二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 姫佳様リク*江戸時代でも超次元? ( No.626 )
- 日時: 2012/07/30 15:43
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)
第一章
{協和音と不協和音}
「きゃあああーっ!!!!」
・
・
・
「ん……?」
悲鳴が聞こえた。それも女子の高い声で…。
だんだんとクリアになっていく、少女——ラティアの感覚。冷たい、体が触れているのは石だと分かって混乱しながら目を開ける。耳に聞こえてくるのは川のせせらぎ、そして…何者かが滑り落ちてくる音。
「?!」
「!!あっ、危ない避けてっ!!」
ラティアが倒れていたのは川のそばだった。そこに違和感を感じつつも、優先するべきは土手から滑り落ちてくる少女に手を貸す事。
「!?」
避けてと言ったのに、滑る土の上で自分を止めてくれたラティアに少女は目を見開いた。
ラティアは少女の着物を汚さずに済んだ事に、安堵の息を漏らす。
「あ、ありが………と…、!!!」
「?」
が、少女はラティアを僅かに見上げた直後、体を突き飛ばし…その衝撃でバランスを崩しまた滑る。
「……!?」
ラティアは倒れずに済んだものの、今度は間に合わない、と思った刹那。
突出した石につまづいた少女の体が僅かに浮かび、その拍子に体は空中で回転した。少女は無事に小石の川岸に着地し、ホッとしているように見える。
「…あの身のこなし…」
ラティアは、着物を全く知らない訳ではない。日本の伝統的な衣服で、洋服より動き辛い…しかし、目の前の少女は。
そして、少女は先程自分を突き飛ばした。
心当たりがないラティアは少女に近付き、足を止める。今度は特に警戒する様子を見せず、俯いていた。
「…あの、さっきはありがとうございまし…た、」
「それより、なぜさっき私を突き飛ばしたの?」
率直な疑問を、橙色の髪の着物少女に尋ねる。すると少女はバッと顔を上げ——瑠璃色の瞳がラティアを映した。
「!瑠璃k(「日本語が分かるんですか!!?」
「えっ…?」
瑠璃花、と呼ぼうとしたのはラティアの知る友達だと思ったから。しかし、その少女はまるでラティアを知らない様だ。
その事に困惑していると、相手も戸惑っているらしく、そっとラティアに尋ねる。
「…あの、外のお国の方…ですか?」
*
「……どうなってるのよ…」
瑠璃という少女の予備の着物を着て、ラティアは江戸の町へ向かう事になってしまった。
『これが洋服ですね!私初めて見ました…!!』
『?あの…今西暦は…』
『何言ってるんですか、1863年ですよ?』
「江戸時代…ね…」
瑠璃は外国人を初めて見て、驚きから咄嗟に突き飛ばしてしまったと言い、ごめんなさいと頭を下げた。態度から彼女の言う事を嘘とは思えず、理由は分からないがタイムトリップしてしまったのだと気付く。瑠璃はラティアを貿易の時日本に来たアメリカ人と思ったが、そう尋ねた時の困惑した様子から違うのだと察し、気付いたらここにいたというラティアに頭を悩ませる。
「う〜ん…とりあえず、どうしましょうか?」
「もしかしたら知り合いが来ているかも…。江戸の町をさがしたいわ。」
「お知り合いですか…騒いで捕まっていないと良いのですが…」
ラティアは姉を思い浮かべ、来ていない事を祈る。この時代にはクレープが無いのだ、騒いでも丸く解決できそうにない。
瑠璃の住む長屋は江戸の町の外れにあり、少し行った先から賑わう声がラティアには聞こえてきた。するとただいま、と瑠璃が長屋に入り、彼女に次いでラティアも長屋に足を踏み入れる。
長屋は江戸の木造集合住宅。それぞれ部屋が分けられているが人々の結びつきは強く、瑠璃の挨拶に対しても男が部屋から顔を出して、今日は早かったなと返していた。
ラティアは長屋を進んでいくにつれてはっきりとしてくる嫌な予感に顔をしかめながら、瑠璃の真後ろについて行く。
すると瑠璃が足を止め、あそこが私の住んでる場所です、と振り返った。
「ちょっと騒がしいのがいますが、町の事は結構知ってて、人捜しに役に立つ情報を持っているかもしれないので…」
顔合わせしておきましょう、と瑠璃は言うが、“騒がしいの”という単語に思い当たる人物が浮かびラティアは眉を寄せる。
瑠璃はその様子に気付かず、部屋を開けた。
「ただい(「お帰り姉ちゃん!」
ロケットの如くとび出してきたのは、ラティアとは犬猿の仲である瑠璃花の弟…。
「魁…渡。」
「わっ…魁太!飛びつくのは危ないからやめてって…ラティアさんごめんなさいっ、大丈夫ですか?」
魁太、と呼ばれた少年が飛びついた衝撃で瑠璃はたたらを踏み、ラティアが背中を支えた。
少年は姉の後ろにいる、姉の着物を着た見知らぬ少女を見つけて睨んだ。…瑠璃の腰に抱きついたまま。
「平気よ…」
「ラ…?誰?米人か?」
「うん、帰り道で足踏み外しちゃって土手滑っちゃったんだけど、ラティアさんが助けてくれて。」
「“また”滑り落ちたのか!?」
また、という単語に苦笑いする瑠璃。ラティアはドジではないかという予想が当たり、嬉しいどころか呆れるしかない。
「じゃあ米人さんありがとな、姉ちゃんの着物汚れないで済んだ。」
(魁太がお礼言った…!!)
姉は言葉だけ聞いてそう思ったが。
実際魁太は睨んだままであり、ラティアはその顔が彼女の知る魁渡とそっくりである事に気分を悪くした。
「貴方…姉に抱きつけるからそう言ってるの?」
「え!?」
「………剣の相手してもらう時間が増えるからだ。」
「魁太っ、その間は何!?」
表情は変わらなかったが、妙な間に瑠璃は戸惑う。
魁太は瑠璃から離れ部屋に入る。瑠璃はラティアを手招きして、彼に続いた。
質素な部屋だった。その珍しさにラティアは辺りをきょろきょろと見渡し、不便そう、と心の中で呟く。
「おい、お前!」
「何?…刀?」
魁太の声に振り返ったラティアの目の前にあったのは、鞘に収まった立派な刀だった。
「俺は強い武士になりたいんだ!だけどここは街の外れ、強くなりたくても相手が姉ちゃん位しかいない。なのに姉ちゃんは良く着物を泥まみれにして返ってきたり、忘れ物して帰りが遅((「かっ、魁太!!」
「だから早く帰って来たのが嬉しくて抱きついたって事なのね、ワカッタワ。」
「…姉ちゃん俺この女キライ。」
「まだ私の名前覚えてないの?ラティアよ、ラティア。」
「そっちこそ俺の名前間違えて覚えんじゃねーぞ、魁“太”だからな!」
(…え?この2人こんなに相性悪いの?)
弟が女子に対し優しくないのは分かっていたが、こんなに酷いのは初めてで瑠璃は混乱する。
どうしたら収まるか思考を巡らせていると。
「どうせ貴方剣の腕も大した事無いんでしょう?」
「は!?俺そこらの下級武士より強いんだからな!!相手しろ!」
喧嘩は進んでいて、魁太が投げた刀をラティアが受け取っていた。
「魁太っ、久遠さんに失礼!それに今日はあの方が帰って(「お前くらい倒してやる!」
(ダメだ…全然聞いてない!!!)
久遠、というのは瑠璃が帰って来た時に声をかけてくれた男性で、武士である。
「(あの方…?)…平和的じゃないわね。」
「ラティアさんも魁太の喧嘩に乗らなくても…」
「ここの“魁渡”は一回痛い目見せれば大人しくなるかしら…」
「え!?」
…瑠璃にはこの喧嘩を収める方法が思い浮かばなかった。
武器は、竹刀が少しあるだけ。長屋の住人・久遠という武士は前に魁太が竹刀で勝っていた。…彼は、弱いのである。
誰も止められない…と冷や汗を浮かべた。
(今騒ぎを起こしたら誤魔化せない…あの方が帰って来られるのに!)
それに外国人であるラティアが誤解される可能性はすごく高い。下手したら捕まってしまう…そう考えて、改めて2人を止めようと瑠璃が一歩踏み出した…その時。
「瑠璃ー、魁太ーっ!」
「「「!」」」
長屋の入口から、誰かが2人を呼んだ。
* つづく *
ギャグ…になっているでしょうか?;;
下級武士の久遠=久遠監督です。←
長屋の住人が必要になって、出て来たのが監督でした…他に思い浮かばなかったです。