二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 姫佳様リク☆みーつけたっ!!+最終話+ ( No.563 )
- 日時: 2012/05/23 00:44
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)
「…いないな。」
てっきり図書室に居ると思っていたが、誰の姿も見当たらない。高い本棚に隙間なく詰められているたくさんの本が、不必要だと思われるほどの広い空間を狭く思わせる。しんと静まり返った図書室に、俺の足音だけが響いていた。
見つかっていないのは、マークと瑠璃花。俺は瑠璃花を探して図書室に来たが、人の姿も気配すらない。恐らく、ここには俺以外誰もいないのだろう。となると、瑠璃花は一体どこにいるのか…ふと目にとまった第二次世界大戦の本を手に取り、めくってみる。この図書室にあるのは英語で書かれた本ばかりで、この本も例外ではなかった。
「…ん?」
本を戻そうとすると、後ろの壁にわずかな隙間が出来ている事に気付く。一見何の変哲もない壁だが…押してみれば、音も埃も立たずに開いた。その先は薄暗い、石造りの通路。目をこらすと、両脇にドアが見えた。
「…隠し扉、という訳か。」
音も埃も立たなかった、つまり最近開けられたという事だ。瑠璃花が開けたという可能性もゼロでは無い。
俺は本を棚に戻して、通路を進んでいった。
『ティアラ、この部屋は?』
『うーんと…あ、思い出した!ここにはお客様から貰ったりした大切な物とかが仕舞ってあるんだ。』
『だからこんな隠し通路に…』
『そう、盗まれたら大変だって。有人は遊びに来て良いからね!』
『…このセキュリティなら、盗まれる心配は無いんじゃ…』
そう言えば、この部屋には来た事がある。この別荘に来た時、ティアラに案内してもらった部屋の1つだ。クラリス家の別荘などに来た有名人や財閥関係者が贈った貴重な品物の他、その人の肖像画や写真も何枚もあった。…大切にされている印象は無かったが。
「一応見ておくか。」
ドアを開けると、明かりが点いているらしく、視界が一気に明るくなった。ああ、ここにいたのか。
「!鬼道さん‥」
振り返った瑠璃花。声をかけようとして、彼女が見ていた物が視界に入る。
——1人の女性がバルコニーから見守る中で、4人の子供たちが噴水で遊んでいる1枚の絵。ただ、その子供達も、女性も全員有名人だ。流星姉弟と双子、そして橙色のロングヘアーが風に揺れる女性は…。
「瑠璃花、この人は…」
「…私の母です。」
流星桜花、確か……瑠璃花に聞いた話では一家心中しようとした時、薬によって死亡したと。
瑠璃花の胸元で握られている右手は、震えていた。表情も寂しげで、やはり母親の死が辛かったのだと推測できる。俺も分からない訳ではない。
「瑠璃花…」
「っ…私は思い出したからと言って、いつまでも立ち止まりはしません。」
深呼吸をして落ちついてから、ジャージの胸元を握りしめ、ゆっくりと瑠璃花は自然な笑顔を作る。するとジャージの下に隠していた何か——ペンダントを外に出して、そっと右手で覆った。俺の脳裏に、少し前の思い出が蘇る。
——南国の暖かな風と、舞う蛍。
「今私には、鬼道さんが居ます。それに、」
——沖縄で俺が買って渡した、ホタルガラスのペンダント。
顔が少し熱くなるのを感じつつも、やはり少し嬉しいという思いはあった。
「もう過去にたくさん泣いてお母さんの話をしました…だから、私は、」
“これからは、笑ってお母さんの話を出来るはずです。”
「…なら、俺に話を聞かせてくれないか。」
「はいっ!」
笑って返事をする瑠璃花の胸元には、碧いガラスが揺れる。
…やはり、彼女には笑顔が合っている。笑顔を見せながら話をする彼女を愛おしく思いながら、俺もまた微笑んでいた。
**
「マーク、みーつけたっ!」
その声が降ってきたのと同時に肩をたたかれて、突然の事に驚いたマークが肩を震わせる。それまで見てたアルバムが音を立てて床に落ちて、広げられたページには何枚もの写真。手に取ると、私のアルバム。
「…もしかして、隠れてる間ずっと見てたの?」
「ティアラがなかなか見つけに来なかったからな。」
「だってマーク、いつも隠れる時この部屋だから後でもいいやと思って!」
それは寂しいな、と苦笑するマークの隣に座る。久し振りに見たアルバムを最初のページから見る事にした。ここは私の部屋…と言っても、別荘で長期滞在する機会もなかなか無いから(静かで仕事がはかどるというラティアは良く来てるらしいけど)あまり物は置かれてない。ただ別荘での思い出として写真は良く撮ってたから、アルバムは1冊埋まってる。
それがさっきマークが見てたアルバムで、小さい頃の私とラティアと一緒に、マークやディランが色んな表情で写っている。
「懐かしいなぁ…」
気付けば、笑顔になってたんだ。
初めて別荘に来た時、船に乗ったら大荒れでマークとディランが顔色を悪くしながらもピースをして撮った1枚。門の前で、笑顔の1枚。すごく豪華なクレープを見てすっごい笑顔の私と、目を丸くするマーク。マーク、すごいびっくりしてるなぁ…ページをめくりながら、小さな笑いがこぼれた。
「わぁっ、マーク覚えてる!?ここでっ……マーク?」
プール(大浴場)の1枚を指さして声をかけると、反応が無かった。マークの顔を覗きこむと、慌てたように何でもないと顔をそらされる。…何だろ。追求しようか少し考えて、結局軽く流すことにした。
アルバムは、とうとう最後のページ。
「ティアラは変わらないな。」
ほら、流してもマークはすぐ声をかけてくれるから。
「そうかな?」
「でも成長してる。昔はあの本棚に全然届かなかったけど、今は余裕だ。」
指差された本棚は、確かに小さい頃は手を精一杯延ばしても届かなかった。別に入ってるのは難しい本だから取る意味もなかったけど…何となく立ってみたら右手が簡単に触れる。本当だ…私、背伸びたなぁ。
「でもマークも背伸びたし…もっとカッコ良くなったよね!」
「・・・・・・」
…あれ、どうしたんだろこの沈黙。
よく分からない不安が芽を出して、マークと同じ目線になる様にまたしゃがんだ。すると、急に暖かくなって。
「…ティアラ、」
「なっ…何?」
ビックリして、声が上ずった。だけどマークの腕の中が暖かくて、離したくない今の幸せ。
「これからも、ずっと一緒にいてほしい。」
優しく響く声と、私が考えてた言葉が重なった気がして。
これは偶然でも奇跡でも無い、必然って言葉が合うんだと思う!
「私も同じこと言おうと思ってたのに!」
( これからも、ずっと笑顔でね! )
**
「瑠璃姉とティアラ、見つかったのか…?」
「何にも連絡ないなー。」
((…悟れ、サッカーバカ共。))