二次創作小説(映像)※倉庫ログ

蒼炎様リク*Language of a flower is ( No.657 )
日時: 2012/08/31 15:31
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: r4kEfg7B)

『病院って暇』

 晴れ渡った空を恨めしそうに見上げていた少女の携帯電話が震える。メールの着信で、開くとたった5文字、件名も何もなく正直意味不明なメールだ。差出人はつい最近メールアドレスを交換した、そもそもつい最近知り合った人からだが……。

「病院に楽しさを求めンなよ……」

そもそも病院はつまらない所だ。人間の健康を守り維持する場所であり、日常生活を健やかに送る為の処置をする場所である。だが体が健康になるというのはぼんやりとしか分からない事であり、入院などは特に暇である。病院内で携帯電話を使う事は原則禁止されているため、ベッドで寝たきりを強いられるとテレビ位しか暇つぶしはなく、どこの老人だという話になる。
 そこまで考えて、少女——真希は首を傾げた。差出人である詩麗奈は何故このようなメールを? 簡単だ……入院、という二文字が真希の頭に浮かぶ。

「……チッ、」
「詩麗奈さぁ、車と接触しちゃって大変だったんだよ〜」
「ダマレ変態。」
「可哀想に、僕の麗しい妹よ……!!」
「気色わりィ、ぶっ飛ばしてやろうか。」

一体どうして居場所が分かったのか。いつの間にか背後に現れていた自称シスコンの自称神を追い払おうにも、会話が成立しない。一方通行になっている。
 真希と詩麗奈が友達になってから1カ月経過、親戚である亜風炉照美は友達が出来た事を相当嬉しく思ったらしく、携帯電話を詩麗奈に贈った。それまで携帯電話を持っていなかった事を疑問に思い、真希がメールアドレスを聞きに来た詩麗奈に尋ねたところ苦笑してスルーされた。

『真希ちゃん、それは聞かないであげてね。』

突如その場面に現れた変態(自称シスコン)にこそこそと言われたのはムカついたが、詩麗奈が挙動不審になったためその言葉を受け入れ、話を変えたのはつい2週間くらい前だ。

「で、俺に見舞いに行けっつうのか。」
「うん、まさか詩麗奈が2日で音を上げるとは思わなかったけどね。」

真希は甘くなったと思いながら、今日が快晴である事を恨むふりをして立ちあがった。




「……何してるんだろ、私。」
「メールだよ。」
「うん、メールだけど…………って照さんいつからそこに!?」

 びっくりしたぁっ、という詩麗奈の心臓はバクバク音を立てた。親戚の兄は、こんなにも神出鬼没だっただろうか。
時々、真希からクレームが来る。突然現れてきてうっとおしい、と。そんな事を言われても照美の方が本家で年上で身体能力も高いのだからどうしようもない。そう返すと、お前が食いとめておけといわれた。確かに“麗しい妹”からのお願いだったらずっとそばに居てくれるだろうが、詩麗奈とて元々お兄ちゃん大好きという訳でもない。

「携帯電話、ちゃんと使ってくれてて嬉しいよ♪」
「いえ……照さんには感謝してます。」

携帯電話を親から貰えなかった理由は、彼女の家庭事情にある。
 親が詩麗奈と関わろうとしないのだ。だからか家にも温かみを感じないし、詩麗奈の好きな花は、雑草以外家には見られない。それを真希に先日愚痴ったところ雑草でも良いだろといわれた。
 親と一緒に買い物に行ったのは、年長の頃、小学校で使う筆箱などを買いに行ったのが最後だと思う。それからしばらく買い物には出かけず、小学校中学年の頃から必要最低限の物を、毎月振り込まれるお小遣いで買うようになった。それでも携帯電話を買わなかったのは、必要無かったからだ。彼女には友達と呼べる友達がいなかった。同年代の女の子達の会話についていける気がしなかったし、勉強にまじめ過ぎていた。
真希に会うまでは。

「真希にはなかなか会えないので……そう言えば学校はどこなんでしょう、」
「聞いてみれば良いよ、きっとお見舞いにも来てくれるだろうから。」
「……そうでしょうか。」

車いすの方向をかえて、照美に背を向けた。
彼女がお見舞いというのは何だか合わない。普通のお見舞いというと、花を持ってきて、果物を持ってきてというイメージだ。別に詩麗奈が期待している訳ではないし、お見舞いなんて無くて良いと思っていた。退屈な入院の象徴だからだ。だけど、暇すぎた。『病院って、暇』なんていうメールを送ってしまった。真希が顔をしかめる所を想像して、詩麗奈は苦笑する。

「あ、照さんそう言えば真希からクレー……あれ?」

振り返ると、そこには誰もいない。

「……本当、神出鬼没。」




「何やってンだ。」
「入院やってるの!」
「……見舞いに来た俺がバカとしか思えねェ。」

 にこにこと微笑む詩麗奈の周りには花が咲いているように見える。真希は溜息を吐いた。もっと怪我人らしく沈んでいるかと思って柄にもなく心配していた自分がいた……少しだけ。それが病室に入った途端『真希! Good morning!』で、フィールドの魔術師の『俺だよ!』だったのだからそのまま帰ろうかと思った。

「だって、嬉しかったから!」

ニコ、っと微笑む詩麗奈に、いつも通りかと呆れたような笑みが漏れた。

「ほら、やる。」
「? 何?」

真希から渡された小さな紙袋を振ると、カシャカシャと音を立てたそれ。詩麗奈が開けると、中に入っていたのはいくつもの植物の種。少し右手に出してみると、それは細長い見覚えのある種だ。小学校の頃、学校の委員会活動で植えた記憶がある。大好きだった花。

「マリーゴールド?」
「生花は花粉、匂いで病院の奴らに迷惑だ。退院したら植えろ。」

詩麗奈は思わず感心すると同時に嬉しくなった。背を向けた真希に、ねえ、と声をかける。

「マリーゴールドの花言葉、知ってる?」
「……知らねェよ。」
「……。」

でも、と詩麗奈は閉まったドアを見てから、1人病室で種を見つめる。
ほほが緩むのは仕方ない。



帰ったら、鉢植えで育てよう。
それと、真希と遊びに行こう。
もっともっと仲良くなりたい。

あの沈黙は、花言葉を知っていたからだと思おう。


「マリーゴールドの花言葉は————……」



**

( 真希ぃ! マリーゴールドが上手く咲かないの! )
( 栽培委員だったンじゃねェのか!? )


————友情、だった気がする。


* End *
ちなみに、{マリーゴールド 花言葉}で検索するとウィキでは別の言葉が出てくるので検索しないで下さい。←
サイトによって結構違いがあるので;;

はい、真希ちゃんと詩麗奈のお話でした!
お見舞いに花は持ち込み禁止な病院も増えて来たとか。それに真希ちゃんだったら花は買わないかなぁ、と。
もう友達なのでタメ口全開な詩麗奈です、年下なのに。←

駄文ですみません、真希ちゃんの口調書き慣れないからか難しいっ;;
間違ってたら本当ごめんなさい!
リクエスト、ありがとうございました!!