕事を始めました。元々体育の通知表の点数は筆記で取っている私。思っていたより仕事が多く、体力がもつか、内容を覚えられるか、1人で出来るか、失態をしないか…と不安ばかりが募ります。
練習前と後に使う更衣室の清掃から始まって(これも結構広いので大変です)、皆さんが着替えている間に道具の確認。次に健康状態を見て、練習の最中はドリンク作り(配合がややこしいです)。練習メニューに人手が必要な様子があったら手伝って、なければ監督のお手伝い(手伝うことはたくさんあります)、それと他のチームの情報収集もしてメニューの見直しを考えたり。
ざっと照さんの説明をまとめるとこうなります。特に大変なのは部室の清掃と監督のお手伝いだそうです。この中に食事も入っているとの事。現在合宿中、食事のメニューは監督が考えているので、買い出しは私がやることになるとか。分量間違えて買ってしまったら…、と思うと足がすくみます。
「じゃあ、今日は監督遅れてくるらしいから…。ドリンク作ろうか。最初は教えるよ。」
にっこりと笑顔を見せる照さんに、私はほっと安堵のため息。さっきレシピらしき物を貰ったのですが、疑問点がいくつかあったので…。ありがとうございます、と素直にお礼を言いました。少し驚いたみたいです。
こうしてドリンク作りスタート。韓国らしい味付けで、監督の自信作でもある創作ドリンク。最初は照さんの口に合わなかったようです。今では慣れたけど、と言う照さんは苦笑していました。つまり私の味見はあてにならない…。もしも、失敗したまま皆さんに配ってしまったら…。今日は、マイナス思考な私です。
「うん、出来てるね!さすが詩麗奈!!」
完成したドリンクの味見をして、照さんが言います。肩の荷がすっと下りた気がして、自然と笑顔がこぼれました。…それも、ほんの少しの時間でしたが。
「やっぱり神の妹も神…(「だから何度言ったら!!!」
私は妹じゃありませんっ!!!
*
出来たドリンクを水筒に詰めて、グラウンドまで運びます。
その時は、シュート練習をしていました。南雲さんと涼野さんが言い合いをしている様です。キックとか技が何とかとか…私にはさっぱり分からない単語ばかりですが、そういったものを言っているんだろうな、という事は分かりました。この2人は良くそんな事を言っているので、私には日常の出来事です。
「皆さん、休憩の時間です!!」
「マネージャーの初ドリンクだよ〜」
照さんの声が、また私の緊張をほぐして。
涼野さんが南雲さんを放置して、ドリンクを取りにやってきます。私が渡そうとすると、南雲さんはまだ途中だ、と怒っているのが見えました。…ええと、これはどうしたら、
「気にするな。どうせすぐおさまる…」
「そ、そうですか?」
「おいっ、聞いてんのか涼野っ!!!」
だ、大丈夫に思えません…!!
すっかり怒った南雲さんは周りが見えないのか、そのままの勢いでボールを、強く蹴りまし…た、
「「え。」」
わずかにずれた軌道。それは私のほうに向かってものすごいスピードで向ってきます。
とっさにドリンクのボトルでガードしようとしましたが、そのボールはボトルをかすめ、ドリンクの山に衝突。見事に粉砕。飛び散ったドリンクは涼野さんにかかって、ユニフォームはびちょびちょに濡れてしまいました…。
言葉も出ません。沈黙です。
「あ、あのっ……ごめんなさいぃぃぃ!!!!」
慌てた私から出た言葉に、止まっていた時が動き出したような気がしました。