二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 暗殺少女はぬいぐるみを抱えて想う、 ( No.495 )
- 日時: 2012/03/16 19:10
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)
+attention+
・オリキャラと神童君
・設定は少し昔、ヨーロッパに暗殺一家が実際に会ったかなんて知らない。←
・暗すぎる
ARE YOU OK?
**
ドアが、ノックされる。コン、コンコンコン、ああ…誰か分かった瞬間に寒気が走った。嫌だ、出たくない。掛け布団にくるまりながら、目を閉じる。もう嫌だ、こんな場所にはいたくない。惨劇を作るなんて仕事は、もうしたくないのに。
「出なさい、ヴィエルジェ。仕事よ!」
うるさいっ…もう私は嫌なの!
耳と目をふさいで何も見えないように知らないようにするけれど、あの人の声は何もかもすり抜けてしまう。
あの人が、また私を呼ぶ。
鮮明に蘇る、いくつもの紅い光景。色々な匂い。
数年前、捨てられていた私はヨーロッパに住むとあるお金持ちに拾われた。
豪華で暖かな部屋と食事を与えられ、今もそれは変わらずある。けれど、その代わりに私は随分と厳しい特訓の様なものを強いられた。この家に住む人の生業の為に必要なものだとは全く知らずに。身体能力が必要なその生業は、暗殺。去年13になった私は、とある男の人の家へ侵入し、瓶に入った気体を充満させるという働きを命じられた。
そして私は、初めて人を殺した。
事実を知った翌日、私は泣く事と、頭が壊れるのではないかというほど考えることしかできなかった。受け入れられなかった。
考えてみれば、そう…鍵がかかった窓を開ける技術も、部屋へ音をたてず侵入する移動方法も、すべて特訓から身につけたもの。あの厳しすぎる特訓は、人を殺すためにやっていた。この手で、この足で、体で、何人もの人を殺す。
「出てきなさい。」
ナイフ、銃、毒、いくつもの凶器を使って…今度は誰を殺しに行くの?
幼いお金持ちの家の男の子、綺麗な女の人、賢そうな男の人、おじいちゃん、おばあちゃん。
一瞬で終わったり、恨めしそうな視線を向けたり。
そして私は思う。
こうすることが、私の定め…運命なんだ、って。
暗殺をこなす事、それが私の生きる唯一の道。客観的に見ればしっくり来るから。暗い顔の人が、嘲笑って死体を見るの。
嫌だ嫌だ、って言っても実際その時になれば何とかなるもの事実でしょう?
たとえその後に、後悔する日々が続いても…この家を追い出されてもっと良い生活が出来る保証もないんだから。
「…今出る。」
タオルで目の周りをこすって、立ち上がる。
何の変わりもない日々。ハプニングとかが起こってくれたらいいのに。そうしたら、そうしたら…。バカ、人を殺める以外私に何が出来るの。料理とか掃除とか買い物とか、普通の女子がする様な事を何一つ他人任せでしてこなかったんだから。
ドアノブに、手をかける。刹那、ドアの向こうで何かが倒れる音。音からして…私を呼んでいたあの人?
「…な、に…?」
思わず後ずさる。あの人はこの家の奥様、体術は相当の腕前。その奥様が倒れた…?誰の仕業?
ドアが開いた。ギギギ、と錆びた蝶つがいが音を立てる。
「っ!?」
・・・知ってる人だった。
つい先日私が殺めに伺ったとある家の息子さん。真剣な眼差しで私を見つめて、怒っているのか身を奮い立たせているのか…前者だよね。こんな場所にわざわざ来たって事は、私が殺したんだって、自分の父親を殺めた人だって事くらい分かってるだろうから。
髪の毛にウェーブがかかったお金持ちなお坊ちゃま、に見えてあの人を倒したんだから相当大事にされたんだろうな。
…色々な意味で。
「…貴女をわが家にお招きせよ、と。」
「?なん…」
息をのむ。その男の子の格好が見覚えのあるものだったから。…警察関係者のバッヂ。
「…もしかして、」
「それ以上は言わない方が良い。」
「!?」
「貴女が想像している物ではないだろう、そして…言わない方が身のためだ。」
瞳に、哀しさが揺れている。
この人は私が何を言おうとしたのか、そして私が誰なのかを知っていた。そして近づくたくさんの足音。男の子の表情からして警察関係の援軍だ。城は包囲される、そして…そして、全てが終わる。悟った瞬間、涙が頬を伝った。嬉し涙かどうかは分からない。
「…俺の一家も、暗殺を生業としていた。」
一歩近づいて、男の子が言う。
「だから…だから受け止めるしかないと思っていた。」
「「父の死を。」」
彼の言葉を先に言おうとしたら、声が重なる。
蘇る先日の一件。あれは、何だか後味が悪かった。
『お前は…』
窓から侵入してきた私を見て、彼の父親は臆することなく呟いた。静かに目を閉じて、その目尻に光るものが見える。
今更泣くだなんておかしい。暗殺一家の頭首が、自分の死に際に泣くの?
その部屋に仕掛けられていたトラップを避けながら、射程距離内に入る。そして暗い顔の私は、言う。
『私は、地獄への使いです。』
笑顔で。
引き金を引いて、命が散った。
それで、仕事は終わらない。無事に部屋を出て城へ帰還して、報告をして…家に帰るまでが旅行とか言わない?
だから私も早く部屋を出ようと窓へ足をかけた、直後。
『!…お父様、』
ドアの隙間から中を見ていたのは、紛れもなくこの男の子で。
視線が合うと、私と同じ黒い瞳には何も映っていないのが…どこか哀しくて。俯いた彼は、何もしてこなかった。
「貴女は、昨日何をしたのか…分かっているのですか。」
「暗殺一家の頭首を射殺。」
私の答えに、彼は目を見開いた。そして首をゆっくり横に振る。違う、と答えを否定しながら下唇を噛んでいた。
そっと、私は耳をふさぐ。気付いたから。
「貴女は、自分の父親を殺したっ…!!」
耳と目をふさいで何も見えないように知らないようにするけれど、あの人の声は何もかもすり抜けてしまう。
あはは、まるで私は人形ね。
ねえ私、もうボロボロなの。早く捨ててよ。
** FIN **