二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: 英雄伝説 空・零・碧の軌跡 無限に続く軌跡へ ( No.2 )
日時: 2011/11/12 23:13
名前: 作者くしゃくしゃ ◆HOZN/8Uj3A (ID: 9ihy0/Vy)

第1話 市長の依頼

キキー
遊撃士協会ボーズ支部の扉が開いた音が静かな部屋に鳴り響く。

入って来たのは優しい顔をした少年、セシラル・ワイスマンだった。

「やっと来よった、ほれおまえさん直々に依頼が来とるぞ」

受付と思われる一人のお年寄りがそう言うと

「おはようございます。ルグランさん。誰からの依頼ですか?」

と小さな声で返した。

ルグランと呼ばれた老人はかつてリベールには王都のみにしか支部がなかった頃から受付を勤める大ベテランであり、皆からは「ルグラン爺さん」と呼ばれている。そのルグランが依頼主はメイベル市長だと告げると、セシラルは分りましたと言い遊撃士協会から出た。

ボーズ地方、数多くの商人たちが訪れる場所。メイベル市長もまた商人の血を受け継ぎ、若くして「ボーズマーケット」のオーナーとしての仕事を熱心にこなしている。というより、自らの体調も顧みず仕事に没頭しているの方が正しい。

市長の家はボーズ西口のすぐ近くにある2階建ての家で非常に分かりやすいし、なお且つ覚えやすい。遊撃士協会から目をつぶってでも行ける。

遊撃士協会を出て1分足らずで市長の家に着いたが、中に人がいる気配は感じられない。扉を良く見ていると鍵がかかっている。いつもなら秘書が留守を預かっているはずだが・・・???市長の家に着いた時からか、何か凄い視線を感じていた。それが少しづつ背中に刺さっていく。セシラルはゆっくりと振り向くとそこにはいつも市長の近くにいるメイドがこちらをドロボーと思い込んだような眼で睨みつけていた。

「お嬢様が不在の時に盗みを働こうとは、しかしこの私が来たからには一歩の中には入れさせません。」

思いっきり勘違いしていると思ったセシラルは冷静に遊撃士協会の者だと説明すると誤解が解けたのかそのメイドは、

「遊撃士協会の方だと知らずに、ご無礼をお許しください。」

とやけにリアルな無表情で言った。

「いえ気にしないでください。ところでメイベル市長はどこへ?」

「今日は秘書も他のメイドも休んでおりまして家には私とお嬢様しかいなくて、お嬢様が教会にお祈りをする為に家を空けてしまうため鍵をかけてしまいました。しかしいつも自分の分まで祈っといてと言ってどこかへ行ってしまうので、今日は多分ボーズマーケットに居ると思います。」

予想もしなかった答えが返ってきたのでセシラルは苦笑しかできなかった。しかしそれで市長の意外な一面を知ってしまった。

ボーズマーケットは町の中心にある建物で、遊撃士協会、市長の家、教会からは10歩程度で行ける程の距離である。

ボーズマーケットいつも騒がしいが今日はいつもにも増して騒がしい。特に中央あたりから。セシラルはまさかと思い一番騒がしい中央部分をみると、商人に市長が説教をしていた。何を言ってるかは分からないがただ怒ってるのではなく、母親が子に想いをこめて起こるような、そんな感じに見えた。市長が話し終わったあと、怒られた商人はふてくされる事も、文句を言う事もなく市長にお礼を言ってその場から立ち去った。

メイドにきずいたメイベル市長は、

「さっリラ、帰りましょう。あらそちらは」

「遊撃士協会の者です。市長から依頼があると聞いてやってきました。どのようなご用件で?」

さすがにあんな光景を見てしまったからには喋り難く、何度か噛みそうになった。

「そうでした。依頼の事でしたね。私からの依頼は王都支部の遊撃士協会にこの手紙を届けてほしいのです。いいですよね」

意外と考えてた依頼より楽なものだった。王都は徒歩で行けばかなり遠いが定期船を利用すれば簡単に着く。

「じゃあ、なるべく早く届けます。念のためたどけたらそちらに連絡は致しますので。」

その後、この事をルグランに話すと思いもよらない答えが返ってきた。

「別に構わんが、定期船は修理中で当分使用ができないぞ。」

「つまり・・・歩き?ってことですか?」

「そういう事になるな」

「そ、そんな。でもやるしかありませんね。ボーズ支部は他の支部より人が少ないし、アネラスさんは、ル=ロックル峡谷に行ってるからいないし。私しかこんな長い仕事やれるぐらい暇な遊撃士いないですしね。なるべく早く帰ります。」

翌日、準備をしたセシラルは市長の手紙を王都支部の遊撃士協会に届けるため、ボーズを出るのであった。