二次創作小説(映像)※倉庫ログ

original ダンガンロンパ 第二章 ( No.50 )
日時: 2012/01/20 11:45
名前: 魔女の騎士 ◆klvlLaCD9M (ID: .7T494ht)

 安積と笹川を除き、みなの視線が一斉に不動に集中する。


「どういう……意味、だ?」
「はっ。そうか、てめぇらは分からねぇよな?だったら教えてやらねぇよ。俺様が使ったとき、ばれないためにもな。もっとも……既に俺様以外の人間も気づいているだろうがな?」


文字通り不敵な笑みをみせ、対して不動は射抜くような目つきで全員を見返していた。
この中に裏切り者がいる。そう言わんばかりに。


「不動。お前はどうしてわざわざ自ら不利になろうとするんだ?」
「はっ。てめぇに話す義理はねぇよ……。じゃあな」
「あ、まーくん。危ないよ」
「雅。あんなやつに、何を言ったって無駄だ。さっきもそうだっただろ?」
「でも……」
「相変わらず学習能力が無いらしいな、マヌケ。俺様はだれも信用なんかしちゃいない。それと、目障りだ。失せろ」
「不動!お前は雅になんてことを言うんだ!!雅はお前を心配しているんだぞ?」
「心配してくれ、なんて頼んだ覚えはないが?それが同情、好意というなら要らないお節介だ。早くくたばれ」
「お前ぇ!」
「まゆゆんっ、だめ!」


 篠田がいまにも不動に殴りかかりそうなところを、雅がその腕を掴んで止める。
それから、雅はぺこりと頭を下げた。


「まーくん、ごめんね。もう、ついていかないから。でも……気をつけてね?」
「……ふんっ。最初から、そうしていろ。……俺様以外に殺されるなよ」


 不動は最後にそう吐き捨てると、あのときと同じように堂々とおれたちの前から立ち去っていった。


「あいつ、絶対許さん!」
「落ち着きなさいませ、篠田様。あのような方はほおっておくのが一番ですわ」
「俺様以外に殺されるな、か。ずいぶんとヤンデレな発言だな。言われた方はちっとも嬉しくないが」
「はぁ……はぁ……。ふ、不動正治め……っ!医者の癖に、なんて暴言をっ!げほっ……」
「闘真くん、大丈夫?」


 笹川の気が済んだのか、安積の笑い声が止み、二人ともおれたちの会話に割り込んでくる。
ただ、安積は相当くすぐりの刑が応えたらしく、息もだえだえに小ホールの床でのびていた。


「安積、立てるか?」
「あ、あぁ……。ありがとう、速水刹那……っ。げほっごほっ」


 一応、おれの肩を貸して立たせてみたが、まだ安積の顔色は悪い。

 笹川……やり過ぎだ。
 おれは何事もなかったように輪になじむ笹川を一度見てから、息をつく。
不動の目立った行動に気をとられているせいか、大半の連中は安積が目に入っていないらしい。

実際、おれと米倉以外、だれも安積を気に掛けるやつはいなかった。
 

「はぁー……。本当、飯前に嫌な感じだぜ。石蕗、早く作ってくれよ〜」
「はい。それでは、12時に食堂に来てください。お待ちしています」
「石蕗……一人、危ない。おいも……行く」
「あ。大山さんありがとうございます」
「わたしも手伝うよ」
「わたしも行くーっ」
「とりあえず、自由解散でいいかしら?ボクサーさん」
「あ、ああ……一時解散する。また12時に集まろう」
「はーい!」
「また後でな」


 安積の閉会の言葉を合図に、各自それぞれが小ホールを後にする。みな顔にはそれほど出しはしなかったものの、怖かったらしい。
この狂気に満ちた空間で不動のように孤独を貫く者はだれ一人、いなかった。

 こうして、波乱に満ちた一度目の報告会は終わりを告げた。
まだ何が起こるか油断はできないが、不動を除いて少しずつみなの気持ちは結束しつつある。時間はかかるかもしれないが、きっと全員無事に出られるはずだ。

 おれはそのときそう思っていた。
 しかし、その希望がモノクマの用意していた秘密兵器によって絶望に転げ堕ちることは……まだだれも知らなかった。