二次創作小説(映像)※倉庫ログ

姫佳さんリク☆急上昇x急接近?!☆ ( No.89 )
日時: 2011/10/24 18:15
名前: 伊莉寿 (ID: r4kEfg7B)

「位置についてー、」

 碧空。
その中に吸い込まれて行く男子中学生の声。中学のグラウンドでは男子中学生と女子中学生が100m走をしようとしていた。

「ようい…、ドンッ!」

 陸上部ではあるが、個人的な競争にピストルは使えない。
 金髪の少年——宮坂了の声に合わせて、水色の髪の少年と藍色の髪の少女が駆け出した。女子は陸上中距離の全国大会に出場できる程の瞬足を誇り、男子はサッカー部に入部するも以前より足が速くなった。陸上部に居た頃は部内で1番速かった彼の復帰は強く望まれるも、彼自身がサッカー部に残りたいと主張する為、実現しない。

そんな2人は幼い頃から仲が良く、家の前の道路で良くかけっこで勝負をしていた。
100mの目印である、白い石灰で引いたラインを2人はほぼ同時に踏み越えた。ピ、と顧問の先生がストップウォッチを止める音がし、同時に歓声が起こった。宮坂が笑顔で駆け寄ろうとするのを、女子の溜め息交じりの声が止めた。

「あーっ、また負けたーっ!!!!」
全員「!?」
「風丸君と風花ちゃんの競争はいつ見てもドキドキするわ〜♪惜しかったわね、0.2秒差で風花ちゃんの負け。」

少女——姫雷風花は悔しそうな表情をした。それからストップウォッチを覗き込み顔を輝かせる。
と、それと同時に少年——風丸一郎太は顔をしかめた。彼女の顔を見て近寄ろうとすると突然彼女が振り向く。顔全体から喜びを放っている様な表情で。

「タイム上がった!自己新!!!やった!!!」
「コロコロ変わりますね、風花先輩…^^;」
「まあ機嫌悪いよりいいだろ、それより風…」

ニカ、と満面の笑みになった風花に風丸は口を閉じた。

「また部活の終わりに競争しよ!今度は差を0.2秒未満にするんだからっ!!!」


 この2人の勝負は、部員達の愉しみの1つでもあった。
両方どちらが勝つかは分からない様な勝負、でも最後には風丸が追い上げて勝利する——なぜか風花は何時も風丸に敵わない。
見ている方はとてもハラハラして、そして風の様な2人に感嘆する。

「風花!」
「?何、イチロータ君。」
「…体調大丈夫か?顔、赤いけど…」

顔?、と風花が首を傾げる。風丸が右手を彼女の額に当てると少し熱く感じた。

「っ?!//」

男子が驚いて2人を見ていた。

「少し熱…」
「風丸〜、何部活中にいちゃついてんだよ〜(笑)」
「な?!//」

風花がその意味を理解して、顔がまた少し赤くなった。風丸も手を離す。…心音がうるさく聞こえた。

「じゃ、じゃあ部活が終わったら陸部に来てね!」
「ああ。//」

走り去る背中を見てから、風花は前髪を整えた。顔が赤くなってたら後輩にからかわれると思い冷たい手で冷やす。

「風花せんぱーい!走りますよー??」
「今行くっ!」

女子の後輩に呼ばれて、風花は部員達が集合している方に駆け出す。途中で足をくじいたのか一瞬ふらつき違和感を覚えるも、構わずに。もう3年は居ない、2年がしっかりしないと…、そう思っていた。




「位置について、」

宮坂が再びスタートを担当する。
部活が終了し、これがラスト一本。風花と風丸がスタートの位置に着き構える。冷静に落ち着いて行かないとフライングしてしまう。——なのに集中できない風花がいた。
体を支える指が震える。今日はいつも通りのメニューで大して疲れていないはずなのに。緊張もしていないと思う。風丸が隣に居る時は逆に安心できるくらい。

(…何で?)
「ようい、ドン!」

その声で一気に飛び出す。空気をかき分けてひたすらに前へ進もうと腕を振って足を進める。

なのにその脚がいつもと比べ物にならない位重たく感じた。

「っ?!」

視界が霞んで、何も無い所で風花が転んだ。
転んでしまったら体はもう動きたくないと言って、彼女の心が立ってと叫んでいるのに言う事を聞かない。
部員たちが駆け寄って来ると何とか体を起こす事が出来て、恥ずかしくなってきた。風丸が心配そうにやって来ると苦笑いして謝る。勝負にならないね、と。

「風花、熱あるんじゃないか?」
「そ、そう…かな??」
「目潤んでるじゃないか!絶対熱ある!!」

大体何も無い所で風花が転ぶなんて有り得ない。彼女の額に手を当てるとさっきよりも熱い。

「……風丸、さっきも言ったのに懲りずに…」
「そんなに風花が好(風「違うっ!!!///」
「///保健室に行けばいいんでしょ保健室に!」

半ば怒りながら風花が立ち上がる。と、ふらつきまた倒れそうになった。風丸の腕に捕まり何とか耐え、自分で状態を理解する。
まさか自分が体調を崩すなんて。

「バカじゃ無い事が分かって良かったな。」
「そうだね!私バカじゃな…って元々テストの合計点数400点越してるもんバカじゃないよッ!!」
「あら、風花ちゃん熱あるの?じゃあ風丸君送ってあげてね。」
「「先生…」」

同級生どもがニタニタしている。
それに乗る先生もどうかしていると思うが、まあ軽く考えているのだろう。逆に青春万歳!なのかもしれない。

「…帰るか。」
「了解です……」

*つづく*