二次創作小説(映像)※倉庫ログ
- Re: original ダンガンロンパ アンケート実施中 ( No.53 )
- 日時: 2012/01/21 18:05
- 名前: 魔女の騎士 ◆klvlLaCD9M (ID: .7T494ht)
報告会が終わった後、小ホールにはおれと安積が残っていた。さすがに15名いても広々した空間だけあり、2人だけともなるとわびしい。
「みんな行ってしまったな……」
「ああ、そうだな」
今頃、いなくなった大半の者は食堂で石蕗の手伝い、あるいは昼食を待っていることだろう。
不動に関しては、無事を祈るばかりだ。
「安積、もう大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。すまないな、速水刹那。僕のために貴重な時間をとらせて」
「気にするな。おれの好きにしただけだ」
「そうか。君は優しい男だな」
小ホールの床に足を伸ばして座る安積を見る。
その屈託のない笑顔に、おれはひとまず安心した。
舞台前の壁にもたれていた体を離し、安積へ右手を差し出す。
「ほら、掴まれ」
「ありがとう、っと……」
掴んできた安積の手を握りしめ、上に引き上げる。
すると、安積はしっかりと両足で自らを支えて立ち上がった。
「その……さっきは見苦しい所をみせたな。まさか、あんなことになるとは……」
「ああ……」
手を宙で離し、安積が頭をかく。
おそらくは、彼が笹川にくすぐられて大声を上げながら暴れていたあのことだろう。
どことなく困惑した面立ちだ。
「安積。あのとき、どうして笹川の手を払わなかった? 嫌なら振り払っても……」
「あ、ああ。確かに、そうなんだが……。僕にはとても……」
安積が首を横に振り、ため息をつく。
「……できない、のか?」
「ああ。その…笑わないでくれよ?僕は、女子に触れないんだ」
「……女性恐怖症、なのか?」
「そ、そういうわけじゃない……っ!その、僕は今まで男子校に通っていたから、どうしてやればいいか分からないんだ。そもそも、女性に手を出すわけにもいかないだろう!?」
安積の顔がわずかに赤くなり、おれから目線を外す。
ランドリーでの件といい、笹川での件といい、安積があまり女性に慣れていないことは分かっていたが……なるほど、そういうことか。
それならば、安積が例の言葉を口走ってしまったことも、なんとなく理解できる。
「速水刹那。少し君に聞きたいことがある」
「…どうした?」
「笹川辰美はどうして怒ったんだ?彼女が僕の言葉に怒ったことは分かったんだが、どの言葉で怒ったのかよく分からないんだ」
「………ああ」
神妙な顔で何を言うかと思いきや、想定内の言葉におれは口を閉じる。
安積は、やはり笹川の言葉の裏が分かってなかったらしい。
もちろん、おれも本人に直接聞いた訳ではないが、ある程度なら推測できる。
笹川が、安積に自らの体を指摘されて怒っていたことに。
「笹川は、自分の体つきを指摘されたことが気に食わなかったと思うぞ」
「体つき?女性らしさがない、と言ったところだな。だが、彼女は自分は女だと思ってないと言っていたぞ?」
「……まぁ、な」
その発想が、彼女をますます怒らせてしまったんだがな…。
その言葉は喉に押し込み、おれはどう説明してやるべきか、言葉を推考する。
安積はおそらく、今回の笹川の言葉をありのままの意味でで受けとっているのだろう。そう考えれば、笹川が怒った理由がまるで分からないことも、今の返事もつじつまが合う。
「そうは言っても、やはり笹川は女性だ。本人にしては、女らしくないことはやはりショックだったんじゃないか?」
「そう……なのか?」
「ああ。分かりにくいが、女性の心はそういうものらしい。おれも、まだよく分からないが……」
「いや。参考にするよ、ありがとう。とりあえず、まずは謝りに行かないとなっ」
「そうだな。確か……笹川は米倉と一緒だったから食堂にいるはずだろう」
「そうかっ!よし、行くぞ。速水刹那!」
一刻も早く食堂に行きたいのだろうか、安積はさっそうと小ホールの入り口にまで走り、大声で呼びかける。
元気なやつだ。
おれはそう心で呟いてから、表では頷いて安積の元へ向かった。
急かすように呼びかけてきた安積と小ホールを出て、正面に延びる廊下を走る。そうして、程なく突き当たりに見えたものにおれと安積は立ち止まった。
食堂に繋がるだろう扉の前に、よく個人経営の飲食店の表で本日のオススメメニューを紹介するような立て板が置かれている。
立て札には白いチョークでコック帽を被ったモノクマの絵が描かれていて、こう書かれていた。
『絶望食堂によーこそ!』
……ずいぶんと嫌な名前を付けたな。
おれは消してやろうかと思い手を伸ばす。
そこで、ふと立て札の下に書かれた文字が目に入った。
『あ、ちなみに消そうとする人にはエクストリームなおしおきだからね!!消しちゃいやーよ!? by学園長』
「まったく、なんてやつだ!」
「そうだな……」
「落書きとは……なんて幼稚な悪戯を!!」
そっちか。
おれは安積の発言に内心、突っ込みを入れると、立て札をそのままに扉を開けた。