二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Are you who? ‐2‐ ( No.451 )
- 日時: 2012/02/11 03:34
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)
「うわぁっ、円堂君!!!」
「「「「!!??」」」」
…あ、やってしまった…。慌てて口を押さえる、けど時すでに遅し。帝国の皆と雷門の皆が目を丸くして振り返った。当たり前、私は雷門の皆とは面識がないんだから。でも、本物を見たら叫ばずにはいられないっ…!!
「…円堂、知り合いか?」
「いや…」
「ごめんね、私が一方的に知ってるだけだからっ;;」
風丸君だぁ…!!って天国みたいな脳内に居続けるわけにもいかない。否定して謝る。驚かせてごめんなさい…。大丈夫、と笑顔で返してくれる風丸君をみて夢心地になった。ダメっ、また脳内に花園が広がったらこれから試合が始まるのにマネージャーとして働けないっ!!!!!
試合は帝国が負けるけど、お互い全力を出すいい試合になる。その様子をこれから見られるなんて嬉しいことだけど、私がしっかりしなかったら変わってしまうかもしれない。はしゃぎすぎるのは良くないと自分に言い聞かせるけど…。無理かも。
そう思っていたら、突然めまいに襲われ壁に上半身を預ける形になった。どうしたのか良く分からずにいると、頭の中に声が響く。
聞き覚えのある声…。
「!」
『0時に迎えに行くから…』
言葉が終ると、めまいもすっかり治まった。やっと…やっと、迎えに来てくれるの?それなのに、どうして嬉しくないのかな。どうして寂しいなんて思ってるのかな。喜ばないと。…どうして?
「…清羅?」
「!佐久間君っ…何?」
「さっき体調悪かったんじゃないか?」
…見てた?
「心配してくれてありがと。」
本当は私も心配してるし、それに本当に信じられないんだけど…。こんなことなら、影山から皇帝ペンギン1号の秘伝書とか(あれってそもそも秘伝書だったっけ)奪って破り捨てておけばよかったのかな。そうしたらどうなるんだろう。佐久間君は苦しまない?それとも変わらない?
「大丈夫か?」
「うん、」
「何かあったら相談しろよ。仲間なんだから。」
仲間。さらりと言われた言葉に、改めて自分がここにいるのは夢ではないと実感させられた。
「…うん、分かった。」
嬉しかった。
もう忘れ去られる存在である私が仲間でいた証を、残してみたいと思った。残念ながらそんな時間はないと思うけれど。
でも、証なんて残せなくても、全てを打ち明けてみたい。どんな顔をするかな、信じてくれないだろうな。
雷門と帝国の戦いに感動して忘れそうだったから、私はフィールドに向かおうとする佐久間君の腕を掴んで、夜の待ち合わせを取り付けた。
*
夜風の吹くベランダは、俺の家の2階にあった。こんな時間に家に来るなんて、やっぱり清羅は不思議な奴だ。けれど、そのことも併せて今から全てを話すと彼女は言う。ベランダからの景色に満足げな表情を見せる清羅は、この前の練習の時に見えた陰りなど一切感じさせなかった。
「佐久間君、私ね、こう見えてゲームするの。」
「…は?」
ツインテールが風に揺れる。振り返って作り笑いの様な微笑みを浮かべる清羅は、続けてRPGが好きだと告白した。…って何の話だ、これ。
「最近そのシリーズの新作が出たんだけど、キャラクターが結構入れ変わってて前のシリーズが懐かしく思えて…。前のシリーズのやりこみ要素をやってたんだ、あの時。」
「…あの時?」
聞き返そうと思ったわけでもなく、呟く。そして、彼女は耳を疑うような事を俺に告げた。
「その世界がここ…って言ったら、信じないよね?」
また、清羅は俺を混乱させる。
*
2に出てくる真帝国学園。そこの佐久間君を引き抜いてパーティーに入れていた時だった。GKは源田君、フィールドプレイヤーは円堂君と鬼道君、佐久間君でレベルアップさせようとサッカーバトルをしていると、突然落下する感覚に襲われ、目の前に変な女の子がいた。猫耳があって、一瞬思考が完全に停止した。何してるんだろう、この子。
『…ゲーム、大好きなんだね。』
女の子が口を開く。無表情だけど、怒ってるのかもしれない。
『何事も、深入りはダメだって覚えておいて。』
『あの、話が見えない…』
『ゲームに対する思いが強すぎるの。悪いけど、調節のためにこれからその世界で大人しくしててもらえる?調節が終わったら迎えに行くから。』
やっぱり怒ってる!!
『…っていうか誰!?その世界って私の世界!?ゲームするなってこと!!??』
『私は林檎、二次元と貴方達の世界を管理するのが役目なの。これからゲームの世界に行ってもらう。適当にやり過ごしておいて、騒いで私を疲れさせないでってこと。記憶を消す時に手間かかるから。』
分かった?、という言葉は耳を通りぬけていた。ゲームの世界?イナイレってこと?二次元は二次元、それを管理するって何?
問答無用、と言わんばかりに林檎って女の子はペンダントから光を放って、私をイナイレの世界に放置していった。そして私は声にならない悲鳴を上げた。
———その場所が、重々しい帝国学園の前だったから…。
「以上。つまり私は帝国学園が好きだからサッカー部の皆の事を知ってた。鬼道君が今日の試合でけがをすることも。」
あの練習の時の言葉、理解してくれたらしい。だから、と聞こえるか聞こえないかの声の大きさで呟いていた。運命はひどい…違う、今となれば責めるべきは脚本の人とかだって思うけど、あの時は本当に帝国の一員の気分だったから……。
今は11時55分頃。もうすぐ林檎が迎えに来る。生ぬるい夜風に当たる事さえ心地よく感じてしまう。遠くに、鮮明に見える鉄塔。本当に視力が良いことに感謝しないと。
「…清羅は、もう戻ってこられないんだろう?」
「信じてくれるとは思わなかった。」
「お前の眼を見れば、本当か嘘か位見分けられる。」
佐久間君へ視線を移す。私は悪戯っぽい笑みを浮かべてるんだろうな。私の悪い癖。悲しい時、無意識のうちに浮かべている…。
「ありがとう、」
涙声だった。佐久間君の悲しそうな表情を見たら、涙が止まらない。
「本当、清羅って変だ。」
「迷惑だったね。」
「そんな事は無い。」
即答した佐久間君。
「迷惑なんかじゃない、それが俺や鬼道達を楽しませたりなごませたりしてたからな。」
「…本当?」
「本当だ。」
「お世辞とか嘘とかいらないからね?」
「これは俺の本心だ。」
何も言えなかった。真っ直ぐな佐久間君の目が、言葉に嘘はないと語っている。涙が止めどなく溢れ、私は俯いた。
彼は感情を持っている、普通の人だった。
彼は単なるキャラクターだと言えないような、立派な人だった。
彼は私を気にかけてくれる、優しい人だった。
彼はこの世界で最初に出来た—————大事な大事な仲間だった。
『どうかしたのか?こんなところで腰を抜かして。』
忘れない、彼が私を忘れようと、林檎がなんと言おうと、私は彼を、この世界での生活を忘れない。
「佐久間君っ…」
わがまま1つ位叶えたって良い…かな。
泣きたい気分だから。
佐久間君に抱きついて、温もりに埋もれて、思いっきり泣かせて・・・。
*
清羅は光の粒に包まれて消えてしまった。行かないでほしい、とは最後まで言えなかった。
……気持ちは、届いただろうか。
「…あいつの事だ、またひょっこり帰ってきそうだな。」
忘れないさ、俺だって。大事な仲間、だからな・・・・・・・。
「…記憶が消せないなんて、まさかそんなに強い繋がりを短期間で…?」
?誰かの声が聞こえた気がする。振り返っても、誰も見つけられなかったけど。
*
「…」
あれ、何したんだっけ。
泣きたくて泣きたくて佐久間君に抱きついて、林檎が迎えに来て、消える直前…。
そっと最後に彼が触れた部分へ右手をのばす。瞬間、全てを思い出し久々に帰ってきた部屋の中で思わず叫んだ。
「バッ……バカーーーっ!!!!!!////」
忘れない、忘れたくても絶対に無理。
私のファーストキスを奪った佐久間君なんか、(ゲームの中で)皇帝ペンギン1号を打たせまくってやる!
*おわり*