二次創作小説(映像)※倉庫ログ

小説NO.1-第5話- ( No.63 )
日時: 2012/08/15 14:36
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

小説NO.1、最終回!!!

〜予告〜


全ては、彼女の手のひらで踊っていただけだった…??

——全ては冷徹なる
「やっと、来てくれたんだ。」
「[血塗られた慈悲]なんて、素敵でしょ?」

——最後の約束は…?
「きっと、直ぐに戻って来ます。」
「ハジメマシテ、そして………・・・サヨウナラ。」




「どうして、気付いてくれなかったの…?」


赤い実の纏う謎、風花の行方、事件の真犯人、そして…——————。



冷たい笑顔は、全てを欺く。
冷たい声は、全てを止める。

彼女が作るのは、幸せか、はたまた地獄への道か。



                      助かる道は、既に通り過ぎた。


*では、最終話をどうぞ*



「あら、風丸君は?」

 理科が始まろうとしていた。授業開始の号令の前に行う生徒の確認で、教師は風丸がいない事に気付く。彼女は円堂に説明を求める様な視線を向けた。2人仲が良い事は全校生徒と全教師が知っている。

「…帰りました。」
全「!!???」

 帰った?、と教師が呟く。通常では有り得ない選択肢、それは円堂にも分かっていた。

「直ぐに、戻って来るって…風丸は言ってました。」

 仲間なのに。
 自分は、その仲間を信じられていない。

「きっと、直ぐに戻って来ます。」

上辺だけでも信じていよう。笑顔で言えたら、きっと少しは嫌な考えが消えてくれる……——。




 走った、ただ1つの疑惑を解決するためだけに。
 風花のことが解決する訳ではなく、その為の1つのステップとして。サンザシ事件のことを理解するステップとして。

「はぁっ、はぁっ…!」

辿り着いたのは、雷影神社。鳥居を見て安堵したのか、急にわき腹に痛みが襲った。切れた息を整えながら、ゆっくりと痛みを落ち着けるように鳥居をくぐる。その先に、小さいながらもさい銭を入れる所があって、そしてその隣に……。

「…サンザシ…」

正確にはヒマラヤトキワサンザシと言うのだと、この前神社の掃除をしている人から聞いた。風丸は木に近寄って幹に右手を当てた。そうだ、この木の少し奥で転落事故があったのだと思い出す。恐らく先生が言っていた女子中学生だろう。

「…サンザシ事件と事故は繋がっていたのか…? ……!」

 気配を感じて振り向く。それは鳥居の辺りから感じた。


「!!!!」

目を見開いた。それは、感じた恐怖に近い気配からは想像できない人物。———彼ととても仲が良い人物。


「ふう、か…?」
「やっと、来てくれたんだ。」

冷たい、背筋が凍るような声だった。にこ、と姫雷風花は笑う。風丸が、一度も見たことの無い笑顔。いつもの笑顔と何処か、違う。

「…お前、事故死した女子中学生だな?」

少し驚いた様に目を丸くして、それから彼女はふふ、と笑った。勇気を振り絞って声が震えない様にして言った言葉に対する返事…風丸は更に恐怖を覚える。

まるで、大した事を聞いていないかのように笑う彼女。

「1つ、聞いて良い?」

一歩一歩、近付きながら彼女は言う。



「どうして、気付いてくれなかったの…?」


「!!」
「ねえ、何で?」

彼女の頬を涙が伝う。風花、と呟かずにはいられなかった。
 あの声、あの表情…全てが記憶の中の風花と一致する。風丸はすべて理解した。彼女の身に何が起きたのか…。例えその考えが普段信じない様な非科学的な事だとしても、それが正しいのだと。そして、自分は彼女を救うチャンスを与えられながらも、それを逃したのだと。

「ふ、」
「もう、遅いよ?大丈夫、貴方達はずっと一緒だから…」

泣いている表情に似合わない冷たい声。ふと、彼女が左手に持っていた何かを投げた。ころころ、と転がるそれを風丸が良く見てみると…、赤い木の実だった。———サンザシ。

「っ!!!」

サンザシの実は、崖の下に落ちた。彼女は言う。そこが貴方の死に場所だよ、と。——風丸は命の危機を感じる。

「最後に教えてあげる。サンザシの花言葉は[慈悲]。でも私が見た感じで言うと、慈悲なんてヒトカケラも無いの。だから血に染めてあげた——、[血塗られた慈悲]なんて、素敵でしょ?」

風丸は目を見開く。そうだ、彼女が…、あの女子中学生が、風花の体に取り付いているのだ。
 と、彼女の右手で何かが光る。目を凝らして見ると、見慣れた柄の果物ナイフ。風花の家で無くなったと言っていた物だ。にこ、とまた彼女が微笑む。涙が光った。

「あ、挨拶忘れてたね。」

ごめん、と心の中で呟く。俺、風花を救えなかった。気持ちに気付いてやれなかった。

彼女が消えた、いや速過ぎてそう見えただけだ。風花はスタートダッシュがいつも速かったな、と心の中で思う。もう抵抗する気なんてなくなっていた。直ぐに自分の顔の下に彼女の顔が見えた。


風丸が知ったのは、体が急に重くなって、何かに貫かれた様な衝撃、落ちていく感覚。
風丸が見たのは、ぼけた絵の中の、慈悲の無いサンザシ。

そして最後に聞いた、全てのピリオド——冷たい声の言葉は。



「ハジメマシテ、そして………・・・サヨウナラ。」




*nice to meet you, and good bye*




「良かったね、あの世で2人はずっと一緒だよ。」