二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- また、この木の下でⅢ ( No.687 )
- 日時: 2013/02/22 21:05
- 名前: 伊莉寿 ◆EnBpuxxKPU (ID: 7jEq.0Qb)
『イナリンク
てんま:アーティファクトのサッカーボール、あってよかったです!
しんどう:フュイさんたちのためにも、ぜったいに勝とう!
はるな:とりあえず、今日はしっかり休むのよ?
(翌日↓)
あおい:みなさん、今日はがんばってください!』
*
「鬼道さん!」
青い空の午後、来訪者を庭で待っていた鬼道がその声に振り返り——。
「……っ。」
目を見開いた。
全体的にふわふわしたコーディネートの瑠璃花は、サイドに編みこみをして、髪をひとつ縛りにしていた。
「こんにちは……鬼道さん?」
門を開けて庭に入れるも、サイドテールの瑠璃花の後ろ姿が10年前の少女と重なる。
これは、あの歴史とは違う。
そう言い聞かせても、ラズベリーの木を嬉しそうに見つめる瑠璃花を、重ねずにいられない。
「この木、ラズベリーのですよね! 私——」
「ラズベリーが、好きなんだろう?」
「ぇっ……?」
知ってる。
こみ上げてくる物を感じて、鬼道は深く後悔した。
——また、ラズベリーの木の前で。
「私、そんなに分かりやすいですかね? 私、ベリー系の中でも特にラズベリーが好きなんです。ええと、鬼道さんも、ラズベリーお好きなんですか?」
「ああ……。」
あと少しだと鬼道は言い聞かせる。
多分、天馬達が今頃ルートエージェント達と戦っている。
だから、あと少し知らぬ振りをしていればいい。
だから、あと少しだから——言えてしまえたら、どんなに楽だろうか。
「でも鬼道さんは、ブルーベリーの方が好きそうな感じします。赤より青って……。」
「瑠璃花は、青より赤が好きなのか?」
「そんなことないです、私は……どちらかというと、青の方が好きです。」
そこで瑠璃花は、ニットのポンチョの下に隠れていたペンダントを取って、鬼道に見せた。
青いガラス玉。
「この前鬼道さんの後にいらっしゃった方が見つけてくれたんですけど、すごく綺麗で……どうしてこんな綺麗な物を忘れてたのか自分でも分からないんですけど。」
何言いたかったんだっけ、と瑠璃花は俯いて、沈黙してしまった鬼道に戸惑いながら言葉を紡ぐ。
「いつ誰から貰ったのか、全然思い出せないんですけど、これは私の宝物なんです……。あ、そう言えば青の方が好きって話だったのに、ええと——」
「……ホタルガラス。」
ぽつりと呟かれた言葉に、瑠璃花が顔を上げた。
「……俺が、瑠璃花に買ったペンダントだ。」
「!!」
瑠璃花は驚きに目を見開き、ペンダントを握りしめた。
鬼道がそれに気付き、我に返る。
口に出してしまった数秒前の自分を蹴り飛ばしたいが、出てしまった言葉は戻らない。
あれはこのサッカーを失った瑠璃花に買ったものではない。
どう説明すれば、それとも誤魔化そうか。鬼道が考えを巡らせていると、瑠璃花が俯いたまま口を開いた。
「……鬼道さんが、瑠璃花に贈ったんですか?」
「!」
俯いた瑠璃花の表情は分からないが、いつもの、尋ねるような口調だった。
しかし、鬼道は“瑠璃花に”という部分が引っかかる。
そして質問が質問なだけに答えられずにいると、瑠璃花がさらに続けた。
「……一昨日のお話なんですけど、雷門イレブンは富士の樹海で“優秀なサッカープレイヤーを父に持つ姉弟”と出会い、エイリア学園を倒した——その姉弟って、私と魁渡ですか?」
「!」
「昨日調べてみたんです、エイリア学園との戦い。えっと、それでっ、」
ペンダントを握りしめる手に、さらに力が込められる。
「エイリア学園を倒したのは雷門イレブンです、でも、姉弟で参加した選手は見つけられなくって。……それに、一昨日の夜夢を見たんです。」
12歳の私と10歳の魁渡が、中学生の人達とサッカーをしている夢——。
「目が覚めてから何だか落ち着かなくて、雷門について調べたら、その中学生は皆雷門の選手でした……その夢を見たのも、きっと、このペンダントを見つけたからじゃないか、って思うんです。」
視線を泳がせていた瑠璃花が深呼吸をする。
そして、変な事ですけど、と切り出した声は震えていた。
「父親が有名なサッカー選手で、弟が居て、ラズベリーが好きで、ホタルガラスのペンダントを持っている私は、鬼道さんの言う“瑠璃花”ですか?」
戸惑いの揺れる瑠璃色の瞳が、鬼道の顔を映した。
* to be continued *
次で終わりですっ!
明日には上げられると思います。