二次創作小説(映像)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン×REBORN! 十年後の世界で ( No.93 )
日時: 2012/01/18 20:04
名前: しろお (ID: C5PYK3fB)


             act.15   泡





「そして、まだ僕には秘策がある」
 匣兵器という、最後の秘策が。
 覚悟を決め、もう一度炎を勢いよく指輪から噴出させる。そして指輪を匣に差し込み、開匣する。
 開いた匣の中から、すごい量の泡が出てきた。線路が泡で埋まり、泡の向こう松風が見える。
「泡……」
「ただの泡じゃない。爆弾にもなりえるし、粘着物にもなりえる。僕はアフロディーテ。泡から生まれたんだ」
 この泡は、僕の意志で操れる。爆発させられるし、付着させて相手の機動力も奪える。とノートには記してあった気がする。 
「はは……匣の使い方知ってたんだ、アフロディさん。僕の負けだ」
「君にも、ボンゴレ狩りの被害者の痛みを知ってもらうよ」
 目を閉じて、泡がはじけるイメージをひたすら続ける。パッパとそこら中の泡が爆発しているのが音でわかった。そして、泡がはじけた衝撃波をうける松風の声も聞こえた。
 何度も、何個も、泡を弾けさせた。もう松風の声も聞こえなくなっていた。
 最後の泡のイメージが、弾けた。目を開くと、服がずたずたに破れて、血だらけの松風が、向こうのホームでぐったり倒れていた。






「あ……うっ……。はぁ……。はぁ……」
「やっぱり僕の炎じゃとどめはさせないみたいだね。でも、弾がまだ一発残ってる」
「いいんですか……? 俺を殺したら、アフロディさんも……はぁっ、うっ……人殺し、ですよ……」
「同じ人殺しでも、僕と君とじゃ違う」
「同じ……です……! ぐふっ。……なにがあろうと、人殺しは、等しく人殺し……! 復讐、うっ……な……て、馬鹿げて……す……」
 松風の言うとおり、たしかにここまで僕は、母の復讐のためだけに動いてきた。だが、松風を殺して、何か変わるのだろうか。僕はただ、あの野良犬のように、僕の母がこいつに殺されたかと思うと、こうせずにはいられなかっただけなんだ。
 松風を殺したら、僕はあの子供達と同じだ。そして、松風と同じだ。
 もう十分に復讐は果たせた。僕まで人殺しになる必要は無い。後はもう、ツナ達のアジトへ行って、ミルフィオーレを根本から潰せばいい。
 もう、終わったんだ。僕の復讐は。
「松風くん、約束だ。ミルフィオーレから足を洗ってほしい」
「…………わかり……した…………。足…洗い………」
 電車が来た。しかし急行のようで、スピードから言ってこの駅に止まる様子は無い。
 僕は用の無くなった松風に背を向けて、髪をリボンで結びながらベンチへ向かった。
「甘い、甘いんですよ……!」
 松風がふらふらになりながら銃をこちらに向けている。
「もう勝負はついた。もういい、もういいんだ」
「ふっ……ハハハ! その油断が、命取り……に……」
 銃の引き金を引く松風の人差し指に力が入ったとき、まるで電池が切れたかのように松風の足はふらっと浮いて横に倒れ始め線路の方に体が傾き始めたかと思いきや、急行電車の先頭車両が僕の視界の端からやってきたときには松風の姿はそこから無くなっていた。
 景色から、松風が消えた瞬間だった。