二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- 小説NO.2-第3話- ( No.70 )
- 日時: 2011/10/22 00:16
- 名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)
照さん、それは私の親戚で[亜風炉照美さん]の照美から取った私の呼び方。短くて言い易いし、1つ年上で本家の彼にはぴったりだと思うんです。でも…何だか好きになれなくて。私は妹扱いされる。見た目がそっくりだから初対面の人なら信じてしまう。……特にこれと言った理由は無いけれど、とにかく好きになれない。そう言う事はやめた方が良いって言われる、それ位わかってる…のに。
照さんは、確か実家の方に帰ったはず。つまり今は韓国に居るのに、何で私に電話を?もしかしてお母さんが家出したことを照さんに…そうとしか考えられないかもしれない。家に帰りなさい、って言われるのかな。
『あの』
「貴女が、風介がたいやき屋さんであったって子かしら。」
「あ、照さんまたかけ直します。」
反論の声が聞こえる前に電源を切ってしまいました。←
黒髪の女性が瞳子さん。確かあの人達のお姉さんで…。そう言えば名前聞いて無かったです…。と、瞳子さんの隣にさっきの方が現れました。
「初めまして、吉良瞳子よ。」
「私は涼野風介だ。」
「花園詩麗奈、中1です。」
「風介の1つ年下なのね。」
涼野風介さん…涼野さんは中2で照さんと同い年。そう言えば幾ら何でも電話を突然切るなんてマナー違反ですね、後で謝らないと。
「次からはちゃんと数を言って買って来てもらうわ。今日は食べて行って下さい。」
「ありがとうございます、何かすいません…」
靴を脱いで上がらせてもらう、と涼野さんは何か考え事をしているようでした。顔の前で手を振るとようやくハッとして顔を上げて。
(……花園…)
「涼野さん?」
「否…何でも無い。」
「????」
*
「遅かったな、ふうす……その女誰だ?」
詩麗奈と涼野が部屋に入った時、既に全員揃っていた。大型TVを前に座る様子は何処か微笑ましい。
誰だ、と言ったのは南雲晴矢。彼は映像を再生する準備をしていた。
これはサッカーの技術向上のために自分達の試合形式のビデオを振り返り、問題点を解決して行こうと言う集まりだ。その時に、甘いものを滅多に食事に出さないお日さま園だからとおやつになる物を交代で買いに行くのが決まり、と言うか彼等の楽しみなのである。
「私がたいやきをまとめ買いしたらこの人が食べられなくなったと言うので連れて来た。」
「初めまして…」
「え、何カノジョ?!」
「違う。」
「杏…何でも恋愛に繋げたがるのは本当に相変わらずね。」
「クララは真面目すぎるのよ。」
(・・・賑やかですね…)
親を失くした子供、お日さま園に居るのはみんながそうだ。捨てられた子供もいるし、無くなった子供もいる。でも今はサッカーを通じて毎日を明るく過ごしている…詩麗奈は1つの奇跡を見ている気がした。
「・・・」
「名前は?」
「あ、詩麗奈と言います。」
「私は蓮池杏、これも1つの縁ね。よろしく。」
出会いに感謝———。
自然と笑みがこぼれた。新たな出会いとこれからの楽しい時間に感謝をこめて。
「よろしくお願いします、杏さん!」
*
サッカーのビデオはハッキリ言うと詩麗奈には良く分からなかったが、楽しそうにプレイする様子や、杏の解説(南雲が取られた時はどうだった、とか緑川はかつて一番下のチームのキャプテンだったのに強くなった、とか)を聞くのは楽しかった。お日さま園を出た時、すっかり緋色に染まった空を見上げる。
「今日はありがとうございました。」
「いいえ、楽しんでもらえた様で良かったわ。」
良い人だな、と詩麗奈は想う。
と、親戚に電話する用事を思い出し慌てて電源を入れて電話を掛け…ようとして電源が入らない事に気付いた。電池がもう無いらしい。充電器は持って来たが充電する場所に心当たりがなく、家出は1日もしないで終わりかと落胆した時だった。どうした、と声がかかった。
「涼野さん?」
「何時まで経っても此処でウロウロしているから、何かあったのかと思ってな。もしかして場所が分からないのか?」
「…親戚に急いで電話する用事があったんですけど、携帯の充電が切れてしまって。」
そう言うと涼野はお日さま園の中に入り子機を持って来た。電話の内容を聞かない様にと少し離れた所をうろうろし始める。
電話番号いくつだっけ、とあやふやなままボタンを押した。だから照美が恐る恐る、という感じで電話に出た時は心底ほっとした。詩麗奈です、と名乗ると途端に元気になったが。
「さっきは急に電話を切ってしまい、申し訳ありませんでした。」
『え、ああ大丈夫!』
「所で用件は…」
彼女が素直に謝った事に驚いたのか、声が上ずっている。
『ある人達に声を掛けてほしいんだ。』
「ある人達…?」
FFIのことを説明して、かつてのエイリア学園の強いチームだった人達なんだけど、と照美が言うと彼女の中に涼野の顔が浮かぶ。
『涼野風介って人と南雲晴矢って人なんだけど。』
口がポカンと開いたまま、当分ふさがらなかった。
*続く!*