二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- ...Are you who? ( No.447 )
- 日時: 2012/02/09 18:21
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)
俺の同級生には、不思議な奴がいる。
「佐久間君、おはよう!」
女子らしいハイトーンの声。噂をすれば、だ。振り返ると、水色の髪をツインテールにした少女———清羅がいた。サッカー部のマネージャーをしっかりとこなす、素直だけど……不思議な奴。誰も教えていないのに帝国の事情を知っていたり、自己紹介もしていないのに会った瞬間にサッカー部員の名前を言ったり。ぼーっとして意味不明なことをつぶやいていた時は宇宙人と交信しているのかと本気で思った。
「佐久間、どうかしたか。兎河の事ばかり見て…」
「あっ、いや考え事をしてたんだ。」
清羅の名字は兎河という。一番初めに来たのに、ふと我に返るともう全員揃っていた。朝練が始まる。
声を掛けてきた鬼道は、俺から離れると集合をかけた。FF本戦へいくために次の雷門戦は負けられない。今までとは違う緊張感が、帝国イレブンの間に漂っている。初めは相手にもならなかった雷門が、確実に強さを身につけ地区予選を勝ち上がってきている事はプレッシャーだ。帝国の頂点の座が揺らいでいると俺は思う。
今日も、いつも通りの練習をこなす。FWの休憩の間、鬼道たちMFの練習をフィールドの外から見学する。隣では清羅が、食い入るように見ていた。こいつは恐らく、鬼道が好きなんだろう。だからじっと見ている————と、清羅が落ちたペンを拾うためにしゃがみこんだ。何も言わずにそれを見つめる横顔には、陰りが見える。拗ねたような表情だ。
「…何かひどい。」
「何がだ?」
「!?さ、佐久間君…」
聞いてた?、と恐る恐る清羅が尋ねる。何がひどいんだ、と質問の正確な答えではなく詰問してみた。
「今のは忘れて?」
「…努力はしてみよう。」
少しだけ。
「…忘れるつもりないでしょ。」
「なら教えろ、何がひどいんだ。」
さっきと同じことの繰り返し。清羅は顔をしかめると、観念したように口を開いた。
「運命が、ってこと。」
「…は?」
「佐久間君、休憩は終わりみたい。」
バイバイ、と言いながらドリンクをひったくる清羅。意味不明な言葉と彼女らしくない行動に呆然としていると、背後から源田が呼んでいる声が聞こえた。ハッと我に返り、練習に合流する。途中で清羅を振り返ると、いつも通りの彼女だった。
運命がひどい?
あれは、その場を乗り切るための嘘だったのだろうか。考えて、そうとは思えない瞳を思い出す。
ベンチの清羅を見ていると、ふと俯いて何か呟いた。聞き取れない。
あの調子で、大丈夫なのか…?
「こんなに、がんばってるのに……。
何で鬼道君は怪我するの、何で佐久間君と源田君は…。」
思いつめた、表情だった。
*
続く、けど次で終わり。