二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン×REBORN!  神の復活  ( No.1 )
日時: 2011/12/02 13:57
名前: しろお (ID: eR9v1L6x)




 
         act.1       ささやき 





 アフロディと呼ばれる少年がいた。
 少年は髪が女のように長く、そして美しかった。少年が道を通ると、その麗しい姿に誰もが振り返った。
 しかしその日の少年の目は死んでいた。 
 かつてあったであろう瞳の輝きは失せ、目のまわりは落ちくぼんでやつれ切った表情だった。
 彼が道を通っても、人はそんな彼の姿を見ようとは思わなかった。
 その疲れて変わり果てた姿のアフロディは、しきりに、僕は神だ、僕は神だと呟いている。
「僕は神だ……。僕は神だ! 神のアクアを使っても勝てないなんておかしいじゃないか!」
 道の上で、彼は狂ったように叫ぶ。彼はいまある商店街の通りにいる。
「そうだ、国に帰ろう……!」 
 人々はなるべくアフロディから目を逸らそうとしていたが、明らかに苦しむアフロディをまじまじと観察している三人組があった。
 一人は赤い髪を立たせ、チューリップのような髪型をしている少年だ。もう一人も赤髪だがまっすぐに伸ばしており、顔もチューリップヘアの少年とは似ていない。残りの白い髪の毛の少年も同様に、その他の二人とは似ていない。兄弟というわけではないのだろう。
「おいガゼル。あいつ、サッカー強そうじゃねえか?」
 そう言ったのはチューリップヘアの少年。
「そうだな。我がエイリア学園に、一人でも有望な人材を引きこんでおきたい。……なるほど、な。そういうことだったのかグラン」
 ガゼルと呼ばれた少年は、チューリップヘアの少年にではなく、グランと呼ばれる少年の方を見て言った。
「そういうことって、何が?」
「しらばっくれるな。急にお前がカラオケに行こうなどというから何かおかしいとは思っていたが……。お前の目的はわかった。レーゼのやつらが雷門中と戦ってるうちは私たちは暇だから、選手のスカウトでもしようって魂胆だな?」
「別に。ただカラオケに行って久しぶりに二人と歌いたかったんだよ。でも確かに、あのロングヘアーの子、気になるね」
「ガゼル。あいつのサッカーやろうぜ度はいくつだ?」
「そう焦るなバーン。今スカウタ—をだす」
 ガゼルはバーンと呼ばれるチューリップヘアの少年の髪に手をつっこみ、ごそごそと手を動かしている。手ごたえがあったのか、何かを取り出す。
 ガゼルはそれを片目に装着し、電源を入れてアフロディに照準をつける。
ガ:「十万……百万……いやまだ増えるのか……!?」

グ:「どうしたんですか、ドドリアさん」

ガ:「ドドリアじゃねーよ。……はっ。くっ、思わずツッコミを入れてしまったじゃないか。はっ。まだ止まってなかったのか!? 千万……だと!? まだ増えるのか……! なんだ、何が起きているんだ一体ってうわっ」
 ぼんっと突如スカウタ—は火を吹いて爆発した。

ガ:「スカウタ—で測りきれないだと……!? あいつ、何者だ!? 一体どれほどのサッカーやろうぜ度を秘めているというんだ!?」 

グ:「落ち着きなさいドドリアさん」

ガ:「だからドドリアじゃねーよ」

バ:「グラン、もしかしてあいつあれじゃないか? 円堂守とかいう奴と戦って負けた世宇子中のキャプテンの……ほらあれだよ。神のアクアとかいうドーピングを使って勝とうとしたチーム」

グ:「ああ、アフロディ君? そっかー。ドーピングの副作用であんなヤク中みたいになっちゃってるんだ。それにしても、円堂君と戦った人って皆、なんでか知らないけどサッカーやろうぜ度がすごく高くなってるよねー」

ガ:「……で、どうするんだザ—ボン」

バ:「だってよフリーザ様」

グ:「だってさドドリアさん」

ガ:「はあ……。君たちといるととても疲れるよ……ん?」
 
 ガゼルの視界に偶然、三人の後ろにいる黒いスーツに黒いサングラスを纏った、怪しげな風貌の男五人が入った。五人とも体格が良く、肌の色の白さや顔の骨格から言ってもおそらく外人だろうと思われた。
 誰かを探しているのか、五人はきょろきょろとあたりを見回している。







「グラン……。あの五人組、怪しくないか?」
 癖なのか、ガゼルは前髪を執拗に触り、横になびかせる。グランはちらっとスーツの男達を見たあと、小さい声で喋る。
「誰かを探してるみたいだね。まあここは東京だし、ああいう人がいてもおかしくはないかな。外国の人ってことは、マフィアなんじゃない? ダンボール戦機絡みの事件だったりして」
「あ、おい、なんかさっきの長髪のやつが、誰かとぶつかったぞ」
 バーンが声をあげる。
 アフロディは地面に尻もちをついている。その隣に、「いててて……」とアフロディと同じように尻もちをついている少年がいる。制服を着ており、背や顔つきから言って中学生くらいだろう。何かから逃げるように慌てて走っていたこの少年は、道の真ん中でアフロディと衝突してしまったようだった。
「ツナヨシ、サワダ……!!」
 グラン達の後ろにいたスーツ姿の男達が、少年に向かって一斉に走り出した。どうやら探し物は彼だったようだ。
 足の速いスーツの男の一人が、グラン達の横を通過した。それに続いて他の男達もグラン達の横を走って通って行く。
「あっ、し、しまった! に、逃げなきゃ!」
 スーツ姿の標的と思われるツナヨシらしき少年はすぐにその場から離れようとするが、立ち上がる時ふいにアフロディと目が合う。
「うわぁぁ。関係ない人を巻き込んじゃったよぉー! ど、ど、どうしよう!」
 慌てながら少し悩んだ後、何かしらアフロディに迷惑がかかると判断したのか、ツナヨシはアフロディの腕を掴んで引っ張った。
「ご、ごめん! 事情は後で話すから、ちょっとついてきてくれる!? ほんっとにごめん!」
 アフロディはぼーっと座りこんだままだったが、しばらくしてツナヨシに引かれるまま走って行った。 
「おいおい! あの長髪くんともやしみたいな奴でどっか行っちまったぞ!」
「……どうする? グラン」
「カラオケは中止だね。僕はあの二人を追う。ちょっとの間、あの五人組を足止めしてくれると助かるよ」
「はっ! マフィア相手にサッカーボールで邪魔しようってか! おもしれえ! 邪魔するどころか、紅蓮の炎で焼き尽くしてやるぜ!」
「ふっ。任せておけ。凍てつく闇の冷たさを教えてや」
「じゃっ父さんには適当になんか言っておいて!」
 ガゼルが言い終わらないうちに、グランは走り去って行った。
「さっさと任務を終わらせてカラオケに行くぞ、晴矢。BUMPの新曲を披露してやる」
「んなこたぁ言われなくてもわかってんだよ! 俺だって今日こそB'zメドレーで九十点取ってやるぜ! 風介こそマフィア相手にビビんなよぉ?」