二次創作小説(映像)※倉庫ログ

気付いてしまった気がした。 ( No.511 )
日時: 2012/04/04 23:37
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)

「いっけない忘れ物!!」

 まさか、まさか肝心な今日に限って!今日は演劇部で次の劇での配役を決める日なのに!朝練で配役を決めて台本が配られる…けど、今はまさしく朝練に向かう途中。何で上履き忘れるんだろう…仕方ない、戻らないと。
 道をダッシュで引き返す。1分くらい走ったところで(もうジョグのペースだぁ…)、前から誰かが歩いてくるのが見えた。あー、私は遅刻しそうなんです道開けて…と思った直後、何かが顔に投げられて反射的に…。

「あぶっ!」
「引っかかったな…☆」

何「あぶ」って。我ながら変な声。
 そしてその声を出させた本人は近所の倉間典人…先輩。誕生日的に私の方が1つ年下だけど、その差はわずか数日。近所だったのもあって保育園の頃からの付き合いがある、いわゆる幼馴染。で、サッカー部の典人(先輩つけるのめんどくさいなぁ)は今日朝練が休みだったとは聞いた。…だけど、上履きを持ってきてくれるとは思って無かった。

「忘れ物。お前ん家の母さんに渡されたから。」
「…はー、助かったぁ。ありがと、典人。」

上履き袋を抱きしめて、心の底からの感謝。
 だけど疲れた。持ってきてもらって悪いけどせめてもう少し早かったら、きっと朝練に遅れる事は無かったよ。絶対遅刻、もうスタミナ切れ。遅れるなら堂々と遅れていこ。ゆっくりまったり、日直で少し早く登校する典人にあわせて歩く。

「…お前、朝練は?」
「んー、間に合わないから歩いていこうと思って。今日は劇の配役決めるって言ってた。」
「何の劇やんの?」
「…何だっけ。ファンタジーな感じだった気がする。」

覚えてない!まあ、遅れたらいる部員で適当に決めてくれるだろうし。脇役にでも配置されるでしょ!1つ気がかりなのは、演劇部の部員の少なさ。男子不足で脇役に外から借りてきたりするけど…。

ま、何とかなるでしょ!



「よろしくね、椎名。」
「部長、ヘルプミー。本当にこれ困ります。」
「朝練遅れてきた罰。」

 そう言われたら反論できないけど…故意に遅刻したけど、だけど主役を遅れてきた人に押し付けるなんて!!台本は白雪姫…阿呆、小さい演劇部で何やろうとしてるんだ。小人役で足りなくなるのは目に見えてる。で、白雪姫の主役というと白雪姫。私(名字が椎名)、その役任されました。えーと、小人の家に行って毒林檎食べて倒れるんだっけ。王子様とか居た様な気がするけど、あの演劇部にその役をやりたがるような男子はいないから適当にスルーなんだろう。

「…とりあえず台本見てみようかな。」
「で、結局何の劇だったんだ?」
「白雪姫です、典人先輩。」
「俺もいるよ〜」
「あ、わ浜野先輩!?」

声からして典人だけだと思ってたら、サッカー部の浜野先輩もいました。いけないいけない…2年生は仲が良いから時々一緒に居るんだよね、うん。とりあえず台本は一緒に見る事になりました。2人とも釘をさしておけば言いふらす人でも無いからね。
 表紙をめくってみると、メモが1枚挟まってた。文字からして部長の物…何々?

「王子様役はがっしりやるので、適当に選んでおいてね☆」
「部内で決まって無いって事?演劇部男子やる気無いねー。」
「…待て、椎名お前に決定権があるって事はまさか。」
「…私白雪姫役。」

知ってるよ私相手に王子様なんて嫌だって事だよね、はいはい分かってるけど。部長も部長で何、軽すぎるでしょ。この劇やるのいつだっけ、あ、何かの余興的な感じだったな。成程本腰入れてないんだ、ふーんそっか、私の相手も白雪姫も適当なんだ、あーそっか納得だ。

「しーなー、それでどうするの。」
「…男子の配役決まってる。これ相手外から借りるしかないって事か。…正気に戻れ。」

バゴンッ、と豪快に台本丸めて叩かれました。

「うー、痛ー。ああ!典人先輩いるからサッカー部から借りられますね男子!…でも相手私だからアンバランスかぁ。」

男子が華やかでも、姫が私じゃあ釣り合わないし。目立たない方だからね、私は。勉強も運動も顔もスタイルも。

「…演劇部のお前は知れてる方だろ、ほら男子どうすんだよサッカー部なら俺から言えるだろ。」
「霧野とかいかにも姫な奴もいるけど〜」
「霧野先輩は勘弁して下さい。」

私よりも綺麗な王子様なんて、姫・王子の関係からしてダメだと思う。盛り上がりはしそうだけど(笑)
…それに先輩に悪いしなぁ。

「…タイムアップ、また昼に聞きに来てやるよ。」

うー、優しい。典人の幼馴染で良かったよ、私!

「…」


**

 俺の幼馴染はどんくさい。だけど何も出来ない訳では無くて、演劇の練習の時は人格が変わる。恐ろしいほど熱が入って、本番では本当に役になりきる事が出来る。だからアイツが入ってからの演劇部の劇は、今までとクオリティが違う。なのに自覚が無いから、今朝みたいな事になる。別にアイツは悪くないと思う。普通に女子だし、逆にアイツの事だから白雪姫になったら……綺麗だと思うし。

「っ!?」
「で、倉間また椎名の所行くの〜?」
「?椎名って演劇部の1年か?」
「お、神童じゃん。」

いやいや、さっきのは一般論だ忘れろ!!

「そ、椎名が今度の劇でお姫様役やる事になって相手探してんの。で、幼馴染の倉間が手助け。」
「?倉間がやれば良いんじゃないか?」
「「…」」

浜野の説明を聞いた神童が、さらりと…投下した爆弾。

「確かにそりゃそうだ。」
「他の男子に頼めるなら、倉間自身がやっても…」
「それが手っ取り早いかもね、早速椎名に聞いてみよ〜♪」

…俺が?俺が王子様役?はははは、そんなの勤まる訳が…。


「典人先輩が良いなら、それで頼みたいです…私も。」

「しいなぁぁぁぁ!!!?!///」
「ばっちりキスシーンあるからね、頼むよ倉間君☆」
「貴様演劇部部長!!」
「え、私そんなのしたこと無いです…」
部長「椎名君、君のソウルならファーストキスを演劇に捧げられるね!?」
倉間「おまっ…何て事言ってんだ!!!//」
部長「いや、倉間君椎名君のファーストキスが誰かに取られても良いのか!?」
倉間「………って何考えてんだよ俺、そんなのアイツの勝手だろうがぁ!!」

何なんだよ!今更幼馴染の恋愛なんてどうでも良いだろうがぁ!!!

「……典人、え〜とその、やって★」
「人に物事頼む時はきちんと。」
「うん、やって★」
「…これキスとかちゃんとやるって台本に書いてあったぞ?」
「典人となら全然構わないけど、あ、そっか典人彼女いるから困る?」
「俺に彼女居たことねーよ。」

…さらりと言ってしまった気がする。

「倉間君ドンマイ☆」
「貴様部長…!!!」
「じゃあ、これ台本だからよろしくね!」
「あっ、おい椎名!」

押しつけられた台本が恨めしい。思わずため息が漏れる。何だ、めんどく…あれ。


『典人となら全然構わないけど、』


…さらりと、相当な事を言われた気がする。




「ーっ!!!////」




**気付いてしまった気がした、自分の想いに**
消去予定。