二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Bad World* sixth stage  ( No.539 )
日時: 2012/05/04 17:43
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)

「「!?」」


「俺の分まで、苦しめ…」
「?!!やめて下さいっ!!!

























豪炎寺さんっ!!!!」





〜数刻前

 豪炎寺が、立っていられなくなった。顔は真っ青、目はうつろ。確か頭が変なんだっけ。頭の調子を良くする方法なんて、俺は知らない。風丸も鬼道も知らないだろうし、知ってても実践できると限らないから。…この島じゃなあ。
 だけどその時、良い案が浮かんだ。こうすれば俺達は勝てる。景品が何だったか忘れたけど、景品を手に入れる事が出来る!そう思ったら、すっげー嬉しかった。よし、それじゃあ早速実践してみよう。近くには木材が散らばってるし、木なんて森の中だからいくらでもあるし、紐は持ってるし、刃物なら風丸の武器が短剣だ。俺は豪炎寺を縛り上げてみた。少し離れて確認してみたけど、遠目だと良く分からないなあ。じゃあ、近くの木を明らかに人が倒したんだと分かる様に倒しておこう。この島に愛着のある瑠璃花なら、見に来ないなんて事はないだろうし。

「え…んど、」
「ああ、豪炎寺。歩けそうか?」
「…悪いが、歩けなそう、だ。」

そこでようやく、自分の状態に気付く豪炎寺。どんだけ頭痛いんだろ、俺には想像もできないけど。
で、豪炎寺は歩けないらしい。悪い?まさか。逆に好都合だ。

「…動けないなら、オトリになってろよ?」
「!!」

瑠璃花は、コイツが殺されそうになったなら…ハハ、どうするんだろうな?楽勝だ。驚いている間に、簡単に殺せる。遊ぶ余裕だってある。そう思うと、笑いがこみ上げてきて仕方無かった。別に豪炎寺だって平気なんだ、敗者じゃないんだから。外傷が無いし、貧血だといっておけばいいだろ?

「じゃあな、豪炎寺。」

ライフルを右手に、一応一時の別れを告げながら草むらでターゲットを待つ。少し離れた所には風丸と鬼道も待機してた。

…それにしても、景品はなんだったっけな。

『…これを見ても?』

魁渡の言葉しか、思い出せない。
 何だったんだっけな…ま、忘れるなら大したものじゃなかったんだろ?…自分が自分で無くなるなんて事は分かってる。大したことじゃない、別に構わないとも思える。〝生き延びるためには、殺すしかない。〟誰かに言われたその言葉が与える刺激が、心地良い!ドキドキする、どうしたら良いのか考えて実践して、今の所全部からぶってるけど、そこもまた楽しい!
 狂ってる?最高の褒め言葉だ。



「ッ…」

 銃を所持しているキャプテンに近付くのは困難を極めめした。風丸さんの行動パターンは大体把握出来ていたから浄化は簡単で、鬼道さんは驚いている隙にプシュッと。らだあれだけで終わらない様な気がしてまた怖い…けど、今はキャプテンの浄化に集中しないと。ただ銃を敵にした事はなく、しかも二丁所持しているから両手で撃たれると何も出来ません。
 丁度そこに現れたのは、月乃さんとセカンド雷門同盟の皆さん。キャプテンがそちらに気を取られている間に、スプレーを吹きかけます。倒れて木に頭をぶつけそうになるキャプテンを支えて、そっと木に寄りかからせると、眉を寄せていたものの数秒したらうっすらと目を開けました。

「瑠璃花…?」
「キャプテン、良かったっ…!!」

「円堂、大丈夫か。」
「鬼道も…あれ、俺何を…」

覚えてない…でも少ししたら思い出すかもしれません。
 鬼道さんと風丸さんは正気に戻ったようです。私達がキャプテンを囲んで出来た影に月乃さんとセカンド雷門の方々も加わります。

「えっと…瑠璃花、さん?俺、神童拓人といいます。」
「あっ、はい!初めまして神童さん。」

グレーでウェーブのかかった髪型の神童さんは、10年後の雷門中サッカー部のキャプテンだそうで。良かった、セカンド雷門同盟の皆さんは無傷みたいです。作戦について話してください、という神童さんの言葉に思わず涙ぐんでしまいました。協力して下さる人がこんなにいるという心強さが、嬉しくて。

「分かりました、まずあの手紙に書いてあった主催者…」

「どけ。」


突然、背筋を走る冷たい気。振り返ったのと同時に、何かの柄で吹き飛ばされて。
体制を整えて着地すると、キャプテンの周りにいた皆さんが全員吹き飛ばされていました。でも、キャプテンはあの木の幹に寄りかかっています。そしてその前に立つ——豪炎寺さん。浄化が必要無いと勝手に判断していた私の、…ミスでした。きっと豪炎寺さんは恨んでいるのです、自分を縛り上げた〝狂ったキャプテン〟を…。

「「!?」」
「俺の分まで、苦しめ…」

豪炎寺さんが斧を振り上げ、ニヤリと笑ったのが遠目でも見えました。
違う、違う!!キャプテンは何も悪くない、何もっ…それなのに!!

「?!!やめて下さいっ!!!豪炎寺さんっ!!!!」
「ご…えん、じ?」

斧が振り落とされる、私は怖くて何も出来ない。
豹変してしまった豪炎寺さんが、何も知らないのに怪我するであろうキャプテンがいるというのに。

「くっ…そぉぉぉ!」
「!」
「倉間っ!!」

刹那、























赤い血が空を舞った。






「倉間さん、あの…」
「俺だって円堂さんに死んでほしくなかった。だけど、もっと早く動けていれば…」

 キャプテンは生きています。豪炎寺さんは倉間さんの武器である弓矢で左腕を負傷し、どこかへ行ってしまいました。もしあの時、弓矢で豪炎寺さんの重心がずれ、キャプテンの左肩に斧が下りなかったら…キャプテンは即死でした。ですが、今も状態は良くありません。止血が上手くいかないようで、月乃さんが苦闘中です。倉間さんの視線がキャプテンへ。すがる風丸さんと、応急処置をする月乃さん。

「ーっぁ、あ゛…」
「円堂…!!」

月乃さんが私の方を向き、首を横に振りました。これ以上、処置は出来ないという事でしょう…キャプテンに巻かれた包帯から、血が滲んでいます。松風さんが視線を逸らし、地面を見つめていました。

「瑠璃花さん、どうしたら良いんですかっ…」
「このままだと、円堂は助からないっ!!」

「——!!」

どうしたら、キャプテンを助けるにはどうしたら…?


「早く、ゲームを終わらせる事です。」
「!月乃…」
「ゲームを終わらせる権利があるのは主催者のみ。私達は主催者を討ちにいきます。鬼道さん、風丸さん手を貸して下さい。」

月乃さんの言葉には、キャプテンが敗者であるという意味が含まれていました…。確かに、もう動くことはできません。

「…瑠璃花、行こう。風丸は残れば良い。」
「鬼道さん!?」
「…そうさせてもらう。」

風丸さん…
立ち上がった鬼道さんを見て、風丸さんは笑顔を浮かべました。そう言えばキャプテンの幼馴染だと聞いた事があります。心配なのかもしれません。放っておけないのでしょう。

「頼む、豪炎寺の事もゲームも…」
「ああ。」


そして、私、月乃さん、セカンド雷門同盟の皆さん、鬼道さんは主催者がいると思われる場所へ向かいました。





 洞窟の中、その視線は両手首を縄で縛られ身動きの取れない少年に向けられていた。吊るされた状態、自由な足にも力は入っていない。ローブを纏った少年は、彼を見て笑う。髪色も表情も、フードで隠されていた。それでも吊るされた少年には分かる。ローブの彼は今、綺麗に笑っているのだと。

「…く、」

吊るされた少年は反抗の炎を翡翠色の瞳に宿らせた。ローブの少年はその声と炎に応えるようになあ、と呼びかける。

「気分はどうだ?〝霧野蘭丸〟。」




『離反者→鬼道有人・風丸一郎太・松風天馬・剣城京介・倉間典人』
『敗者→円堂守』

*続く*