二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: イナズマイレブン×REBORN! 十年後の世界で ( No.92 )
- 日時: 2012/01/18 19:59
- 名前: しろお (ID: C5PYK3fB)
「さあ、はやく場所を言うんだ」
僕がそう言った時だった。僕の手からスルッとリボンが落ちたので、左肩だけ下げて拾おうとした。ひゅんという空気が切れる音が僕の右耳をかすめていった。
その一瞬で、空野さんの胸から血が出、パンという乾いた音が駅に木霊した。
音がした方を僕は向く。そこには、松風天馬がいた。
「あれれ、本当にそのリボン、危険を察知するみたいだね」
「松風天馬……! お前だったのか、お前が!」
「バレちゃったかぁー! そこの女、簡単にゲロッちゃってさあ。使えないなあ、ほんと。本当は照美さんを殺してからそっちも消すつもりだったけど、順番が狂っちゃったね。まあ、なんとかなるさ! ……なんてね」
「松風、空野さんは君のこと……」
「そんなのわかってましたよ。だから利用したんです。ちょっとお願いしたらころっと引き受けちゃってさ、ほんと、女って馬鹿ですよね! 照美さんもそう思うでしょ? いや、アフロディさんでしたっけ。もう隠す必要もありませんよ」
「松風、君はひどい人間だ」
「なんとかなるさ! アフロディさん、運がいいですよねー。昨日だって、俺、殺しに行ったのに、秋姉の邪魔が入ってさ」
「こ、殺すつもりだったのか!?」
「うん! だって俺、ミルフィオーレですから! 本当は、アフロディさんがアジトに行くとこまで尾行して、アジトをつきつめてボンゴレを一掃する予定だったんですよ! でもなぜか、アフロディさんは復讐にこだわって……。復讐しようとしたって俺を殺せる訳ないし、だったらもう用はないやってことで昨日殺しに行ったけど失敗したんです。秋姉のせいで」
木野さんがあの時来てくれていなかったら、僕は殺されてたのか。
「今日尾行してたら、いい情報手に入れちゃって。そのノートに書いてあるんですよね? アジトの地図。だからまた作戦変更して、アフロディさんも貴志部さんもあの人混みの中で殺しちゃって、そのノート奪おうとしたんだけど……。リボンに二回も助けられるなんて、すごい強運の持ち主なんだね! アフロディさんすごいや!」
「…………」
「ま、とにかくそのノートはいただいちゃいますね。あっいいこと思いついた。そのノート渡してくれたら過去に戻してあげますよ。なんとかなるさ!」
松風は拳銃を片手にニコニコと笑っている。
「……どうせ後で殺すんだよね? 君のやり方は、もうよく分かったよ」
「ひどいなあ。まあそうなんですけどねぇ! ハハハ、なんとかなるさ!」
「狂ってるよ、君は」
「狂ってる? 違いますよ、俺はミルフィオーレっていうマフィアの一員ですから、これが普通です」
「君が母さんを?」
「はい! ボンゴレ狩り、すっごい楽しかったですよ! イチゴ狩りとかぶどう狩りと何も変わりません! あの悲鳴とかよかったなぁー! あっ、でもごめんなさい。アフロディさんのお母さんのは普通の悲鳴すぎて、あんまりよく覚えてないかもデス!」
「もういい、黙れ」
僕は銃を松風に向けて、引き金を引く。
しかし銃弾は、松風の前に見えない壁があるかのようにぴたっと一定の距離を保ったまま停止し、やがて力が抜けたようにからんからんと地面に落ちた。
松風の背後に、スタンドがいる。あれは、化身だ。
「化身って、こういう使い方もできるんですよ。でもこれ実は、匣兵器なんですよね。化身使いっていうのは自らの中に匣兵器を埋め込んでいる子供達の集団なんですよ。知ってました? もともとはミルフィオーレが開発した修羅開匣を、普通の人にも使用できるようにしたものなんです」
そんな恐ろしい世の中になっているのか。
「そんな……そんなのサッカーじゃない!」
「そうですよ。サッカーじゃないです。でもなんとかなるさ!」
間髪入れずにもう一発撃つ。
「くそっ! ……だめか!」
「何発撃っても無駄ですって。じゃ、今度はこっちからいきますね!」 化身の大きな拳が僕の体ごと吹き飛ばす。僕は向かいのホームまで飛ばされ、なんとか空中で態勢を整えて着地した。
「うわぁ、すごいなあ。でももう一発いきますよ? 避けないと死んじゃうかもです! ははっ」
僕はすぐさま自販機の裏へ逃げ込んだ。化身に殴られて、ずしんという轟音と共に自販機は潰れた空き缶みたいに歪んだ。
「あれれぇ? とうとうやけっぱちですか?」
僕がリボンを握っているのを見て、天馬がけらけらと笑う。
「このリボンは、きっと僕の武器になる」
「へえー。おもしろいなぁ、はやく見せてよ!」
あいつを倒したい。その思いが僕の中で募り始める。そして、思いは形になった。
リボンは薔薇に変形した。こんなちっぽけなもので、あの巨大な化身にどう立ち向かえと言うのか。しかしさっき見たとき、ノートには覚悟の炎とこの薔薇についていくつか説明があった。
「何々? ローズスプラッシュでもやるんですか?」
「本番はこれからさ」
僕は指に、風丸さんから受け取った指輪をはめる。
倒したい。松風を、倒したいんだ。こいつだけは絶対に倒しておきたいんだ。
「あっ、やばっ。炎出てるし。使い方知ってるんですか……、もう遊んでられないな」
僕の指輪から、青い炎が吹き出ている。
松風の化身が腕を大きく振りかざし、そして勢いよく僕めがけて振り下ろす。
「あれ!? しぶといなあ」
「松風くん……君を倒すまでは、死んでも死にきれないよ」
間一髪で攻撃をかわした。サッカーで培った動体視力が、まさかこんな時に役に立つなんて。
「うああ!? おかしいな、化身が動かないや……!」
「この薔薇を刺したからね。僕の属性は雨。そして雨の炎が持つ特性は『沈静』だ」
攻撃を食らう前に、僕は薔薇を炎に灯し、引火させ、ぎりぎりのところで避けた後化身の指にぶすっと突き刺した。
「ぐっ……」
今、松風の顔に一瞬陰りが見えたのを、僕は見逃さなかった。
「松風天馬。君の力がこんなものなら、拍子抜けだよ」
「ハハハ……つくづくアフロディさんは、楽しませてくれますね……!」