二次創作小説(映像)※倉庫ログ

original ダンガンロンパ 第二章 ( No.49 )
日時: 2012/01/18 07:24
名前: 魔女の騎士 ◆klvlLaCD9M (ID: .7T494ht)

「大丈夫かな、わたしたち……」
「逃げ口もなかったからな。手詰まりってやつ?」


 とはいえ、やはり今すぐここから出られない事実に変わりないため、小ホールに流れる空気は重い。
特に、東雲は顕著で、青白い顔色のまま小さな体を震わせていた。


「怖い……です……。早く……出たい……」
「菊。助けは絶対来るって!もし、危なかったらおれが菊のことは守ってやるからさっ!」
「は…はいっ!」
「あら、頼もしいわね」
「そうか?弱いやつを守るのは当然だろ?」
「そうだ!男子は女子を守るのが義務だ!!」
「いや、義務まではさすがに思ってないけどさ」
「ほお?とーま、ずいぶんと大層なこと言うが、さっきおれの性別思いっきり間違えたよな?」
「うっ……。そ、それは君がおれなんて一人称を使うからだっ!喋り方も男だし、女らしいところも皆無だろ!?」
「例えば?」
「……そう、だな。……体つき、とか」
「「っ!?」」


 プツリと糸が切れたような音がしたのは気のせいだろうか。笹川の顔が一瞬だけ真顔に戻り、ははと渇いた笑いをこぼす。


「あ、安積……」


 失礼だぞ。
おれがそれを言葉にするには一歩遅かった。

 笑顔を張り付けた笹川が安積の前へ詰め寄り、予告なく安積の腹部に握り拳を突っ込む。


「ぐほぉっ!?」


ゴスッと鈍い音と同時に、安積の目が大きく見開かれ、膝を落とす。
おそらく、急所に入ったのだろう。
安積は腹を押さえたまま、びくとも動かなかった。



「男と間違われたことは散々あるが、そこまでストレートに言われたことは初めてだぜぇ?それになぁ、男に二言はないって言葉、知ってるか?」
「うぐぐ……。そ、それは知ってるが、君は女を捨ててるみたいなことを米倉澪に話していたじゃないか!!」
「それとこれとは話が別だっ!」
「な、なにを……!?こ、こらっやめろ!!や、やめないかっ!?」


 声の荒々しさとは裏腹に、笑顔である笹川の腕が安積の脇へ伸び、指先を素早く動かす。
途端に、安積の引き締まった口元は緩み、その体はゴロリと小ホールに転げ落ちた。


「あ、あははっ!?や…やめっ!そこは弱っ、あはははっ!」
「ほう?ここが弱いのか?こちょこちょこちょ」
「さ、笹川辰美ぃっ!!や、やめろっ!やめてくれ!あはははっ!ひぃっ!あはははっ!!」


 笹川のくすぐりに我慢できず、安積は腕を床にたたきつけながら、大声をあげてのたうちまわっている。
状況が状況であるせいか……かなりシュールな光景だ。


「なぁ……止めなくていいのか、あれ?」
「いいのではありませんか?非常に滑稽で愉快ですわ」
「しかし、安積が笑い死にという可能性も……」
「いや、笹川ならほどほどに止めるだろう」
「っていうか、笑い死にするくらいくすぐり続けるのも相当大変じゃないか?まぁ、そもそもあいつの発言が悪かった訳だし」
「そうね。乙女心は複雑だものね」
「乙女心……か」


 アヤメの発言に、数名の男子が苦しそうに笑い転げる安積に哀れみの混じった視線を送る。
 おれも乙女心に理解があるタイプではないが……あそこまでやられては安積が不敏でならない。
例え原因が本人のせいだとしてもだ。


「あ、あの…みなさん、いいですか?」


 と、そんな珍妙な雰囲気を取り繕うように微笑んだのは石蕗だった。


「もうすぐお昼ですね。よかったら、僕が作りましょうか?」
「おお、マジ!?」
「超高校級の料理か。美味そうだねー」
「どうだか。毒でも入っているんじゃないのか?」
「見る限り、毒系の食材はなかったぜ。フグとかキノコとか……。つーか、そもそも毒物なんざ一体どこで」
「部屋にあるだろう」
「……え?」