二次創作小説(映像)※倉庫ログ

また、この木の下で。Ⅰ ( No.681 )
日時: 2013/02/22 21:04
名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: 7jEq.0Qb)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode=view&no=25307

登場人物

流星桜花(ナガセオウカ)
やせていて小柄。博士号をもっている、姉弟の母親。
穏やかでお人好し。だまされやすい。年齢はシークレット☆

流星瑠璃花(ナガセルリカ)22歳
正しい歴史よりもひどいあがり症。
ラズベリーと研究大好き。

流星魁渡(ナガセカイト)20歳
正しい歴史よりも身長が少し高い。成長期の遅い中学生くらい。←
何かひらめくと、気が済むまで部屋から出てこない。



Attention!
・イナクロの短編です。本編には一切関係ありません。(本編へは上のURLからどうぞ)
・優一さんに影響を受けた完結方法ですが、正直パラレルワールドとかちゃんと理解できないので雰囲気で;;
・以上のことがOKな方、どうぞ!



10年前のあの日、俺は、落ちていくあの手を掴めなかった。


何度、夢であったほしいと思ったことか。
何度、もっと早く手を伸ばさなかったことを後悔したか。
何度、彼女の話を聞かなかったことを後悔したか。
仕舞には、優勝と引き換えに彼女が戻ってくればとさえ。

劇では無い。
嘘では無い。
彼女は世界中どこを捜しても、見つからなかった。

彼女——流星瑠璃花は、どこにもいない。


————はず、なのだ。




『イナリンク
 てんま:大変です!あの流星姉弟のサッカーも消されてるんです!
 しんすけ:誰か、アーティファクトに心当たりありませんか?』

東京、鬼道邸周辺にも珍しく雪の降った、寒い朝のこと。
舞い込んできたその情報に、顔をしかめずにはいられなかった。

『あおい:あの最強姉弟の!?ホント!?
 てんま:間違いないよ、テレビ見てみて!』

テレビ?
右手に持っていたリモコンの電源ボタンを押す。
いつも見ている朝番組のアナウンサーが、速報です、とニュースを伝えていた。

「早朝、流星研究所の代表、流星桜花博士が会見を開きました。」

画面に映ったのは、フラッシュを浴びながらも緊張した様子を一切見せない、穏やかそうな女性。
橙色の髪、青い目、そして流星桜花という聞き覚えのある名前から導き出された答え。

「瑠璃花達の、母親か……!?」

そんなはずは無い、確か母親は瑠璃花達と俺達が出会う前に死んでいる。
しかし別人にしては姉弟と似過ぎているテレビの中の女性から、俺は目が離せなかった。

「——これからは、今回発見した新成分の実用化に向けての研究を進めていきます。皆さんに早く良いお知らせが出来るように、家族一丸となって頑張っていきますので……応援、してくれると嬉しいです。」

博士らしくない言葉だと分かっているのか、照れたようにはにかんでお辞儀をした小柄な女性。
その笑顔を見て、確信した。
——姉弟の、母親だと。



『イナリンク
 ごうえんじ:2人が本格的にサッカーを始めたきっかけは、確かフェイとフュイという島にいた双子だ。
 てんま:え、フェイ!?
 きどう:別人だ。その双子ならコトアール代表で10年前のFFIに参加していた。
 フェイ:ありがとうございます、コトアールに行ってみます!』


「鬼道財閥の鬼道有人さんですね、この度はありがとうございます。」

何という偶然。
研究資金の支援をしてほしいと依頼してきたのは、テレビで見た流星研究所の代表・流星桜花だった。

「いえ。しかし、あの大発見で研究資金は十分集まるのでは?」
「それが、私ってどうも信頼ないみたいで。」
「信頼?」

こんな優しい、裏のなさそうな人が?
そう疑問に思っていると、意外な答えが返ってくる。

「子供からの。」
「……は?」

そう言えば、テレビでは家族一丸となって、と言っていた。
天馬の言っていた、最強姉弟のサッカーが消されている、というのはテレビを見ても良く分からなかった。
じっくり見ている時間もなかったが……もしかして。

「当たり前だ、何回詐欺に遭ったか覚えてるのか?」
「1、2……8回ね。」
「そんな母さんの“信じられる”が信じられるかっての!」
「!」
「お母さん、悲しいわよ……カイ。」

ドアを開けて入って来たのは、中学生か高校生に見える姉弟の弟、魁渡だった。
俺の視線に気づくと、手に持っていたティーカップの1つを俺に勧めて、桜花さんの隣に座る。

「初めまして、流星魁渡です。」

にこ、と笑っているが……登場時の口調が素だとばればれだ。

「私の息子です……カイ、るりは?」
「……交代の時間だ。母さんの番のはずだけど。」
「あら、じゃあるりを連れて来て。この話は私じゃないと出来ないもの。」
「また俺が見張りか……。」

溜息交じりにそう言って、魁渡はソファーから立ちあがった。
部屋を出ていくと分かった為、紅茶の礼を言うと、また営業スマイルで返された。

「見張り、とは?」
「今、新成分の実用化に向けての研究で、その変化の様子を見張る、というのを交代でやってるんです。見張りって言った方が、何となく楽しそうじゃないですか?」

でもこの研究地味にお金がかかって、と眉を下げる桜花さんに、ずっと気になっていた質問を投げかける。

「なぜ、大学の研究室でやらないんですか?」
「そっちでやってたこともありましたが、私の右腕の娘が……。娘を見れば分かると思います。」

桜花さんの顔が陰った。
少し気まずい空気が流れ始め、目に入った研究に関しての資料をめくった、刹那。
コンコン、とドアがノックされる。

「どうぞ。」

何やらニヤつきながら紅茶をすする桜花さんは、いたずらっ子の様だった。
——なかなかドアが開かない。
恐らく桜花さんは、原因を知っているから楽しんでいるのだろう。

「カウントダウン——」
「ごめんなさいっ!!」

腕時計を見ながら桜花さんが声を張り上げて言った瞬間、ようやくドアが勢い良く開いた。

「あ……。」
「……。」

ポニーテールに結われた橙色の髪が、その声が、懐かしい。
入って来たのは、瑠璃花だった。
目が合うと、驚いた表情をして彼女は顔を伏せる。
桜花さんはそれに気付かない様子で、瑠璃花の隣に立った。

「こちら、鬼道財閥の鬼道有人さん。鬼道さん、娘の——。」
「瑠璃花です……。」

初めまして。
微笑みと共に小さく付け足された言葉が、悲しくも、少しだけ嬉しかったのは否定できるはずがない。


会いたいと望んでいた人に、会えたのだから。


*to be continued*
当初はバレンタイン短編と言う事で書いてましたが、仕上がらないのでチョコ要素ひっこ抜きました((
本編ではもっと違う展開になりますので、これはこれでお楽しみ頂ければと思います。
魁渡「俺の出番終了だな!」
うん、お疲れ!もう出番ないからね!
魁渡「メテオスマッシュ打ってやろうか!」
丁重にお断りさせて頂き((メテオ「メテオスマッシュ!」