二次創作小説(映像)※倉庫ログ

小説NO.2‐第8話‐ ( No.645 )
日時: 2012/08/16 22:58
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)

「はぁぁ…」

 皆さんお久し振りです、花園詩麗奈です(私の方では1日も経ってませんが)。ファイアードラゴンの初日の練習は終わりました。結果・溜息が出る様な一日でした。私はこれからマネージャーとしてやっていけるでしょうか。私の不手際で涼野さんのユニフォームにドリンクをこぼしてしまい、その騒動でチームの練習時間を大幅に減らしてしまったのです。

「私は、迷惑しか…」

いつもそう。
声に出さずに心の中で呟いて、クッションをぎゅっと抱きしめる。小さい頃から、クッションは欠かせなかった。
——心を落ち着ける働きをしてくれるから。

「……っっ!」

脳裏に蘇らせてしまった、思い出。
無意識の内に力を込めすぎてしまって、クッションが悲鳴を上げた気がした。ハッとして力を緩めると、パスッとベッドの上に落ちるクッション。腕が…震えて、手にぎくしゃくと力を込めて。目を閉じると生温かい物が頬を伝う。

「……照さん…」





『どうしたの、詩麗奈? また、お母様に…?』
『私っ、何も出来ないの…!! お母様の、望む、子に…成れないのっ…!!!』
『…大丈夫だよ、僕は今の詩麗奈も大好き。詩麗奈なら、お母様にも認めてもらえるから…』
『ふぇぇっ…!!』


いつも、慰めてくれたのは照さんだった。
今では解決したその原因。でも今も…私は、あの人に認めてもらえてないと思う。


「…あ…」


シーツが霞んで見えた…私は、また、泣いているみたいで。

「…私って、本当…」




いっその事、本当に照さんが兄だったら良かった、なんて。





「涼野、マジごめん。」
「……」
「ごめんっっ!」

 …これで10回か。背後で両手を合わせて謝っている南雲を振り返ると、呆れた表情をしていた。何だコイツは、周りが見えない馬鹿のくせに。練習が終わってから南雲は全員に謝っていたが、そう言えば詩麗奈は私のユニフォームを洗ってから戻って来なかったな…。

「…南雲、私にはもう良いから詩麗奈の部屋に行って謝ってこい。」
「あー、そうだな…。」

『涼野さんっ、ごめんなさいっ!!』
『…! 詩麗奈っ、悪いのは俺だお前は…』
『そうだ、悪いのはチューリップなんだ気にする事は…』
『ユニフォーム早く洗わないと…ええと、予備のユニフォーム持ってくるので脱いでおいて下さい!!!』

「あんなに慌てなくても良いのにな。」

私と同じ事を思い出していたのだろう、南雲がぼそっと呟く。
あの時、自称兄は困ったような表情をしていただけだった。それに、呆然とする私のユニフォームを無理やり脱がせたのは感心しないな。すぐに予備の背番号なしのユニフォームを持ってきた詩麗奈は、彼からユニフォームを受け取ると洗いに行ったのか、それきり戻って来なかった。

「…恐らく、気を張っていたのだろう。考え直してみれば、今頃疲れて寝てるかもしれない。」
「一理あるな…じゃあ夕食の時で良いか。」

…詩麗奈が去った後、散乱したボトルを立て直す人物に、南雲は睨まれていた。恐ろしいほど綺麗な笑顔で。

『詩麗奈、頑張って作ったんだよ?』

初めてな事ばかりで、きっと彼女は疲れている。

「…涼野、お前の部屋ここだろ?」
「!」

く…まさかチューリップにそんな事を言われるとは…

「…な、何だ睨むなって…」

怯むチューリップ。

「さっきから失礼な事考えてないか?」
「……チッ。」
「何で舌打ちするんだッ!!」

はぁ……やはりコイツは、頭に血が上りやすい様だ。

「お前はどうしてそんなに俺を怒らせるのが得意なんだ。」
「さあな。」
「…………涼野さん、南雲さん、少しお休みされてはどうです…?」

「「!?」」

ガチャ、とドアが開いて眠そうな表情をした詩麗奈が顔を出す。
……え?

「詩麗奈、ここの部屋なのか…?」
「え? はい…何か…?」

ここ俺の部屋、と南雲が指差したのは、私達から見て詩麗奈の左隣。……ん?

「で、こっちが涼野。」
「私、南雲さんと涼野さんに挟まれてるんですね…」
「詩麗奈が間に居たら騒がないだろうと思って♪」
「「お前の仕業か自称神。」」

のほほん、という雰囲気のアフロディがのこのこやってくる。
詩麗奈は本当に眠いのか、目を充血させて……目は、眠気で充血するものだったか?

「……私、今から寝るので、」
「うん、分かった。2人共、大人しくしててね♪」
「ああ。」

……ん?
何か忘れてないか?

「……チューリップ。」
「Σああ! 詩麗奈、午前中本当済まなかった!」
「……練習、お疲れさまでした…」
「「「?!」」」

パタン、とドアが閉められた。
大丈夫なのか、と不安になってしまう程、詩麗奈はふらふらしていた。更に南雲の話も耳に入っていない様子。

「……後でまた謝ると良い。」
「ああ……」

南雲は閉められたばかりのドアを呆然と見つめながら、返事をした。


**

「! 涼野達、詩麗奈とは一緒じゃないの?」
「ん? 詩麗奈、来てないのか?」

 南雲と涼野が夕食をとるため食堂へ行く途中、2人の前方から照美がパタパタとスリッパの音を立てて走って来た。どうやら、まだ詩麗奈が来ていなかったらしい……それで心配をするという事は、2人もまた時間に遅れているという事だが。

「むー、じゃあ涼野様子見てきて。」
「? なぜ私…」
「3分遅刻したから! 南雲は僕と一緒に食堂に行くよ、涼野の分も用意しとくからね!」

ほら、と南雲の腕をぐいぐいと引っ張っていく照美の後ろ姿を見ながら、涼野は少しの間ぽつんとその場に立っていた。

「…行くか。」

南雲が照美に連行されたのは1人で行かせたら道に迷いそうだとかそんな理由だろうと考えつつ、彼は来た道を引き返すのだった。



[pipipipipi]

 目覚ましの音。そっと目を開けて、少し乱暴にボタンを押して音を止めます。体がだるく、頭が重く、起きたくないけれど、起きないと。少し悩んでいると、再び襲ってくる睡魔になす術を無くしてまた瞼が——————。

『——花園、どうして今日遅刻したんだ?』

「!!!」

これは……小学2年生の時の担任の先生。鮮明に思い出す事が出来る、あの時の様子。

『それは……朝、起きられなくて。』
『お母さんは起こしてくれなかったのか?』
『……お母様は、』



“私と関わろうとしてくれなかったから”



「っ……!!!!!!」

最悪な寝起き、と思いながらもなかなか速まった鼓動はおさまってくれない。おさまるまで、泣いてたから顔を洗って…。

「! 何だ、起きてたの……か……」
「!!」

ガチャ、とノックも無しに開いたドア。
……涼野さんに、泣いていたことがばれてしまった……。


* to be continued... *
シリアスになってしまった☆←